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戦国再臨録〜祖父が武将の魂を蘇らせたので、俺が鎮めます。〜  作者: あると。
動き出す武将たち

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15/25

イケメンは性格もイケメンでした。

武将たちの会合から数日後ーーー



「陽介!帰りに肉まんとやらを買ってくれ!」


「なぁ……最近食い意地張ってないか?」



怪我が完全に治った俺は、二日前に退院し、

今は学校から帰っているところだ。


退院当日は、武流と清正が迎えに来てくれて、

その日の夜に武流の家でホームパーティを開いてくれた。



「陽介くん、遠慮せず食べなさいね!」


「あざす!」



武流のお母さんの料理、めちゃくちゃ美味かったな〜

……入院生活で出てきた病院食とは比べものにならないくらいに美味かった。


パーティお開き後、清正はこのまま武流の家に居座ると思っていたけれど、「お前が心配だから」と言って、結局一緒に帰ることになった。



「ありがとうございました〜」


「ほ〜!これが肉まんか。美味そうだ!」


「ーーったく。今日だけだぞ?あまり無駄遣いしたくないんだから。」



俺が入院している間、清正は武流からいろんなことを教わったらしい。ーーといってもほとんどが食べ物の事だけど。


だから肉まんの存在も、知っていたのか。

初めての肉まんにキラキラと目を輝かせて、頬張っている清正。



「ぬぉ!これは美味いのぉ!!ーーん?」


「どうした?清正」


「あれは……」



清正の見ている方向に視線を向けると、

そこには、見覚えのある人物が立っていた。



「お久しぶりです、陽介くん。」


「あなたは……」



スッと背筋を伸ばして立つその男は、


誰もが振り返るほど整った顔立ちで、まるで空気までも洗練されたような雰囲気をまとっていた。


ーー上杉謙信。間違いない。

清正が肉まんを食べる手を止めるのと同時に、

通りすがりの女子高生たちがざわつき出している。



「どうしたんすか?こんなところで」


「ん〜……君に会いたくて」


「えっ」


「ーーなんて、冗談ですよ」



俺をからかってクスッと笑う謙信。

腹黒で何考えてるか分からないやつって思っていたから、こんな冗談を言って笑っているのが少し意外だった。



「まぁ、でも会いに来たのは本当です。君に話したいことがありましてね。」


「あ、そうなんすね。」


「えぇ……ところで、先程から君の方にいる生き物はーー?」



あ、そうだった。清正がこんな姿になったの

謙信は知らないんだよな。

話しても大丈夫だろうか……?

さり気なく清正に視線を向けたが、

表情を一切変えることなく、無言で肉まんを頬張り、謙信をじっと見ていた。


……いや、そこは食うなよ!?



「どうしました?」


「あ!いや……えっと、こいつはーー」


「お久しぶりですな。謙信殿。」



喋るんかーい!

しかも、食べながら喋るせいで、肉まんの具がポロ……いや、ガッツリ俺の肩に落ちてきた。


謙信はというと、いきなり喋りだした動物に

少し驚いていたがすぐに察したようで、

またいつもの爽やかフェイスに戻った。



「もしかして、清正殿……でしょうか?お久しぶりです。お元気そうで何より。」


「さすが謙信殿。我がこの姿になってもすぐ誰か分かるとは、やはり貴方は聡明なお方だーー」


「いえ、私など大したことないですよ。」



問題なさそうだな、よかった。

けれど……正直、場所を移動したい。


なぜならーーー



「ねぇ、あの人めっちゃかっこいい……」


「ほんとだ!芸能人かな?」


「超イケメン!やばっ写メ写メ!」



通りすがりの女子たちが、謙信を見た途端、ずっと騒いでいるからだ。

……というか、目立ちすぎだろ、あいつ。


まぁ…そりゃそうか。謙信は男の俺から見てもイケメンだ。

鼻は高く、肌は色白、切れ目で顔も小さい。

おまけに髪はロン毛だが、サラサラで金髪ときた。



「おや?少し騒がしくなりましたね。場所を変えましょうか。」



原因が自分だって気づいていないのか!?

