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戦国再臨録〜祖父が武将の魂を蘇らせたので、俺が鎮めます。〜  作者: あると。
動き出す武将たち

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14/25

早くお家に帰りたい……(泣)

「猿と狸は…やはり来ぬかーーまぁいい。これだけ集まれば十分だ。」



ふぅ……と赤と金の装飾が施された煙管を唇に当て、紫煙を吐き出すその姿は、まるで“泰然とした暴君”そのものだった。


何か独り言を話しているようだったが、

距離が遠くてよく聞こえない。


私は部屋の入口近くの隅で隠れるように

正座していると突然、信長の声が響き渡った。



「おい、せんべえ!そこで何してる。お前はこちらへ来い。」


「え?わ、私?」


「グズグズするな。さっさと来い。」


「は、はいぃ…」



とほほ…どうしてこうなるんだ。

私は再び周囲の視線を感じながら中腰で上段の間へ向かった。



「お前、ここで記録方をしろ。」


「私が!?」


「文句あるか?」


「いえ、ありません」



なんで私が記録係なんだ……!

けれど、ここは素直に従った方がいい。

逆らえば、私もあんな風に…

信長の命令で遺体を片付ける不気味な家来たち。


それを見てゾッとした私は用意された巻物と筆を手に取り、信長の少し後ろに座った。



「よし。では、本題だがーーー」


「その前にひとつ宜しいか?」



信長の言葉をさえぎって、一人の男が挙手をした。

そっと信長の顔を除くと少し機嫌悪そうに男に話を振った。



「…なんだ。」


「この姿では分からぬと思うので先に名を申す。私は、今川義元。また生きてお会いできたこと喜ばしく思う」



今川義元だと?

あの武田正司さんと言い、”ごっこ遊び”にしては随分と凝っているな。まるで自分は本物の戦国武将だと言うようにーーいや、しかし…そのまさかなのか?


考えれば考えるほど頭が混乱してくる。

そんな中、今川義元と名乗った男は、

信長に対して、詰め寄っていた。



「ーーが、貴殿に尋ねるが、先日我を襲ったあの化け物は一体なんだ。あれを斬り捨てた後、この会合へ来るようにと文だけが残ったが、貴殿は一体何を企んでおるのだ。我らを試したつもりか?」



えぇ…この男、そんなことをして集めたというのか?

私がそんな事したら謝罪会見じゃ済まないぞ?


今川義元と名乗る男の問いに、信長はふっと笑った。



「お主……”アレ”の事を知らんのか?まさかとは思うが、お主は”アレ”を出せる力がないのか?」


「な、そうではない!あの者を斬り殺さないとここへは来れないというお主の意図を知りたいのだ!」



おぉ……かなりお怒りのようだな。

信長の方は、相変わらず何を考えているか分からない 。


他の参加者たちの方へ視線を向けてみると、

何人かは今川義元の発言に同意するかのように

頷いているが、それ以外は一切微動だにせず、

その場に座っているようだ。


まるで銅像のようだ……けれど、一切の無駄を削ぎ落とした“集中”だけが、そこにあった。



「何をそんなに怒る。お主は”くちびと”を倒したからここにいるのだろう。それ以上でもそれ以外でもないだろ。」


「なにを言っている……?」


「ふっ(笑)まだ分からぬのか?」


「何を笑っている!」



馬鹿にするような笑い方に

今川義元は怒りを露わにしていた。


この男は人を怒らせるのが得意なのか?

随分と皮肉な奴だ……。



「ここにいる者全員……猿と狸以外は、全て俺が手配した”くちびと”を倒してやってきた者たちだ。」


「……つまり、ここにいない者はーー」


「あぁ、死んだと思えば良い。」



ザワッ

信長の口から出た衝撃発言に会場がザワつく。


“くちびと”?ひょっとして……あの化け物のことか?

恐る恐る鳳凰の間の入口に視線を向けると、

ちょうど遺体の処理を終えて、部屋から出ようとしている甲冑姿の家来がいた。


目を細め、彼らの顔をよく見てみると、それはただの人ではなく、朽ちたゾンビのような姿をしていた。


なんだあれは……!あんなものがどうして普通に動いているんだ!?どうやってあんなもの作ったんだ?



