かなりやばいです。
「「「かんぱーい!」」」
その日の夜、俺たちは避難所で仲良くなった
スタッフさんやタレントさん達から
助けてくれたお礼にと一緒に食事に来ていた。
「いや~それにしても君たち凄かったね!」
「本当、君たちがいなかったらどうなってたことか…本当にありがとうな!」
酒を飲みながら今日の出来事を褒め散らかす一同。
俺は呑んだくれ達の勢いに、
愛想笑いをしながら烏龍茶を飲んでいた。
隣にいた長政はというと、ビールの味に感動して
スタッフの人達とグイグイ飲んでいた。
「っは~!この酒はとても美味いな!」
「お、いい飲みっぷりだね。もっと飲んで飲んで!」
「すんませ~ん!ビールもう1杯!」
大声で笑いながら楽しそうに談話する一同。
でもさすがに飲むペースが早くて心配になり、
長政に耳打ちした。
「なぁ…大丈夫か?あまり飲みすぎたら帰れなくなるぞ?」
すると、爽やかな笑顔でこちらに振り向き、
みんなにはギリ聞こえないくらいの声で返答してきた。
「大丈夫だよ、これでも私は酒に強くてね。昔から戦の後はよく飲まされていたから身体が慣れているんだ。」
そうなんだ、言われてみれば飲んでる割には顔が真っ赤になっていない。周りのテンションに合わせて長政も上機嫌になっているようだった。
「それよりも、あっちは平気なのかい?だいぶ出来上がっているようだけど…」
「え?……あっ!」
長政が心配そうに見つめる視線の先には、
テーブルの上でジョッキを両手で持ち、
ビールを飲み干す清正がいた。
「かぁ~!祝い酒は堪らんなぁ!」
「はははっ!こいつ動物なのに喋って酒飲んでるぞ(笑)」
「いいぞ~もっとやれ~!」
周囲にいる人たちは酔っているせいで
清正が喋るマーモットであろうとお構い無しに
酒を継いでいた。
「あの馬鹿!何やってんだよ…!」
俺は急いで清正を止めようと立ち上がった瞬間、
目の前が急に暗くなる。
「ここ、いいかしら…?」
パッと顔を上げると、そこには大女優の天月遥が俺の前に立っていた。
え、なんでこの人がここに?
急に来た大女優に動揺してしまい、
思わず膝立ちしていた姿勢を直した。
「ど、どうぞ…」
「ありがとう。」
彼女は俺と長政の間に入るように座った。
隣からフワッと甘い香水の匂い。細い指が髪を耳にかけた瞬間、首筋が見えて、思わずドキッとした。
「今日は本当にありがとうございました。」
その柔らかい声を聞いた途端、長政の肩がピクリと揺れた。
同時に、視線がふと宙を彷徨い、何かを思い出すかのように一瞬固まっていた。
「あ、いや。俺は何も……」
それにしても…めっちゃ近い!
あの大女優が俺にお礼をしてくれたのに
普段女子とあまり喋らないせいで言葉が出ない。
とりあえず目の前の烏龍茶を一気に飲んで気持ちを落ち着かせた。
「えっと、確かお名前は陽介くんと…長政さん、でしたか?」
「……」
ん?どうしたんだ?
せっかく彼女と話せる機会が出来たっていうのに
長政は何故か無言になっていた。
「……げっ」
身体を少し傾けて長政の顔を見てみると、
めちゃくちゃ目をガン開きして硬直していた。
「あの、どうかしましたか?」
「いや!なん、でもないっ!」
「そうですか?少し顔が赤いですよ?」
「大丈夫っ!本当に大丈夫っ!!」
あ、ダメだこいつ。
俺は無言で立ち上がって長政の手を取り、
早歩きでトイレへと向かった。
「何やってんだよ!思春期か!!」
「す、すまない…」
シュンと落ち込む長政の姿を見て、ため息が出た。
「天月遥を助けた時は普通に話してたじゃん。なのになんでまた急に挙動不審になってんだよ。」
「いや…それは、その……」
ゴニョゴニョと腹立つな~
何を言ってるのかよく聞こえず、顔を近づけて
長政の言い訳を聞いた。
「あ、あまりにも……お市が、可愛くて///」
「はっ倒していいか?」
「何故だ!!!」
リア充がっ!
