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戦国再臨録〜祖父が武将の魂を蘇らせたので、俺が鎮めます。〜  作者: あると。
浅井長政編

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17/25

行くぜ、東京!

「東京へ来たぞぉぉぉぉ!!!」


「うるさい、うるさい」



俺はいま、東京へ遊びに来ていた。

このうるさいヤツらと共にーーー



「どうだ、きよっち!これが大都会・東京だ!」


「なんだこの人集りは!あの大きな建物はなんだ!」


「うん、分かったから、早く行くぞ〜」



周りの視線が恥ずかしくて俺はそそくさと

2人から離れようとしたが、それに気付いた武流と清正がリュックを掴み、磁石のように着いてきた。



「も〜つれないな〜、せっかく男3人で東京に来たんだから楽しもうぜ!」


「そうだぞ、陽介。最近は慣れないこと続きで、疲労もあるだろう。ここらで一息休むのも大事だぞ!」



そう言って清正がまんまるの指で指した場所は

ド派手なピンク色が目立つタピオカ専門店だった。



「……」


「ほれ、見ろ!あれは甘味処であろう?

あそこに行くのはどうだろうか!?」



キラキラと目を輝かせ、期待と興奮で

息が荒くなっている清正に俺は若干引いていた。

お前、こんなキャラだったっけ…?



「いや、俺はーーー」


「ほれ、買ってきたぞ〜!」


「早っ!?」



店の雰囲気的に、俺は入るのに抵抗があったから

適当な理由をつけてほかの店に行こうとしていた矢先、武流が人数分のタピオカを買っていたのだ。


武流はこういう時だけ、行動力が凄い。

本人にそれを言うと怒るから言わんけど…



「ほれほれぇ飲んでみ〜な!結構美味いぞ」


「えぇ〜…まぁ、買ってもらったから飲むけどーーお、美味っ」


「ほらな〜?ニヤッ」


「キショい顔でこっち見んな!」


「美味いの〜甘いものなど何年ぶりか!」



その後も、あれやこれやと食べ歩きをしながら

東京の街中を散策した。

相変わらずうるさい2人が、次はあそこに行くぞ!と張り切って先陣切って歩いている。


正直行くの面倒だったけれど、

2人が楽しそうにしている様子を

後ろから眺めていると、来てよかったなと思った。



「おぉ〜ついに見つけたぞぉおぉ!!」


「?」



タピオカ片手に「東京ってやっぱすげぇなぁ」と浮かれていた俺の気分は、人混みの向こうで聞こえた奇妙な叫び声で一瞬にして吹き飛んだ。


目を凝らすと、そこには……言葉にできない、ヤバすぎる光景が広がっていた。



「イチ、お主なのか!?」


「ひぃ!?」


「会いたかった…会いたかったぞぉおぉ!!!」


「ちょ、やめてください!」



視線の先で行われていたのは、30代くらいの男が涙ぐみながらメイドの女の子にしがみついていたヤバすぎる光景だった。



「うわ…なんだあれ」


「ヤバすぎ(笑)」



周囲にいた通行人は女の子を助けようともせず、

面白おかしくスマホで写真やら動画を撮っていた。

女の子は恐怖で涙目になっているし、

抱きついている男は男で号泣している。


何なんだこのカオスな状況は…



「お、おい陽介。行こうぜ…」


「そ…うだな。」



あの子には悪いけれど、あーゆーのは下手に絡んだら、このご時世、何されるか分からない。

泣いている女の子を申し訳ないと思いながらその場を立ち去ろうとした時だったーーー


ホワン……



「!?」



数珠が光った!?

俺は進む足を止めて、辺りを警戒しながら周囲を見渡した。けれど、人が多すぎてどこにいるのか分からない…そんな時だった。



「解せぬ」



ずっと肩に乗っていた清正が目の色を変えて、

突然飛び降り、人混みの中を走り出したのだ。



「え?ーーあ、おい!清正!!」



あいつ、こんな時にどこに行くんだよ!


俺は急いで人混みをかき分け、その後を追ったが、清正は通行人の足元をヒョイヒョイっと華麗に避けながら走っていた。


いや、速すぎんだろ!?