「”あの程度の力”でくたばる者たちなど、俺の目には映らぬ。相手にする価値もない。」



……私は今、とんでもない怪物の横で、記録係をしているのかもしれない。



「何故そのようなことを…貴殿は何を考えておるのだ」



問い詰められている中、呑気に煙管を吸い、

ふぅ……と煙を吐き出した。



「ーーー国の再建」


「なに?」


「この国を、一から作り直す。……全てを、壊してな」


「!?」



今、なんて言った!?

私は驚きのあまり、筆跡する手が止まった。



「なんだと……」


「そんなこと、いやだがーー」



どうやら、驚いていたのは私だけではないようだ。

突然の日本再建宣言に他の人たちも動揺していた。


だが、この男は周囲の混乱にも眉一つ変えず、

自身の目的について話し始めた。



「俺は数日前、再び現世へと蘇った。この身体を手に入れ、力を得た俺は外に出てこの国の”今”を見た。」



蘇った……?ではやはり、武田さんや今川義元と名乗るこの男も”本物”なのか?



「この国はゴミだ。」



どストレートに悪口を言い放ったな。



「情けなく、惨めで、救いようがない。

我らが命を賭して積み上げた礎の果てがこれか。

自由を手にしたはずの民は、考えることをやめ、責任を放棄した。

治める者は顔と数字で選ばれ、覚悟も知恵も持たぬ者が玉座に座る。“国を導く資格”を持たぬ者が、国を動かしている。」



一瞬、チラッとこちらを見たような気がする…。

しかし、信長の言うことは痛いところを付いており、何も言い出せない。



「このままでは日本は滅びる。他国に食い散らかされ、かつての精神すら時代と共に消える。だから、俺が壊す。腐った枝を断ち切り、もう一度、強く、美しい国を作る。

――それが、俺の戦。かつて果たせなかった天下統一を、今度こそこの手でな。」



一同がシーンッと静かになっていた。

先程まで怒りで立ち上がっていた今川義元も、座って何か考えているようだ。



「ちょっといいっすか?」



緊迫とした空気の中、一人の少年が手を挙げた。

この少年、随分と若いな…ひょっとして、まだ未成年じゃないか?



「えっと、なんとなく言いたいことは分かったんすけど……結局、オレらって何のために呼ばれたんすか?」



確かに……今のところ、人を怒らせるか、現代日本への不満か、自分の野望の話しかしていない。


この青年、よくぞ言ってくれた!



「簡単だ。俺はこの目的を果たす為に、お前たちと同盟を組もうと思っている。」


「同盟!?」


「あの信長が……」



おいおい……もしかして、想像以上にとんでもない場に立ち会ってるんじゃないか……!?

この男に“同盟”なんて発想があったとはな……。

今回の会合で意外な一面をみた気がする。



「これは、俺一人ではなし得ないと思っている。だからこそ、ここにいる“選ばれし強者たち”を集めた。この国最強の軍を、俺と共に築こう。どうだ、同盟を結ぶ者はいないか?」


「「「……」」」



これは……どうなるんだ?

やはり、ただの“ごっこ遊び”なんかじゃない!

一歩間違えれば、本当にこの国が滅ぶかもしれないぞ。


というか、私は本当にここにいていいのか!?

今、日本を滅ぼす話をしているのに、

憎んでいる現代人がここにいるのにーー!



「面白そうっすね。俺いいっすよ~やりま~す!」



最初に手を挙げたのは、先ほど信長に質問した少年だ。

あれ!?この子賛成派なの!?

予想外の展開に、私は思わず思考が止まってしまった。



「いや~、今の日本ってさ、税金ばっか高いし、上のやつらは何もしないし……正直、生きにくいっすよ。

いっそ全部ぶっ壊して、最初から作り直す方がよっぽど面白いかなって思って!」


「ほぉ…先程から貴様のその口調…”子孫”の方か。名をなんと申す。」


「あーそうっす!俺、真田拓人(さなだたくと)って言います。よろしくおなしゃす!」



真田だと!?

それに今、信長は”子孫”の方って言っていたな。

もしかして、この流れでいうと……彼は真田幸村の子孫っということか!



「ほう、真田の血がここに残っていたとはな。拓人と言ったか。お前、先祖の方はどうした。」


「あ~、幸村さんなら俺の中にいるっすよ!俺ら”共存”することで契約したんで!」



さっきから何の話をしているんだ?