俺はムカついて長政の足筋を何度も蹴った。
「痛っ…痛い!分かった!戻ったらちゃんと話すから~」
「約束したからな?次同じ事したら今度はケツを蹴りあげる。」
はい~…と情けない返事をして、俺たちは席に戻った。
「大丈夫ですか?」
「あぁ、すまない。もう平気だ」
お、なんだちゃんと話せんじゃん。
じゃあ俺は2人の邪魔をしないように清正を回収してーー
「……お市。君は、私の妻・お市なのだろう?」
ガタガタガタッ!
長政のぶっ飛んだ質問に思わず膝から崩れ落ちた。
慌てて振り向くと、あいつの目は真剣そのもので彼女を真っ直ぐ見つめている。
「おまっ…馬鹿なのか!?それはいきなりすぎるだろ!?」
「え!?違うのか!?」
ぽかんとする天月遥に、長政はボッと顔面が赤くなった。
「す、すまない!あれはその、君が私の知り合いに似てたもので……だから、先程のことは忘れてくれ……!」
身振り手振りを使い、全力で訂正する長政。
その変な動きで言い訳するのは逆効果な気もするけれど、あえて触れずに呆れていたその時ーー
「……ふふっ」
「……?」
突然、天月遥が笑いだし、
そしてあたりが一瞬だけ静まり返った。
「すみません、あまりにも必死になってるから……長政さんって面白い方なんですね。」
「あ…え?」
長政は完全に動揺していた。
それとは対照的に、彼女は肩の力が抜けたように
微笑んでいて——まるで子供を見守る大人みたいだった。
「もし良かったら、その”お市さん”について色々話してくれませんか?」
「あ…」
“お市さん”。
そのどこか距離のある呼び方に、胸の奥がスッと冷えた。
……そっか。
やっぱり彼女は、俺たちの探している“お市”じゃないんだ。
最初から分かっていたはずなのに、
長政と一緒に過ごした時間が長くなるほど、
ほんの少しだけ――本当に、少しだけ期待していた自分がいた。
「……」
そうだ。長政は大丈夫なのか?
ようやく見つけたと思った人が違っていたなんて、
あいつの落ち込みようは想像に難くない。
一旦連れ出して話そう、そう思い一歩踏み出した時ーー
「……えぇ、もちろん。」
「…!」
心配を他所に、優しく返答した長政。
表面上はいつも通りの穏やかな笑顔…だけど、
目の奥がまったく笑っていなかった。
……あいつなりに平気なふりをしているのが、痛いほど伝わってくる。
「……」
長政の話を楽しそうに頷きながら聞いている天月遥。
それに対し、長政は笑顔で奥さんの話をたくさんしていたけれど、指先だけがよく見ると微かに震えているようだった。
俺は強くなる握りこぶしを緩め、
席を立って清正のところへ向かった。
……今は2人の時間を邪魔しちゃいけない。
心にモヤモヤを残したまま、宴会は夜遅くまで続いた。
「……」
宴会後、ホテルに帰ってベッドに飛び込んだ俺は
長政の横顔が胸にひっかかったまま、眠りについた。
ーーーーーーーーーーー
~翌日~
俺たちはホテルを出ると、昨日宴会で飲んでいたスタッフ達と一緒に撮影現場だった場所へ向かった。
「悪いねぇ~助けてもらったのに手伝わせちゃって…」
「いえ、大丈夫です。」
あの騒動で撮影用の大事な資材やセットが埋もれてしまい、回収に行くと言っていた。
「人手は多い方がいいっしょ!ほら、行こうぜ!」
武流は意気揚々と歩き、現場スタッフ達と楽しそうに会話していた。
本当にあいつはコミュ力お化けだな…
俺はというとーーー
「うぅ~…あだまがいだい」
顔色を真っ青にして頭を抱える清正を
肩に乗せながら呆れていた。
「でしょうね~ビールを10杯以上も飲めばそりゃ二日酔いにもなるだろ。」
「すまん、陽介……あまり揺らさんでくれ…気持ち悪い」
「ちょっ、肩で吐くなよ!?」
二日酔いで顔色を悪くした清正の介抱…といってもいつも通り肩に乗せているだけなんだけど、背中をさすったり、水を飲ませたりしていた。
「陽介くん!」
後ろから名前を呼ばれて振り向くと、
駆け足でこちらに向かってくる長政の姿があった。
「おはよう長政。あんたは二日酔いは平気なのか?」
「言っただろ?俺は酒には強いんだ。まぁ、清正殿はそうではないようだけど…」
肩でぐったりする清正を見て苦笑いしながら心配する長政。
「なぁ、長政…」
「ん?なんだい?」
昨日のこと、大丈夫か?