……ったく、これだから無自覚なイケメンは。


けれど、冗談抜きでこれ以上ここで話していたら

人が更に増えそうだ。


本当は武将絡みの奴らに、あまりこういうことは

言いたくないんだけど、仕方ないーー



「あ〜……じゃあ俺ん家来ます?ここ真っ直ぐ行けばすぐなんでーー」


「なるほど……では、お言葉に甘えてお邪魔させていただきます。」



そして、案の定野次馬が増えてきたところで、

俺達はそそくさとその場から立ち去り、

俺の家まで向かったのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



「しかし、何だったんですかね?あの人集りは。」



あんたのせいだよ?

無自覚なのかわざとなのか、

どちらにしてもちょっと腹立つ。



「で、話ってなんですか?」


「陽介くん、会合について何か聞いていますか?」


「え?あ〜そういやニュースでやってましたね。それがどうしたんすか?」


「君にも関係してくると思いまして…まぁ簡単に言うと情報提供です。」



そんな情報提供いらねぇ……

また面倒事に巻き込まれそうだと思っていると、

テーブルの上に乗っていた清正が目をギラつかせていた。



「……謙信殿、詳しく聞かせくれぬか?

話の内容によってはこちらの情報も提供しよう。」


「え、お…おい清正!勝手なこと言うなよ!」


「大丈夫ですよ。見返りなんて求めていませんから。では、早速ーーー」



笑顔で返す謙信は会合で起きたこと、話した内容をほど細かく説明してくれた。


それは信長の同盟によって、現代日本の崩壊が迫っていること。

そして、同盟に賛同した武将達もかなりの実力者が多く、反対派との戦争もさほど遠くない未来で起きるかもしれないということだった。


どれも普通じゃ有り得ない話なのに、

武将の力を身近で体験した俺にとっては

村上と同じーーいや、それ以上の力を持つ武将達が

これから日本の存続をかけて戦争するのかと思うと、

背筋がゾッとした。



「ーーとまぁ、こんな感じですね。全く…血の気が多い若者には困りますよ。」


「謙信殿、話を聞いた上で一つ伺いたい。お主はこの少年の…我らの“味方”か?それともーー敵か?」


「………」



険しい表情で謙信を見つめる清正。


俺も正直、ただ情報提供の為に来たとは思えない。

もっと他にも別の目的があるんじゃないか?


