1、絶望の果て
俺、山郷裕太郎は。
同級生の彼女が浮気している事に気が付いた。
気が付いたというのは。
簡単に言ってしまえば彼女、下村幸奈がラブホに行っていたのだ。
共に17歳の彼氏彼女関係。
つまり恋人同士だったが...俺は酷く絶望した。
どれぐらい絶望したかといえば。
ストレスで髪の毛が抜け落ちているぐらいにはストレスになっていた。
ただでさえストレス気味だったが。
この事で更にストレス度が加速した。
俺は吐き気を覚えてしまった。
容姿が良くなかったのだろう。
そんな事を考えながら俺は引き籠っていた。
かれこれ1週間は経過している。
だけど全く学校に行く気が起こらない。
それだけ絶望していた。
平日にも関わらず今日も午前11時に目が覚めた。
そして月曜日である今日を動き出す。
だけど同じパターンの繰り返しだ。
新聞読んでスマホ弄って寝る。
これの繰り返しだ。
俺は「何をしているのだろう」と呟きながらそのまま新聞を読んでいるといきなりピコンと。
何ならマンション中に響きそうなぐらいの音に感じれたが聞こえた。
大きな静寂な部屋に似合わない音だ。
スマホを開いてみる。
そこには(先輩。学校に来ませんか)と書かれていた。
下村幸だ。
16歳の同じ高校に通っている1年生。
俺はその言葉に(暫くは行けないな)とコメントする。
(テストで悩んでいてな)とも、だ。
だがその言葉に(嘘ばっかりですね。先輩。知っていますよ私。お姉ちゃんが浮気しましたね?)と書いてきた。
手が止まる。
(待て。何でそれを知っているのだ)
(この1週間、私は何もしてないと思いました?私はお姉ちゃんを監視していました。そしてその結果、浮気している事が分かったので)
(...俺は何も言ってないのに良く分かったな)
(愛のお力です)
(ジョークでも有難いな)
(いえいえ。まあそれは置いておいて。...私、お姉ちゃんが浮気したのが許せないんですが)
(いや。許せないって言ってもどうしようもないだろ)
(果たしてそんな事有りますかね?)とメッセージを寄越す幸ちゃん。
俺は(どういう意味だ)と返事を書く。
それから送信をした。
すると幸ちゃんは(私、家からお姉ちゃん追い出そうと思いますので)と言葉を書いてきた。
(私は絶対にお姉ちゃんを許しません)
(まさかお前...マジにやる気なのか)
(やりますよ。この世界はそんなに甘くない。出て行ってもらいます)
(何でそこまでするんだ。放って置けば良いじゃないか)
(いやいや。先輩。このままで良いと思います?良くないですよね?私、あの女を絶対に地獄に落としてやりますよ)
(...しかし犯罪になってしまうからな。無理にすると)
(知ってますよそれぐらい。だったら犯罪にならん程度で追い出せばよかですよ。先輩)
博多弁。
俺はその言葉に苦笑しながら(お前がやりたいようにやってくれ。何でそこまでするのか分からないが...俺は応援するよ)と茶化す様に言う。
だが俺はまだ知らなかった。
幸ちゃんはマジに姉を家から追い出そうとしている事に。
そんな恐怖な事はしないと思ったのだが...。
☆
その日。
何故か昼間にスマホの通知音がまた鳴った。
それからスマホを開くと(お姉ちゃんを具体的にいつ追い出しましょうか)と書いてきた。
俺は(冗談でもやる気なら早めが良いんじゃないか。だってアイツは反省してないしな)と書く。
すると幸ちゃんは(じゃあ今週ぐらいには)と書いてくる。
(だけど幸ちゃん。冗談だよね?)
(冗談?今更冗談でこんなのします?私はばってん正直ですよ)
(アハハ。そうなのか)
何だか気楽になった。
幾らこんなジョークでも、だ。
心が軽くなった気がする。
それからスマホを観ていると(まだ段階途中なので出来ませんがそのうち、ネットにでも流そうかと思っていますしね。この情報)と書いてきた。
俺はその姿に「?」を浮かべる。
何だか寒気がしたのだ。
(おい。冗談でやっているよな?)
(先輩。冗談ってのは何ですか?私は冗談でこんな事しませんよ。マジに家から追い出しますし...それに犯罪にならない程度にボコボコにします)
(...お前。...あくまで捕まるぞ)
(そんな事にはなりません。私は制裁を加えているだけですから)
そう言いながら笑みを浮かべる様な文章を送ってくる幸ちゃん。
ゾッとした。
それから(冗談じゃ無いのか)ともう一度書く。
すると(先輩。冗談っていうのはこれじゃないです。私はあくまで先輩を裏切った分の制裁は受けてもらいますよ。お姉ちゃんには)と書いてくる。
何だか取り返しがつかない事になってきている。