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戦国再臨録〜祖父が武将の魂を蘇らせたので、俺が鎮めます。〜  作者: あると。
浅井長政編

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反撃の準備をしておこう。

信長から逃げ、俺たちは武流のいる公園へ走った。



「陽介!こっちだ!」



手を振る武流を見つけ、走る足を止めた。

ずっとノンストップで走りっぱなしだったから足がガクガクする。

俺は膝を抱えながら呼吸を整えていると、

一緒に避難していたスタッフの人が水をくれた。



「なぁ、長政はどこだ?あいつお前のところに戻ってから一度も見てないんだ。」


「……今、戦っている。」


「え…」



息を切らしながら、俺はここにくるまでの出来事を

全て話した。



「ーーーで、今長政が血だらけになりながら信長と戦っている……」



俺の話が終わるとその場でざわついていたスタッフ達がシンッと静かになる。

その空気を断ち切るように武流が俺の肩を掴んだ。



「なぁ……なんでそんなヤバいやつが陽介を狙うんだよ!」


「……俺の力がバレたんだ。」


「は!?」



武流は分かりやすく動揺して、

肩を掴む手が小刻みに震えていた。

俺だって未だに信じられない。

でも、あの攻撃は確実に俺を殺そうとしていた…

思い出すだけで背筋がゾクッとした。



「やばいじゃんお前…どうするんだよ!」


「落ち着け武流殿。不甲斐ないが今は信長の相手を長政に任せて、我々は今後の策を考えよう。」



清正が焦る武流をなだめ、立ち上がろうとした時、

1人の男性スタッフがボソッと呟いた。



「な、なぁ?よく分かんないけど…そこの兄ちゃんが狙われてるってことは、俺たちも危ないんじゃないのか?」



それを聞いた周囲の人達が再びざわつき始めた。



「確かに…この子がいると暴れてるやつがこっちに向かってくる可能性もあるぞ」


「……正直、巻き添えは嫌よ」



ヒソヒソとつぶやく声が徐々に増え、

誰も俺を直接見なくなった。

さっきまで心配そうにそばに居てくれた人達も

気づけば一歩、また一歩と距離を取っている。



「お主ら!命の恩人に対してその態度はなんだ!」



この状況を見かねた清正が声を荒らげ、一瞬だけ静かになった。

けれど次の瞬間、チッと小さく舌打ちする音が聞こえた。



「……恩人とか、そういう話じゃないだろう」



50代くらいのスタッフがズンズンと前に出て、

俺に指をさしてきた。



「このガキのせいで俺たちも殺されたらどう責任とるんだ!?あんたらがここにいる全員、安全を保証してくれんのか!?その信長って男から俺たちを守ってくれるのかよ!」



俺のせいで、みんなにも迷惑をかけてしまっているのか――


そんな考えが、頭をよぎった。

1人のスタッフをきっかけにさらに

俺に対する罵声や怒号が増えていく。



「お、おい……落ち着けよ!」



武流が慌てたように声を上げた。

でも、それはすぐに遮られてしまう。



「そうだ!さっさとどっか行け!!」


「逃げずに戦え!」



耳からどんどん入ってくる冷たい言葉。

みんなを守るはずだったのに、

気づけば俺は“厄介者”になっていた。

冷静に判断できなくなった頭の中はぐちゃぐちゃになっていく。


俺はここにいちゃ……いけないんだ。

俺のせいで……俺がーーー



「待ちなさい!」



その時、1人の女性の声が響き渡った。



「みんな子供相手に寄って集ってどうしてそんな酷いことが言えるんです!いい加減にしなさい!」



透き通った声が一瞬で騒ぐ人達の怒号を鎮めた。

一体、誰が……?

顔をゆっくり上げると、目の前に白く綺麗な手が差し伸べられていた。



「大丈夫ですか、陽介くん」


「あま……つきさん?」



そこにいたのは天月遥だった。

恐る恐る手を取って立ち上がると、

彼女はクルッとスタッフ達の方へ振り向き、

思い切り睨みつけた。



「あなた達、さっきこの子に浴びせた数々の失言。すぐに謝罪してください。」



けれど誰もすぐには口を開けなかった。

視線だけが、落ち着きなく彷徨っている。



「でも、天月さん!こいつがいるとその信長ってやつがーー」


「では実際、その人物は今ここにいますか?もしそんなに恐ろしく強い人物であればとっくにここへ来てこの子を殺しに来てるはずです!」



スタッフの言葉を遮り、彼女はさらに周囲へ声をかけた。



「陽介くんは昨日、自らの危険を顧みず巨人に襲われている私たちを助けてくれました。その姿は勇敢で逞しいまさにヒーローのようでした。けれど今、陽介くんは危険な人物からここまで走って避難してきた。それがどういう意味か分かりますか?」