と言いかけて口に出すのを止めた。
あの時の長政の表情が、まだ心のどこかに残っている。
「……いや、何でもない。」
あの後、長政と天月遥はお互いの事や
趣味など他愛のない話をいくつかして、
宴会は解散となった。
ホテルへ帰る帰り道、武流と長政が2人並んで会話している様子を後ろから見ていたけれど、やっぱりどこか本心で笑っていないような気がした。
声をかけようと何度も思っていたけれど、逆に長政を落ち込ませるんじゃないかって思って今もこうして言葉をかけられずにいた。
「長政~!早く来いよ!」
良かった…ナイス武流。
気まずい空気を掻き消すように武流が長政を呼んでくれた。
「あぁ、今行く!陽介くん先に行ってるよ!」
「お、おう」
武流の方へ走っていく長政を俺はただ見送った。
すると肩でぐったりしていたはずの清正が
よっこらせと言いながら、低い声で話しかけてきた。
「……何をそんなに迷っておる」
「別に…何でもねぇよ」
「嘘をつけ。お前はすぐ顔に出るから分かりやすいのだ。」
え、まじで言ってる?
そんな顔に出ていたのかと驚きながら両手で顔を覆った。
「昨晩、何があった。」
「……長政には言うなよ。」
俺は宴会で起きたことを清正に話した。
そして同時に、長政にどう声をかけるべきか迷っていることも打ち明けた。
「ーーだから、落ち込んでいる長政にどう接すればいいのか分からないんだ。」
「そんなもの、残念だったなとはっきり言えばよいではないか。」
「は…?」
それが出来ればとっくにしてるわ!
いかに長政を傷つけずに、慰めるかを必死に考えているってのに、清正の返答に思わず拍子抜けした。
「いや、それだと長政がなーー?」
「なぜ我らが慰める必要がある?
最初から女の魂などいないと分かっていたではないか。
それでも探すと言ったのはあの男だ。
いるにしても、いないにしても、全てはあの男が決めた道。
覚悟のない生半可な真似などせん。」
「それは、そうだけど…」
だからって、大事な人がいないって知ったら
誰だって辛いだろう。
それを一人で抱えるより、誰かが聞いてあげるのも
優しさなんじゃないのか?