緊迫した空気の中、謙信が口を開いたーー



「えぇ、私あなた達の味方で、同盟には反対派です。」


「それを”証明”するものはあるか?」


「残念ながらありません……ですが、”証明”するものが欲しいのであればーー」



スッ……


突然、微かな金属音が響いた。

腰の太刀が、静かに鞘から抜かれたのだ。



「「!?」」


「今この場で、この腕を切り落としましょう。」



一瞬にして、この場の空気がピンと張り詰め、

俺の心臓がドクンと跳ね上がった。



「いやいや、何やってんですか!!」


「陽介くん。これは私なりのーーいや、武将としての”証明”であり”ケジメ”なんですよ。」



こんな状況でもなぜか清々しい顔をしている謙信。


そして、刀を持っている手に力を入れると、

ギリッと刀が右腕に食い込む音が聞こえた。


一歩間違えれば、本当に腕を切り落としてしまう。

落ち着けと自分に言い聞かせようとしても、

目の前の光景に動揺し、呼吸が浅くなる。



「どうでしょうか、清正殿。」


「ーー謙信殿、刀を下ろしてくれ。我々としてはそこまでする必要などない。お主の覚悟はよく分かった。」


「よろしいのですか?”随分と優しいのですね”」



清正が冷静に対処してくれたおかげで、

謙信はゆっくり刀を鞘に戻した。


その様子を見届けた俺は全身の力が抜けて深く息を吐いた。



「はぁぁぁ〜、よかった〜!」


「ふふ、驚かせてしまってすみません。ですが、我々からしたら当時は相手を信用させるために血を流すことなど、”当たり前”でしたので。」


「だからって現代でも同じことするなよ……ってほら、怪我したじゃないですか!」



謙信の右腕に視線を向けると、切り傷ができており、血が滲み出ていたので、俺は急いで棚から救急箱を 取り出し、傷の手当をしながら、清正に文句を言った。



「清正のせいだぞ。”証明”しろ!なんて言うから」


「な!我はお前のためを思ってだなーー!」


「ふふふ、二人とも仲がいいんですね」


「「よくない!」」



俺と清正が言い合いをしている間、謙信は楽そうに

ニコニコしながら傍観していた。


何考えているか分からないって思っていたけれど

こうしてると、案外良い奴だったんだな。


こうしてわざわざ俺のところに来て

情報提供してくれるほど、紳士的な面があるけれど、どうしても分からないことがある。



「なぁ、なんで俺に話してくれたんですか?」



謙信の腕に包帯を巻き付けながら、聞いてみた。



「俺に言っても言わなくても、どっちにしろ派閥争いは免れないし、今の俺はまだ魂を鎮める力をちゃんと扱えない。……だから、今回、俺の前に現れた”本当の目的”が賛成派だった連中全員の魂を鎮めて欲しいっていう頼みなら、申し訳ないけれどお断りします。今の俺にはまだその”役目”はできない……。」


「……」



入院中、俺はずっとこの力について考えていた。

村上と戦った時、”感情”と”勢い”に任せてばかりで

自分で力を発揮できなかった。


戦いの最後の方は何とか力を発動させて、

村上の先祖を鎮めることは出来たけれど、

それは、清正の喝や助言があったから

冷静になれただけで、俺一人で発動させたわけじゃない。


それに、友人たちに凄いと言われるたびに

胸が締め付けられる思いだった。


だって俺は、自分の力を“扱えていない”。

むしろ、力の方が“俺に使わせてやってる”って俺に言ってくるようだったから。


だから謙信がもし、俺の力を頼りにしているのであればそれは、お門違いな話なんだ。



「……陽介くん。」


「はい。」


「私は、貴方に会ってからここでお話するまで、貴方の力について何か話しましたか?」


「……いいえ。」


「そうですよね。むしろ、君が勝手にベラベラと話してくれましたよね?”魂を鎮める力をちゃんと扱えない”……と。私が覚えている情報だと、君はそもそも”力があるかどうかすら信用していない”はずでしたが?」


「!!」



そうだ……謙信達と初めて会った時、

俺は自分の力について信じていなかった。

しかも、謙信と会うのは今日で2回目……

その間に俺の身に起きたことなんて知らないんだ。


痛いところをつかれた俺は、謙信に言った矛盾を否定できず、何も言えなかった。



「……すみません。少し言い方が悪かったですね。陽介くん、私が君のもとに来た本当の目的は、君を守るために来たのです。」


「守る……?」


「えぇ。初めて陽介くんとお会いしたあの時から、君は我々には無い特別な力を持っているな。と思っていました。」


「え…まじすか」


「まじです。」



ニコッと笑う謙信。

入院中に、清正と話していたことが

まさか本当になるとは……どんだけ頭がいいんだよ。



「おおかた、先程の口調ですと、私が君の力を”利用”するのでは?と思っていたのでしょうが、残念ながらそんな手間のかかるような事はしませんよ。」




ドキッ!!

ぜ、全部読まれている……

図星をつかれた俺と清正はますます気まずくなり、

もう何も言えず、縮こまってしまった。



「謙信殿……我々の考えが浅はかであった。申し訳ない……。」


「いえいえ、人を疑うのは人間の性です。私は貴方達を責めたりしませんから、安心してください。先程もお伝えしたように、陽介くんを守るためにここに来たんですから。」



この人は神様か?

今まで腹黒って思ってごめんなさいと心の中で

ひたすら謝罪をした。


そばにいた清正は黙って謙信と俺を見ていたが、

どこか安心したように、ふっと目を細めていた。



「ですが、守ると言いましても、私がここにずっといるわけではないんです。」


「え、そうなんすか?」


「はい。ですので、これを陽介くんにお渡しします。」



そう言って渡してきたものは、翡翠色の数珠だった。



「この中に、私の力を込めました。武将の気配を感じ取ったり、多少の攻撃を防ぐことができます。」


「えぇ!いいんですか!?こんな大事な物を貰っちゃって……」


「構いません。ただし、使えるのは一日に三回程度が限界です。万能ではありませんが、何かあった時にお使いください。」


「でも……どうして俺を守ってくれるんですか?」



数珠を握りしめ、謙信に尋ねた。

ここまできた以上、なんで俺のために守ると言い、

こんな貴重なものまでくれるのか、聞かずにはいられなかった。



「君の存在を信長に知られないためです。」


「え、でも……」


「……君の使命も理解しています。」



謙信は少し目を伏せて、話を続けた。



「ですが……信長や会合で賛成派についた武将たちはかなり厄介な連中です。君の存在や力を知られてしまえば、真っ先に殺しにくる。……君のような“未来を生きる若者”が、我々の戦いに巻き込まれて消えていくのを、私はこれ以上見たくないのです。」



