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戦国再臨録〜祖父が武将の魂を蘇らせたので、俺が鎮めます。〜  作者: あると。
浅井長政編

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18/25

そんな簡単に芸能人とは会えません。

~翌日~




「さぁ~行くぞぉぉぉ!!」


「うぉぉぉお!!」


「待ってろぉぉぉお市ぃぃぃぃ!!」


「うるせぇぇ!!!」



ビジネスホテルの前、人目を気にせず

2人の男とマーモットが雄叫びを上げていた。


もう分かった人はいると思うが、

俺の目の前で騒いでるガキの中に、

浅井長政が加わってしまったのだーー



「どうしたんだ陽介くん!これは一日の気合いを入れるために必要なーーー」


「必要だったとしても時と場所を考えろ…あと、そこの馬鹿ども!」


「はぁ!?馬鹿じゃねぇし~馬鹿というやつの方が馬鹿なんだぞ!」


「そーだそーだ!武流殿、よくぞ言った!」


「……俺だけ帰ればよかった。」



今思うと、引き受けなければよかったと、とても後悔していた。


なんでこうなったかって?それは昨日の夕方まで遡るーー




ーーーーーーーーーーーー



~昨日の夕方~




「頼む!私の妻を…市を探してくれないか!!!」




真っ直ぐ必死な思いで、訴える長政。

俺の腕を握る手が段々と強くなっていくのが分かった。



けれどーーー




「悪い…それは無理だ。」



「なぜだ!お市は必ずどこかにいるはずなのだ…そうだ!探してくれる礼に褒美もやろう!だからーー」



「無駄だ。」




ピシャリと長政の想いを跳ね除けたのは清正だった。




「お主の奥方…お市殿は、遠の昔に亡くなっておる。」



「そんなことは無い!現にほら…私はこうして奇跡的に生きている。だから、お市だってきっと…!」



「それは我も同じこと。我らがこの世に再び戻ってきたのは、ここにいる陽介の御爺様がやった事なのだ。」



「…それは、どういうことだ?」




清正は俺の代わりに、この世に蘇った訳を説明してくれた。その間、長政は手を震わせ、信じられないという表情で黙って座っていた。




「ーー分かったか?つまり、我々は1人の僧侶の目的のために蘇ったのだ。その目的に、お主の奥方は…残念ながらいない可能性の方が高いだろう。」



「……」



「長政…」




全てを説明され、ガクンと頭を下げる長政。


清正は間違ったことは言っていないけれど、


目の前で落ち込んでいる長政を見ると、


申し訳ない気持ちと、何とか出来ないのかという


想いが渋滞していた。




「でもさ…あんたは、お市さんがいるって確信があったからここに来たんだろ!?だったら諦めるのは早いだろ!」



「!!」




ここで、ずっと聞いていた武流が気まずい空気を断ち切ったのだ。


武流の言葉を聞いた長政は落ち込んでいた顔を上げた。




「そうだ…そうだ!私はお市がこの現世にいると信じている!!だから私は蘇り、ここに来たのだ!」




その瞳はまだ希望を捨てていない眼で俺たちに訴えかけた。


そして姿勢を正したと思うと、頭を勢いよく地面に叩きつけ、俺たちに土下座してきた。





「お、おい!」



「頼む…!せめて一日だけでいい!どうか、どうか……お市を探すために力を貸してくれぬか!!」



「……」




ここまでしてお市さんを見つけたいんだ。


俺には、長政みたいに好きな人はいないし、


何なら女の子と付き合ったことすらない。



だから土下座するほど奥さんを大切に思う


その姿を見て、少し…羨ましいと感じてしまった。


そして同時に、目の前でここまで必死になってるやつを、俺は見捨てたくないとも思った。