「……人はいつか死ぬ。」
「え?」
「この世に命を授かれば誰であろうと、死という別れがくる。どんなに未練があろうと、どんなに想っていても、突然やってくるのだ。だから悔いのないように人は生きようとする。」
清正の口から出た”死”という言葉が重くのしかかる。
「あの男は妻に会いたい、会って何かを伝えたいと言っておったな。あの時は探すことに賛同はしたが、はっきり言うとなぜ、そのような大事な事を生きている間に伝えんかったのか。なぜ、あの戦乱の時代で”明日もある”と思って生きていたのか。我には全く分からん。」
言葉が出なかった。
胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
長政のこと、昨日の宴会のこと、そして清正の言葉——全部が頭の中で絡み合って、どう反応していいのか分からなかった。
ただ、視線だけが清正から離れられずにいた。
「…厳しいと思っておるか?」
「え…いや、えっと」
「悪いな。我がそのように生きてきたから
あの男の心情が分からんのだ。
なぜもっと早く伝えないのか、
なぜ生きてる間にやれなかったのか、
その者が死んでしまってはすべて叶わぬというのに…」
どうしたんだろう。
先ほどまであれほど強気に語っていた清正が、急に声のトーンを落とし、まるで自分自身のことを語るかのように静かに呟いている。
その目には、言葉以上の重みがあるように見えた――
「なぁ…清正ーー」
清正に声をかけようとした瞬間、背中がゾワッと寒気に包まれた。
「なんだ、この気配は!?」
どうやらこの異変は俺だけではないらしい。清正も毛を逆立て、鋭い目で周囲を警戒していた。
――ここまで清正が警戒するなんて、一体何が。
「ここにいたか…」
「「!?」」
背後から聞こえた声に驚き、バッと振り向くと
そこには1人の男性が刀を持って立っていた。
誰だ?いつの間に後ろにいたんだ?
「お前だな?妙な術を使う小僧は」
「!!」
こいつ、俺の力を知ってる!?
只者ではない威圧感が俺の身体に絡みつき、緊張が走る。
「この気配、そしてあの刀…まさかっ」
「清正、どうしたんだよ?」
いつもと様子がおかしい清正。
肩を掴む小さな手がギュッと強くなり、
視線は突然現れた男の方を睨んでいた。
「…逃げるぞ陽介。」
「え?」
「遠く…出来るだけ遠くへ全力で走れ。」
これは、只事じゃない…
毛を逆立て、目を光らせて男を警戒している。
その瞳には、ただの危機感だけでなく、長年生きてきた経験からくる“何かヤバイもの”を感じ取った色が混じっていた。
「……えっ」
俺は再び視線を男の方へ向けた瞬間、驚愕した。
「どうした?」
男の胸元にある魂が視えた。いや、”視てしまった”。
「なんだよ…あれ」
それは“魂”なんて言葉で片づけていいものじゃなかった。
目にした瞬間、肺の奥が勝手に凍りついた。
巨大な火の玉――いや、“災害そのもの”がそこに浮かんでいた。
中心は血よりも濃い深紅なのに、輪郭は光ではなく黒い裂け目みたいな影が揺れている。
まるで重力を裏返したみたいに、黒炎が下から吸い上げられ、空間そのものをねじ曲げていた。
時折、深紅の核がズドン、と心臓みたいに脈打つ。
そのたびに辺りの空気が抉られ、
“見えない衝撃波”が空間を歪ませて俺の肌に突き刺さる。
しかも、形が一定していない。
炎の王冠のように尖った影が生えたかと思えば、
次の瞬間には黒い手や刃のようなものが溶けるように伸びては消え、
まるで無数の悪意が一つの塊になって息をしているようだった。
あんな魂…視たことがない。
視えてしまった後悔と共に、この男は危険だと
俺の勘がそう言っている気がした。
「逃げるのか?お前の力が見れると思っていたがつまらんな…」
「……っ」
あまりの恐怖で声が出ない。
距離を取ろうとゆっくり足を後ろへ
引いていたけれど、蛇に睨まれた蛙のように、
あの男から視線が離れず、身体震えて身動きが出来ない。
「まぁいい。逃げようとしても無駄だぞ。お前は”ここで死ぬ運命”だからな。」
「え…?」
シュンッ——
「!?」
気がつくと、男の姿が消えた。
何が何だか分からず周囲を見渡すと、
清正がハッとして俺の耳を引っ張った。
「陽介!逃げろ!!!!」
その声が耳に届いた瞬間、
一瞬で間合いを詰められていた。
目の前が暗くなり、男のあまりの速さに
ドクンッと心臓が跳ね上がる。
「死ね。」
男の刀先が胸めがけて、下から勢いよく突き上げられる
ーーー終わった。
ガキィィィンッ!!