これじゃあ追いつけねぇ……てか、あいつの向かった先ってーー



「キィッーーー!!」


「うわ、なんだ!」


「いだだだだだだ!!」


「なにあれ、リス?」



さっきよりどよめきが波のように広がった周囲に、嫌な予感がした俺は、再び走り出した。



「すみません…通してください!」


「なんだなんだ!」


「うわ〜痛そう……」



叫び声のした場所を中心に人が密集しており、なんとかその中をかき分けて抜けだした俺は、息を整えて前方へ視線を向けた。



「フィーッ!」


「な、何だこの生き物は!離せぇ!」



そこにはメイドにわいせつ行為をしていた男に襲いかかる清正がいた。

鋭い目付きで男を睨むと、顔面に飛びかかって頬を引っ掻く。そして肩に乗ったと思いきや、ガブッと前歯で思い切り噛んだ。


俺は清正の暴れっぷりに目を奪われていたが、

止めないと!と我に返り、急いで清正と男の元へ向かった。



「清正、なにやってんだよ!」


「離せ!腰抜けはじっとしておれ!!」



暴れる清正を無理やり男から引き離すと

男は噛まれた腕を抑えて止血していた。


一方、メイドの女の子は腰が抜けたようで

その場で座っていると、同じメイド服を着た

女の子たちが助けにやってきた。



「千夜ちゃん!大丈夫!?」


「うぅ〜……」


「……千夜、だと?」



良かった……あの子は無事か。

怯えながら泣きじゃくり、同僚と思わしき子に抱きつく千夜と呼ばれた女の子を男は呆然とした様子で、見つめていた。



「そなた、イチでは…ないのか?」


「はぁ!?なにキショいこと言ってんだよ!」


「今、警察呼んだからこの変態!!」



メイドの女の子達が男に対して、

たくさんの罵倒を浴びせた。

男はショックのあまり、言葉を失い

ガクンと肩を落としていた。



「あの、その子…あなたのペットですか?」


「え?あ…はい。そうですがーー」


「こっちに来る時見てましたよ。千夜を助けてくれてありがとう。」


「あ、いえ……」


「小さいのに凄いですね!めっちゃいい子〜!」



メイドの子達は、清正にお礼を言うと

囲むように清正の頭を撫でたり、手を握ったりして

和やかな雰囲気になっていた。


俺が助けた訳じゃないのにこうも女の子に囲まれると、なんだか少し照れくさくなるな…


なんとなく、清正の顔を覗いてみるとーー



「キュイッ」


「えぇ〜鳴き声可愛い!」


「モフモフしてる〜写真撮っていいですか?」



女の子にたくさん囲まれて、よほど嬉しいのか

あまり見た事ないニヤついた顔でチヤホヤされている。


まぁ…助けたのが清正だし?別にいいんだけど…なんか腹立つ。

そんなこんなしていると、遠くからパトカーのサイレンの音が聞こえてきた。


ウー!ウー!



「あ、じゃあそろそろ俺たちはこれで…」


「はい!本当にありがとうございました!」



メイドの子達に再度お礼を言われてその場を立ち去ろうとした時だった。



ドクンッーー!


「!?」



嘘だろ…さっきまで”視えてなかった”のにーー!

振り返った先にいたあの男から、魂が視えてしまったのだ。

それはまるで、一度こびりついたら二度と落ちない、苔混じりの泥のように表面はぬめりを帯び、ゆっくりと脈打つように蠢いている。

ドロリと溶けた部分が魂の輪郭を伝い、再び這い上がると、まるで魂そのものを締め上げる蛇のように絡みついていた。


ひょっとして、さっきの数珠が反応した武将ってこいつだったのか?



「なぁ、あんた…」


「イチイチイチイチイチイチイチイチイチイチイチイチイチ……」



怖っ!やばすぎだろ!?


声をかけてみたが、男の瞳からは光が消え、

頭を抱えながら同じ言葉をずっと連呼していた。

いっそこのままにしておくか?でも、もしこいつを放置して、暴走でもしたらーー



「はい、どいてどいて!わいせつ行為をしたって男はどこですか?」


「ここです!こっちにいます!」


「やばい!もう来たのか!?」



考えている間に、パトカーが到着してしまい、

警察官が2、3人こちらに向かって歩いてきていた。



「どうすればいい…どうすればーー」



……いや、逆に今のうちにこいつの魂を鎮れば、みんな助かるんじゃないか?


今の男はヤンデレ状態。

俺が後ろから還魂ノ言を唱えたら全て丸く収まるはずだ。



「そうと決まれば…行くぞっ」



俺は呼吸を整え、力を手のひらに集中させようとした時ーーー


ガブッ!



「いっっって!!!」



突然、手のひらに激痛が走り、俺は思わず

抱き抱えていた清正を離して手を押さえた。

清正が俺の手を噛んだのだ。



「馬鹿もんが!ここでお主の力を使ってほかの武将たちに見られたらどうするのだ!!」


「だからって噛むかよ普通…!」



痛ってぇ…少し血が出たか。

マーモットってこんなに噛む力が強いのか…いや、そんなこと言ってる場合じゃない!