私にはさっぱり分からない。

だが、信長の表情を見ると、口角が上がり、

どこか楽しそうな様子だった。



「良いだろう。会合が終わったらお前は残れ。他に俺と組む者はいるか。」


「……我も賛同する」



低く、重い声が響く。



「この混迷を終わらせるのは、我らの役目だ」


「そうだ!」



さらに一人、そしてまた一人と、真田くんを筆頭に次々と手が上がっていく——

会場に、ひたひたと“異様な熱”が広がっていった。


こんなにも…日本を壊滅させたい人達がいるのか

この会合が終わったら私は、刺されるのだろうか…

遺書でも書いておこう、そう思っていた時ーー



「少し…よろしいですか?」



賛成過半数になりそうなタイミングで

1人の青年が手を挙げた。



「なんだ、お前も同盟に賛成か?」


「いえ、私は同盟を組むつもりはありません。」


「……ほう」



遂に反対派が現れた!!

あの青年は一体何者だ?

よくぞ、よくぞ言ってくれた!


小さくガッツポーズをしていると、

信長が反対する青年に対し、

少しトーンを下げた声で問いかけた。



「理由を聞こうか?」


「信長殿。ひとつ、お聞きしたい。

その“再建”とは——誰のためのものですか?」


「なに…?」



一瞬にして空気が凍りついた。

鈍いと言われる私でさえ、それは察した。



「貴殿のためか。民のためか。

それとも……ただの、己の執念か」


「……皆のため、と言ったら?」



返されたのは、少しの笑みと皆のためという一言。



「ふふっ…随分と曖昧なんですね」



青年の声には、皮肉ではなく静かな確信があった。

凄い……この青年、信長の威圧に一切動じていない。



「ならば、お前が代わりに“答え”を示せるのか?」


「……いいえ。しかし、少なくとも貴殿のように中途半端な夢に命は懸けられません。」



ニコリと笑う爽やかなその顔は

まるで何かを見透かしているかのような、

相手を見下しているかのような……そんな笑顔をしていた。



「……はっはっはっはっは!!」



すると突然、会場に響き渡る豪快な笑い声が聞こえた。

それはまるで、今まで張りつめていた緊張の糸を断ち切るような、山のように大きな男の登場を告げる合図だった。



「全く…先程から聞いておれば戯言ばかりを言うておるのぉ!」


「お前は……」


「なんだ。招いておいて、わしを知らぬのか?

わしは甲斐国の領主、武田信玄ぞ。」



正司さん!ーーいや、心の中でそう呟いた時にはもう、彼は完全に“武田信玄”としてその場を支配していた。


信玄は、先ほどの青年の背中をバシバシと豪快に叩き、まるで旧知の友を励ますように笑った。

そしてその笑みを崩さぬまま、信長に視線を向ける。



「わしも謙信と同く、同盟は断る!信長よ…戦にこだわるばかりでは、”また”周りを見失うぞ。」



堂々とした声に、場の空気が再び緊張した。

だがそれは先ほどまでの“押し潰すような重さ”ではなく、意志をぶつけ合う者たちの静かな火花だった。



「さて、謙信よ。そろそろ我らはここいらで帰ろうと思うのだが、どうか?」


「えぇ。それについては大いに賛成です。」



あの青年ーー謙信と言っていたか?

スッと立ち上がった武田信玄と

それに続くように、謙信も静かに立ち上がった。


ふたりは一言も発さぬまま、まっすぐに出口へ向かって歩き出す。

その背中はここにいる全員が引き止めても、止められないような“オーラ”を感じた。


カーーーンッ!