次の瞬間、刀同士が弾ける鋭い音が周囲に響いた。
「!!」
振り上げられるはずの斬撃を受け止めたのは
俺の身体ではなく、見慣れた背中だった。
「私の友人に何をした…っ!」
「なが…まさ」
鋭い刃が向かい合わせ、ギリギリと擦れる音が鳴っている。
険しい顔で睨みつけて押し続ける長政に対し、
男は一切微動だにせず、寧ろふっと鼻で笑って長政に語りかけた。
「来たか浅井。”また”俺に刃向かう気か?」
「黙れっ!この子には手を出させない!」
キィィンッ!
長政が押し出したことで、交差していた刀が離れた。
「陽介くん、大丈夫かい?」
こんな状況でも相手の様子を伺いながら、
俺の心配をする長政。
俺に話しかけて大丈夫なのか?と思いつつも、
長政の背中が目の前にあったから、少し安心していた。
でも、その背中越しに伝わる緊張……完全に笑顔ではない目元が、俺の鼓動をさらに速める。
「だ、大丈夫ーー!?」
長政の背中越しに相手の男が見えた瞬間、ギョッとした。
あいつの視線は長政ではなく”俺に向けられていた”。
「あ…あいつ一体何者なんだ?俺の力をしっているようだった。」
「なに!?……よりにもよってあの男に知られるとはっ」
「おしゃべりしている暇などないぞ」
ガキィィンッ!
俺たちの隙をついて正面から攻撃してきた男。
長政も何とか受け止めたものの、
相手に押されて足が下がってきていた。
「陽介!あやつが戦っている間に逃げるぞ!」
「でも、それだと長政が…!」
「ここで死にたいのか!!!」
耳元に清正の怒号が響く。
長政はさらに押されて苦しい状況だった。
「……っ」
このまま留まれば戦いの邪魔になりかねない
俺は、長政に背中を向けて全速力で走った。
ごめん長政…ごめんっ!
「逃がすか」
「なっ!」
押していた力を一気に離したことで、
長政の体勢がわずかに崩れた。
男は姿勢を低くしたと思いきや、
次の瞬間にはもう、俺の背後まで近づいていた。
「はっ!?まじかよ!!」
「この距離を一息で……っ!」
男は表情一つ変えず、刀を構え直し、
横から俺の胴体を狙って攻撃してきた。
「くそっ!なんなんだよぉぉぉ!」
ガキィィンッ!!
「……っ!!」
次の瞬間、火花が散った。
俺に向かって横に振られた刀が、
突然方向を変えたのだ。
「行っただろう。手を出させないと」
男が攻撃を仕掛けた時、長政が足を踏み込み、
一気に距離を詰めて男の背後を狙ったのだ。
その気配を察知した男がくるりと回転して
長政の攻撃を受け止めた。
再びギリギリと金属が軋み、両者とも腕が震えていた。
「……」
「もう、お前の思い通りにはさせんッ!!」
二人の刀が弾け、キィンッ!と甲高い音が響く。
次の攻撃がくると思った瞬間、男は意外にも刀を下ろした。
その視線は長政を捉え、静かに問いかけてきた。
「邪魔をするな浅井。俺の用があるのはその小僧だ。そいつを寄越せ。」
「嫌だと言ったら?」
「お前諸共殺すまで。」
交渉が決裂したことでさらに威圧感を増してきた男。
それでも長政は逃げることはなく、鋭い視線で睨んでいた。
「私の友人をあなたのような人に渡す気は毛頭ない。それに…あなたとは正々堂々と勝負をしたかった。今ここで決着をつけましょう。”織田信長”!」
「!?」
長政は信長に刃を向け、宣戦布告をした。
あれが、織田信長ーー
あの魂の色と迫力、そして圧倒的な力。
織田信長と名前が出た瞬間、納得してしまう自分がいた。
「……いいだろう。一瞬で終わらせる。」
息を整えながら、下ろしていた刀を再び握り直す。
そして長政に向けてゆっくり構えた。
長政と信長、二つの魂がぶつかり合う瞬間が訪れようとしていた。