彼女の問いかけに戸惑うスタッフ達。

差し伸べてくれた手が少しずつ強くなっていくのが伝わった。



「彼も人間なんです。だから傷つくし、怖がるし、逃げることもあります。あなた達も陽介くんの立場になれば絶対同じ行動をするはずです。」



あんなに騒いでいた人達が一斉に何も言わなくなり、静かになった。

頭の中に響いていた罵声が、彼女のおかげで少しずつ消えていくようだった。



「それくらい危険な人物から陽介くんを守るために長政様が頑張って戦っている。私たちは昨日助けてくれた恩人たちをこのまま突き放していいんですか?自分たちは関係ないと本当に言い切れるんですか!?」


「「「……」」」



ついには誰も俺を責める言葉を口にしなかった。

さっきまで向けられていた刺すような視線は、

居心地の悪そうな沈黙に変わっている。



「あの……」



すると沈黙の空気を断ち切るように、20代くらいの男性が手を挙げた。



「俺照明やってるんすけど、これ何かに使えないですか?」


「……!」



全員の視線が男性に向けられる。

男性が手にしたのは照明機材だった。



「昨日の襲撃で無事だった機材がいくつかあるんで、目眩しとか出来そうかなって…」


「あ、それだったらこれとかもーー」


「俺も!」



1人の男性をキッカケに数人のスタッフが

互いにアイディアを出し合い始めた。



「……ありがとうございます!他に意見がある人は私のところまで来てください!長政様を救う作戦を立てましょう!」



そういうと天月さんを中心に次々と人が集まっていく。

その様子をそばで見ていると、ポンと背中を軽く叩かれた。



「しっかりしろ。お前の頑張りを見てるやつはちゃんといる。ここはもうひと踏ん張り、俺らとどうすればいいか考えようぜ。」


「……」



そう言って、ガタイのいいおじさんが俺の頭をくしゃくしゃになるまで撫でて、励ましてくれた。



「陽介、なんも出来なくてごめん…」



突然、隣にいた武流が落ち込んだ様子で

俺に謝ってきた。



「急にどうした?お前らしくない」


「……正直、俺も不安だったんだ。呼んだのは俺だけど、もし信長ってやつが来たらどうなるんだろうって。でも天月さんの言葉を聞いて、ハッとした。お前の気持ちや長政の心配より、自分のことばかり考えていたって…お前だって本当は長政を置いて逃げたくなかったんだよな?なのに俺…本当にごめんっ」