「清正……俺、協力しようと思う。」



「陽介…くん」



「な、本気か!?先程も言うただろう?お市殿はーー」



「分かってる!けれど…やれる事は、やってみたいんだ。」




俺がまさか賛成するとは思わなかったようで、


清正は予想外の展開に少し悩んだ末、


意を決して俺に視線を向けた。




「本当にやるのだな?」



「あぁ。」



「……分かった。昼間のように、か弱い娘を見捨てるようなら、思い切り引っぱたくつもりだったが、その心配も無さそうだ。」




うっ…痛いところをつかれた。


あの時は本当にただの変質者だと思って


変に近づきたくないと思っていたけれど、


今思うと、あのメイドの子には申し訳ないことをしてしまった…




「あ、あれはーーまさか、あの時腰抜けって言ったのはそういう事か!?」



「今更気がついたのか?まぁ、もう過ぎたことだ。陽介が今、この男の助けになりたいと言うならば、我は反対しない。」




ため息をつきながらも、清正は重い腰を上げて


俺の意見に賛同してくれた。




「俺もいいぜ!今はちょうど連休で学校もないし、あんたを1人にしたら大変そうだからな!」



「武流くん…皆、本当に…ありがとうっ!」




涙を流しながら頭を下げる長政。


こうして、お市さん捜索チームが結成されたのだった。



ーーーーーーーーーーーー



そして現在に至る。



「とりあえず、お市さんを探すのに何か特徴とか手がかりはないのか?」


「あぁ!実はな、この身体に魂を宿したばかりの頃、街を歩いていたら、偶然お市に瓜二つと言っていいほどの似顔絵を見つけたのだ!」



「似顔絵?」



あぁ!と言うと、背負っていたリュックのファスナーを開け、ガサゴソとその似顔絵を探していた。



「確かこの辺りに……あった!見よ!これが私の愛おしい妻、お市だ!」



ドヤ顔しながら似顔絵を見せつけられる。

それを見た瞬間、驚きと同時に俺と武流は悟った。


これは無理ゲーだとーーー



「どうだ!私の妻は美しいだろう?この似顔絵があればすぐに見つかるーーー」


「いや、無理だ。」


「なに!?」


「お疲れっした」


「おいおいおいおい!どこに行くのだ!?」



そそくさと帰ろうとした俺たちの腕を掴み、必死に引き留めようとする長政。


さっきまであんなに気合を入れていたのに!と言わんばかりに動揺していた。



「なぜ帰ろうとするのだ!?もしや、この似顔絵だけでは足りないというのか?」


「いや、そうじゃないんだけど…」


「けど、なんだ?」


「さすがにそれは無理っすわ~」


「ど、どういうことだ!?」



長政が見せてきたものは1冊の週刊雑誌。

その表紙に写っている女性がお市だと言っていた。



「この人…この有名人は俺らの力でどうこう出来る問題じゃないんだよ。」



日本では知らない人はいない。

10代で芸能界デビューを果たし、

今や数々の有名なドラマや映画に出演している。

その名は、天月(あまつき) (はるか)


綺麗な見た目だけでなく、演技力では群を抜いて、

天才と言われている超国民的大女優なのだ。



「逆になんでこの人が奥さんって思ったんすか?どう考えたって無理ゲーだし、ふざけてるとしか…」


「失礼な!!私はこの似顔絵を見て分かったのだ!

この艶やかな黒髪、輝く翡翠の瞳、そして色白の肌!私が愛していたお市そっくりなのだ!!」


「そんなにそっくりって言うなら、なんで昨日メイドの子を奥さんって言ったんだよ。」



ぎくっ!と武流に痛いところをつかれたのか

キョロキョロと動揺し、気まずそうにしていた。



「あ、あれは…その、ここに来るまで飲まず食わずで歩いてきたせいで、つい身体が動いたというか…け、けれど本当に若い頃のお市にそっくりに見えたんだっ!」



「「えぇ~……」」



こいつ、本当に大丈夫か?