ここでこの武将を鎮めることが出来ないなら

別の方法を考えないと…



「陽介、大丈夫か!?」


「武流!あぁ…けど、今少し困ってる」


「?」



武流は俺とこの男、そして周囲を一通り見渡して

少し静かになったと思いきや、ずんずんと男の方へ進んで行った。



「お、おい。武流?」


「あんた、ちょっと着いてこい!」


「えっ?」



武流は男の腕を無理やり掴むと、そのまま立ち上がらせて、この場から逃げ出したのだ。



「お、おい!待ちなさい!!」


「陽介、行くぞ!!」


「は!?……まじかよおい!?」



俺は武流に呼ばれ、清正を抱きかかえて反射的に走り出した。

俺達の後ろからは警察官達が追いかけてきていたが、

全速力で見慣れない街中を走り抜けた。




ーーーーーーーーーーーーーーーー




「はぁ……はぁ……はぁ……」


「もう追って来てないな……はぁ、はぁ……」



あの後も、警察官から逃げるために走り続けた結果、とある小さな公園にたどり着いていた。

俺は膝を抱えながら息を整え、ベンチに腰かけた。



「いや〜かなり走ったな!」


「お前……なんであんなことしたんだよ。」



水道で水を飲んでいた武流は申し訳なさそうに振り向いた。



「……ごめん、でもなんか……あのおっさん見てたらさ、ちょっと村上思い出して。」


「!」



普段は誰に対しても明るく、ふざけ倒している武流が村上のために悲しそうな表情をしていた。




「もしあのままにしていたら、村上のように暴走して関係ない人達が怪我して、そうなったらお前がしんどい思いするんだろ?……だからつい、連れてきたっていうか……ごめん、上手く言えない。」


「武流……」



学校襲撃後、武流はよくネット記事を見るようになっていたことを思い出した。

たまたまスマホ画面が見えた時、武将関係のニュースや村上に関するものを調べているようだった。

その記事を見る度に、やるせないような、話しかけても遠い目をしながらボーッと外を眺めていた。


きっと、あの行動は武流の中で、色々考えて出した結果なんだろう……俺はそれ以上、武流に色々聞くことを止めた。



「悪い武流……お前に迷惑をかけてしまったな。」


「は?いやいや、それは違うだろ。これは俺が勝手にやった事だから!」


「けど、心配させたのは俺だ。だから、逃げ出さずあの男に話を聞いてくる。」


「大丈夫なのか……?逃げてる時もずっと独り言を喋ってたぞ?」


「……なんとかするよ。」



俺は立ち上がってあの男へと視線を変えた。

ずっと走りっぱなしだったからかゼイゼイと息を整えている。



「なぁ、あんた大丈夫か?」



声をかけながら、さり気なく胸の辺りをチラッと見た。さっきまで視えていたドロドロの魂が消えている……走ってショック受けてるところじゃなかった感じか?



「……なんだ。どうせお前も私がおかしいと言うのだろう?」


「まぁ、それは……うん。でもなんか事情があったんだろ?」


「……」



黙ってられると困るんだよなぁ…

こういう時なんて声をかければいいんだ?

俺は気まずい空気の中、何を話せばいいか

考えていると、ずっと黙って肩に乗っていた

清正がストンッと地面におりた。



「おい、お主。」


「うわっ!?あの時の鼠!」


「鼠でないわ!このような形をしておるが、我は加藤清正だ。お主、名をなんと申す。」


「加藤……清正?」



ポカンとしている男の表情を見るに、

清正の事を知らないのか……?

でも、清正が名前を聞き出してくれたのはありがたい!


男は噛まれたトラウマのせいで、清正を警戒しながらその場にあぐらをかいて座った。



「私は……長政。近江を治め、朝倉に仕えし浅井長政と申す」


「浅井長政!?」


「近江の浅井?知らんな。」



おっと、まさかのこっちも知らなかった!

腕を組んで仁王立ちしている清正は表情一つ変えず、なぜかやけに態度がでかかった。


てか、近江ってどこの県だっけ?

俺はこっそりスマホで近江の場所と浅井長政について調べてみた。


『浅井長政 どんな人物』

戦国時代の武将(1545-1573)。近江国(現在の滋賀県北部)小谷城の城主。浅井氏第5代当主。

当初、織田信長と同盟を結んでいたが、浅井氏と縁の深い朝倉義景を信長が攻めたことで関係が決裂。結果、織田信長と敵対し、姉川の戦いで敗北。最期は小谷城で自害。



「あ〜なるほど。んで、近江は〜……えっ、滋賀県!?なんで滋賀から東京に来たんだ?」


「私の……妻を探しに来たのだ」


「妻……?」



浅井長政の妻って確かーー



「お市の方…?」


「……そうだ。私はお市を探しに来たのだ。」



お市の方…浅井長政の奥さんであり、織田信長の実の妹だ。


お市の名前を出した途端、目が急に正気に戻ったと思うと、突然俺の腕を掴んで叫んだ。



「頼む!私の妻を…市を探してくれないか!!!」




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