それは謙信の切実な”願い”に感じた。

何かと重ねているようなーー言葉にはしなかったけれど、その静かな目が、それを語っていた。



「……謙信さん、ありがとうございます。

でも……俺、守られるだけってのは、なんか……嫌なんです。

まだ全然、力も扱いきれてないけど、でも……俺なりに、戦えるようになってみせます。だから、その……」



言葉がうまく出てこなかった。

けれど、心の中にあった“何かを返したい”って気持ちだけは、本当だった。



「謙信殿……いざとなれば我もいる。陽介は我が命にかえても必ず守るとここで誓おう。だから安心して欲しい。」


「……分かりました。それを聞いて安心しました。」



それを言うと、謙信は静かに立ち上がった。



「では、私はこの辺でお暇させていただきます。」


「もう行くのか?せっかくなら止まっていけばいいのに……」


「ふふ、ありがとうございます。そしたら、次お邪魔する時にでもーー」


「おう!その時はぜひ酒でも交わしましょうぞ!」


「えぇ、ぜひ。」



俺たちは夜の神社を一緒に歩くと、

「ここで大丈夫です。」と鳥居の前で立ち止まった

謙信が、俺の方へ振り返った。



「では、陽介くん。今日はありがとうございました。また近いうちにーー」


「あぁ、また!」



冬の空気が透き通り夜空が繊細に輝く中、

白い息をはきながら、謙信は一度も振り向かずに帰って行ったーー



「は〜、なんか色々話せて良かったわ」


「そうだな。謙信殿が後ろ盾にいるのは非常に心強い。」


「なっ!でも、頼ってばかりじゃいられないな。」



俺はもっと強くなりたい。いや、強くならないといけない。

謙信から貰った数珠を握りしめて、決意した。



〜♪〜♪〜♪

すると突然、俺のスマホから着信音が鳴り響いた。



「ん?武流からだ。ーーおう、どうした?」


『おー、陽介!今週の連休暇?』


「あ〜そういえば今週三連休か。」



入院生活が長かったせいか、普段嬉しいはずの休みにあまり関心がなかった。



『久しぶりに東京行かね?』


「人多い、めんどい、いやだ。」


『つれないな〜…あ!ねぇきよっちに代わって!』


「は?まぁいいけど……清正、武流から電話」


「ん?我にか?」



小さい身体で器用にスマホで電話する清正の様子が

違和感ありすぎて、なんか……凄くいやだ。



「どうした武流殿……なに!?それはまことか!!」



何話しているんだ?

あの二人の事だ、嫌な予感しかしない。


それにしても、清正に初めて俺のスマホを見せたけど、何だこれは!?って驚かなかったな。

あいつ……絶対、武流にスマホの使い方仕込まれたな。



「ーーあい分かった!陽介にも伝えておこう。ではな!」


「え、終わったの?武流、なんだって?」


「陽介、皆で東京へ行くぞ!!」


「えぇ〜……」



やっぱりこうなった……連休は俺の力を扱えるように色々特訓をしようと思ってたのになぁ

けれど、清正はノリノリで、楽しそうに人の肩の上でリズムを踏んでいた。



「東京とな!一体どんなところなのだろうか!武流殿が言うには、くれぇぷという甘くて美味いものがあるそうだぞ!」



あいつ、また余計なことをーーてか、東京が昔でいう江戸だってこと、清正は知らないのか。

……そりゃそうか、時代も景色も全部変わってるし、見たところで覚えてるわけがないか。



「そうと決まれば早速支度するぞ!」


「いや、まだあと2日もあるから……っておい、待てって!」



清正の背中を追いながら、俺はため息をついた。

連休中は厄介なことに巻き込まれませんようにーー

そう願いながら、俺は家の中へと入ったのだった。



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