武流の声は震えていて、最後の一言はほとんど絞り出すようだった。

俺は少しだけ間を置いて、首を横に振った。



「…武流が謝ることじゃない。誰だってこんな状況じゃ不安になるのは当然だ。それより、俺が責められてる時、庇ってくれたのは正直、嬉しかった。ありがとう。」


「陽介……」


「だから、お前も手伝ってくれないか?俺は長政を助けたいんだ。」


「……っ、おう!」



笑顔で返事をした武流は、作戦会議をしている輪に入って一緒に意見を出していた。


胸の奥に残っていたざらついた感情は、

まだ完全には消えていない。

罵声を浴びせられた記憶も、不安も、怖さも、

全部ちゃんと残っている。


それでも――



「陽介!お前はどう思う?」



手を差し伸べてくれる人がいて、名前を呼んでくれる人がいて、一緒に考えようと言ってくれる人がいる。


それだけで、俺はここにいていいんだと思えた。

一人で抱え込まなくていいんだと、ようやく息ができた気がした。



「……良い仲間だな。我らだけではあの男には敵わないと勝手に決めつけておったが、浅はかな考えであった。」


「いや、清正のせいじゃないさ。実際あの場にいても俺は足手まといだった。でも、ここにいるみんなと力を合わせれば、何となく上手くいく気がする。」


「そうだな。」



その後、俺も輪の中に加わり、皆の意見を聞いた。

目眩し、誘導、避難経路の確保ーー

専門的なことは分からなくても、

ここにいる全員が本気で長政を助けようとしているのは伝わってきた。



「よし、大体こんなもんだろう。早速機材を持って現場に向かうぞ!」



やがて大まかな方針が固まり、動き出す準備が始まった。

みんながそれぞれ行動している中、

俺は一度、深く息を吸ってから天月さんの方を見た。



「天月さん。一つ、お願いがあるんです」


「?」



彼女は少しだけ驚いたように目を瞬かせ、

それから静かに、俺の方を向いた。



ーーーーーーーー



そして、俺たちは再び現場へ戻ってきた。


空気は張り詰め、遠くから金属がぶつかり合うような音が響いている。

胸の奥が嫌な予感でざわついた。

戦いは、まだ終わっていない。



「まずいな……だいぶ押されておる」



信長に気づかれないよう、物陰に身を潜ませて

タイミングを待つ。


長政…もう少しだけ耐えてくれっ


長政の身体はさっきよりもボロボロで、

明らかに限界が近い。

それに比べて信長は見覚えのない刀を手に、

平然と立っていた。



「なんだあの刀、すごく異様なオーラが漂ってるんだけど…」


「……やはりか」



清正は短く息を吐いた。



「恐らくあれは、圧切長谷部。信長の愛刀だろう。それにしてもいつの間にあれを……」



愛刀……通りでヤバい雰囲気が出てたわけだ。

もう一度信長の刀を凝視してみると、

刀を中心に、紫煙が信長を包んでいる。

その煙の奥で、ぼんやりと数体の亡者が

絡みついているのが視えた。



「あんな大量の亡者が取り憑いているのに、よく身一つで耐えられるな…」



驚いたのはそれだけじゃない。

あの刀は信長の体内を通して魂と

繋がっているようだった。


なんだあれ?白い紐のようなものが視える…

魂と何か関係しているのか?…そう思っていた時、

長政が攻撃を食らい、吹っ飛ばされてしまった。


地面に倒れた長政はなんとかして起き上がろうとしていたけれど、攻撃のダメージが大きいのか、吐血し、苦しそうにしていた。



「いかん、このままではやられるぞ!」


「こっちは準備できたぞ。そっちはどうだ?」



ちょうどいいタイミングで、機材準備していた

スタッフから声をかけられた。

全員持ち場に付いて、いつでも行けると

アイコンタクトをしている。



「俺はいつでも行けます。あとはーー」



信長が一番油断している時に、一斉に仕掛ける。


俺は長政と信長の動きをもう一度凝視した。

何か会話しているようだったけれど、

ここからじゃ聞こえないと思ったその時ーー



「くそがぁぁぁぁ!!!」


「!?」



突然、長政の怒号が響き渡った。

何があったんだ!?あんなに叫ぶ長政を

見たことがない……


驚いたのもつかの間、信長が刀を持ち直し、

長政の心臓目掛け、突き刺そうとしていた。



「今だ!天月さん!」



俺は瓦礫の影に隠れていた天月さんに声をかける。

そしてーーー



「ーー”兄さん”!!」



大女優の透き通った声が、戦場の空気を切り裂いた。



「お前……何故ここに」



きたっ!信長が、はっきりと動揺している。


――俺の狙い通りだ。

公園で天月さんに頼んだこと。

それは、戦いに夢中になった信長の意識を、

ほんの一瞬でもこちらに向けさせること。


これは天月さんにしか出来ない役。

たった一言発しただけでも、その演技力は

群を抜いていた。



「よし、当てろ!!」



パッ!


さらに動揺している信長に対し、

追い打ちをかけるよう天月さんの背後に

セッティングしていた照明のライトを一斉に点灯した。


信長は咄嗟に目を隠したものの、この光の量だ。

しばらくは眩しくてまともに見れないだろう。

その隙を狙って倒れている長政の救助に向かった。



「長政さん、もう大丈夫だ!」


「な、ぜ……どういう」



救助に向かったのは俺を励ましてくれた

ガタイのいいあのおじさんだった。

おじさんは長政をあっという間に担ぐと、

素早くその場から離れた。


あとはーー



「行くぞ、陽介!」


「あぁ!」



清正のかけ声と共に深呼吸をして、

拳に力を集中させる。

そして、隠れていた場所から飛び出し、

一気に駆け抜けた。


ズバーーンッ

その時、信長が苛立ちを叩きつけるように

刀を振るった。

でもそれは俺に向けたものではない。



「全員避難しろ!!」



スタッフたちが慌ててその場から離れる。

パリーーンッ

信長の攻撃は照明機材を狙ったものだったらしく、

あんなにあった照明がたった一撃で全滅してしまった。


けれど、これで終わりじゃない!



「……」



信長との距離まで、あと10m。

眩しさに覆われていた信長の瞳が、ゆっくりと俺を捉えた。


大丈夫、今の俺なら戦える!



「反撃開始だぁぁぁ!!!」


「面白い……やってみろ」



獲物を見つけ、怪しく笑う信長。

振り上げられた刀に、俺は拳を突き出した。



ガキィィィンッ!

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