「待て。」



突然、鋭く響いた低い声。

同時に、何かを叩きつけたような音がした。

恐る恐る見ると、それは煙管を灰皿に叩きつけ、

灰を取り出した音だった。



「この場を出たら、貴様らを敵とみなし、必ず殺しに行く。」



一瞬にして空気が変わった。


その場にいる全員の呼吸が、ほんの一拍止まったように感じた。


襖に手をかけた信玄と謙信の動きも止まり、

背中にわずかな緊張が走ったのが見えた。


私の背筋にも冷たいものが走り、思わず息を飲んでしまう。

恐る恐る斜め前を見ると、そこには先ほどまでと

打って変わった信長の姿があった。


全身から怒りがにじみ出ている。

瞳は鋭く、唇はかすかに歪んでいた。


……ここで何か起きる。

そう思わせるには、十分すぎるほどの威圧だった。



「……だが、先程の発言を撤回するのであれば、許してやらんでもない。お前たちも同盟に参加するのであれば、それなりの褒美と名誉をやるぞ。」



信長は紫煙をくゆらせながら、まるで“王の寛容”を語るように言った。

だがその瞳には、微塵の慈悲も見えなかった。むしろ、拒めばただでは済まぬ。という暗黙の圧が漂っていた。



「はっはっはっはっは!面白いやつよのぉ」



対する信玄は、豪快に笑い飛ばす。

その背中にはまるで泰山のような揺るがぬ威厳があり、信長の威圧すら軽く受け流しているようだった。



「いいだろう!遠慮なくかかってこい!」



まるで、かつて幾度も戦場で死線をくぐった者だけが持つ“戦の勘”が、再び目覚めたかのような勢いだった。


その隣で、謙信が静かに口を開く。

鋭く整った目元は、信長を射抜くように見つめている。



「貴方のような若造が、挑んでくるなんて……むしろ楽しみですね。」



その口調には怒りも苛立ちもない。

ただ、純粋に“戦”を待ちわびる者の喜びが滲んでいた。

彼らにとっては、会合もまた戦場。

言葉と威圧の剣が交わる、静かなる戦なのだ……。



「……我も失礼する。」


「……」


「わしもだ。」



信玄と謙信の後を追うように、反対派の人々も次々と立ち上がり、出口へと向かっていった。


これには信長も予想外だったらしく、少し驚いた様子で、その光景を眺めていた。



「信長殿」


「……」


「人とは、ただの“道具”ではない。

心があり、意思があり、誇りを持つ生き物です。

我らが生きた時代にも、それを背負った者たちがいた。そして今も同じ。

――この時代を生きる者たちにも、意思と尊厳がある。

……それを、もう一度よく考えてみてください。」



それだけ言い残し、謙信は部屋を後にした。

他の反対派もどんどん去っていき、

鳳凰の間に残った人数は半分ほどとなった。



「あ~…行っちゃいましたね」


「……ふっ、はっはっはっはっ!」



すると、あれほど怒っていた信長が突然大声で笑い出した。

私や賛成派の人達はその様子を呆然と見ていると、

信長は前髪をかき分け、顔を上げた。



「まぁ…だいたい予想はついていたが、ここまで分かりやすいとはな」


「いいんすか?」


「構わん。もとよりここにいる全員が同盟するとは思っていない。」


「ふーん。まぁ信長さんがいいって言うなら、いいんじゃないすか?俺は自分が自由になれるならそれでいいんで。」



真田くん…同盟を組んだ途端、随分とくつろぎ出したな。


信長はゆっくりと立ち上がると、壁の一角に飾られた古地図の前で立ち止まった。



「人数は問題ではない。俺に必要なのは“駒”ではなく“核”だ」


「核……っすか?」


「そうだ。国を壊すにも、創るにも……火種が必要だからな」



地図に手を当てる信長の目は、どこか別のものを見ていた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーー




その頃、安土城を出た謙信達はーー


外に出ると辺りはすっかり暗くなり、人の気配は消え、夜空には星がくっきりと見えていた。



「しかし、厄介な事になったな。」


「そうですね。まぁ、ここに集まった時点で嫌な予感はしていましたが……」



信玄が袴の裾を軽く払い、夜風が髪を揺らした。



「信長の言う“再建”は、どうも好かんのぉ。”あれでは”再建”ではなく、“更地”になるだけだ。」


「えぇ、その通りです。彼の言葉には“民”がおらず、理想がまるでない。一度蘇っても、考えは変わらないということですね……」



しばらく黙って歩いた後、信玄がふと、視線を空に向けた。



「だが、面白い若者もいたな。」


「……真田の子ですか?」


「いや、そっちではない。我らの近くに座っておった”あの者”ーー」


「……ああ、”あの現代人”ですね。」


「ふむ。やはり気づいておったか……あの者、見た目以上に“芯”がある。いずれ、何かの“鍵”になるやもしれん。」



謙信は少し驚いたように信玄を見た。



「貴方がそこまで言うとは……珍しいですね。」


「はっはっはっ!ただのじじいの勘よ、勘。」



遠ざかる背中の向こうに、再び風が吹いた。



「さて、どう転ぶか……この“第二の戦国”は。」



そのまま、二人は夜の闇へと消えていった。




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