俺と武流は必死で言い訳をしている長政にドン引きした。


一方の清正はというと、長政の持っていた雑誌を呑気に眺めている。



「と、とにかく…お市を知っているのであれば話が早い。急いでお市を探しに行くぞ!」


「いやいや、さっきも言ったけど無理っすよ。俺らの知ってる天月遥の存在は”テレビでよく見る有名人”というだけであって、”本物の天月遥”についた知らないっすよ。」


「そうだな…もし仮に会えたとしても、ロケ収録がされてるところに鉢合わせるくらいだと思うけど、まぁほぼ無理だろう」


「そ、そんな…」



落ち込む長政には申し訳ないが、現実はそう甘くない。

相手は俺たちとは天と地の差がある大女優。

いくら、武将の頼みでもこればかりはどうすることも出来ないのだ。



「なぁ、陽介」


「ん?どした清正。」



清正が雑誌をパラリとめくり、ページを差し出した。



「これはなんと書いてあるのだ」



俺は雑誌を手にしてページを覗き込む。

そこには、天月遥の大きな写真と記事の見出し。

さすがトップ女優…ページ一面にでかでかと──

だが、俺の目が止まったのは端に書かれた小さな地名の行だ。



「天月遥主演。テレビドラマ『時を超えて、君に逢う』現在撮影中。日昇里駅から徒歩数分……」



記事を何度も見返すうち、胸の奥がじわりと震えた。偶然?いや、そんな偶然があるのか。



「天月遥が……この近くにいるのか?」



それを聞いた武流が顔を青くして俺を見た。長政は既に立ち上がり、俺の手から雑誌を奪い取るようにして走り出した。



「ちょっと待てって!」


「待っていられるか!この近くに市がいるのだろ!?」


「だからってあんたが覚えていても、奥さんの記憶がなければ意味が無いだろ!!」



武流の言葉にピタッと足を止めた。

よかった…ホッとしながらも、俺たちは長政のそばに駆け寄った。



「お市は…私を忘れているのか……?」


「まだ分からないけど、少なくと勢いのまま昨日のようにいきなり抱き着こうとするのは良くないと思うぞ。」


「そうか……」



危なっかしいやつだけれど、

話せば一応分かってくれるんだな。


落ち込んでいる長政を慰めて、

俺たちはこれからどうするかを話し合った。



「とりあえずその撮影現場に行ってみよう。

まぁ、見れるか分からないけど。」



俺は雑誌を指さし、3人に提案した。



「近くまでは行かないのか?できれば近くでお市を見たいのだが……」



思春期の男子かのようにソワソワしている長政。



「てか俺、芸能人を生で見るの初めてなんだよな~サイン貰えないかな!」



ここに来て目的から脱線する武流。



「そうだ!お主らが行けぬのなら我が近くまで行って、この目で奥方を見てこようぞ。」



ドヤ顔で立候補する清正。けれどそれは即却下した。



「いや、清正は下手すればでかいネズミって思われて追い出されそうだから大丈夫。」


「誰がネズミだ!!!」



全員がバラバラに話すせいで

全然まとまる気がしない……!


けれど、ここで色々と決めておかないと

何をしでかすか分からない。

ここは何とか俺が引っ張って冷静に話し合わないと。


それからというもの、何度も何度も話し合いを重ね、

最終的に撮影現場には行くけれど

遠目で天月遥がいるかを見ることになった。



「じゃあ…行くぞ」


「「「おう!」」」



俺たちは再び捜索チームを結成し、

目的の場所へと向かったのだった。





ーーーーーーーーーーーー



~東京駅~



俺たちが撮影現場に向かっている間、

新幹線ホームに一本の新幹線が到着した。


ピロロロロロロロロロ…


普段は多くの人で溢れている新幹線ホームが

ガランとしており、グランクラスの席がある扉の前には、黒服を着た男たちがズラリと並んでいた。

まるで偉人を向かい入れるかのようにレッドカーペットまで敷かれている。


プシュ~…


新幹線の扉が開き、中から人影が見える。



「ようやく着いたか」



その人物がホームに足を踏み入れた瞬間、背筋が粟立った。

黒服の男たちが勢いよく頭を90度に下げつつも、

緊張感のある空気に、何人かの額に汗が流れる。


誰ひとり声を発せず、微動だにしなかった。



「お待ちしておりました!信長様!」



一人のスーツを着た男が腰を低くして来訪を歓迎する。


そこに現れたのは、闇をも従えるような不気味な気配と、王を凌ぐ覇気を纏う男。


名を聞くまでもない――織田信長だった。



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