可愛い可愛い異母妹の話
私の父はこの国の筆頭公爵家の当主だ。
私はそんな父と、政略結婚した母との間の子供。
ふたりとも美しく穏やかな人なので、私も遺伝か穏やかかはわからないがそれなりに美しく育った。
我ながらナイスバデーなそれなりの美人だと思う。
公爵家の娘ということで、ドレスや宝石で美しく着飾ることが常だから余計に綺麗に見えると思う。
「なんとお美しい…ローザ様はこの国の宝だ」
「さらに聡明で、いずれは公爵家を継ぐお方」
「慈愛深く、民への施しも行う天使のような方だ…」
とまあ一歩外に出るとこんな風に言われるくらいには、他の貴族にも領地の平民たちにも慕われている。
彼に微笑んで手を振れば喜んでくれた。
そんな私の家族構成は、ちょっとだけ特殊といえば特殊。
父と母と私、そして父の側室とその娘…つまりは異母妹の五人家族だ。
この国では貴族であれば側室は持てるので、制度上も問題ない。
お母様も了承の上だし、側室と仲良くやっているので多分いいんだろう。
なんなら私も彼女から大変可愛がってもらっている。
なので母も異母妹を可愛がる。私もそう。
お父様も政略結婚した母を尊重して大切にしているし、愛した側室も幸せにしている。その上娘ふたりは特に差別なく、どちらもとても愛して育ててくれている。
ただし私は跡取りであり、どうしても愛情や待遇に差別は無くとも受ける教育は違う。
だが妹はどちらかというと後継に向くタイプではなく、同じ教育を受けても意味がないと思う。淑女としての教育は問題なく受けているので性に合うだろうしお互いこれでよかったのだろう。
「ローザお姉様ー!」
「カメリア」
微笑んで、愛らしい花を片手に駆け寄ってくるのは愛おしい異母妹カメリア。
カメリアは母親似。私とは真逆で、華奢で愛くるしい見た目で守ってあげたくなるタイプ。
穢れを知らない天使のような振る舞いをするから、多くの男性を骨抜きにする。
本人はそれにも気付かず無邪気な笑顔を振りまいて、人々から私とは違った形で愛される。
私たち、形は違えど人々からとても愛される姉妹なの。
「おお!カメリア様は今日もお可愛らしいな」
「相変わらず無邪気な方だ」
「ローザ様とも変わらず仲が良いな」
「あの姉妹を見ていると心が洗われるようだ」
「俺はむしろあの姉妹には心酔しちゃうなぁ」
好き勝手に言われていることに、カメリアは知らない顔をして微笑んで手を振った。
その様子に胸を撃ち抜かれた男性は今日も多数。
「ふふ、じゃあカメリア。頑張ってね」
「はい、お姉様」
今日は、妹の晴れの舞台だ。
相手の女性も強く逞しい方で、妹の持つ剣をなんとか防ぐ。
剣術の天才である妹の猛攻をここまで耐え忍べる方もなかなかいない。
さすがは我が国の王家直属の女性騎士団の副団長。
けれど。
「はぁっ…!!!」
「ぐうっ…」
ついに妹が彼女の剣を跳ね飛ばした。
手から剣が落ちてしまった時点で、副団長の負け。
「勝者、騎士団長カメリア!」
「ありがとうございました。とても強くなりましたね、副団長」
「こちらこそありがとうございます!お手合わせ出来て光栄でした!」
こうして、王家直属の女性騎士団の剣術大会は妹の優勝で幕を閉じた。
「お姉様!見ていてくださいましたかっ?」
「ええ、とても強かったわ」
「ふふ!私もっと強くなってお姉様の役に立ちますわ!」
妹は、淑女としての教育を受けた。
しかし、ある日その類稀なる才能を剣術のお師匠様に見出された。
一目見て、剣鬼になると言われたのだ。
結果、その強さは男性騎士と戦わせても無敗を誇るほどとなった。
ということで、妹は女性騎士として戦場に出ることも多い。本当の、命のやり取りの場に。
けれど妹は、それで私の役に立てるならと微笑む。
実際妹のおかげで、我が公爵家はさらに名声を得た。
無理はして欲しくないが、妹が望むことを応援したい気持ちもある。
「無理はしないでね。頑張る姿がとても愛らしくて、とてもかっこいいから好きだけれど…あ、でももちろん応援しているからね」
「お姉様大好きー!」
人から見て、私たち姉妹がこんなにも仲良くしているのは異常なのだそう。
もっと愛憎渦巻く何かがあるのが普通の環境だと言われる。
けれど、私は妹を愛しているし妹は私を愛している。
だから、私たちはこれからもずっとこうして愛し合って過ごすのだろうと思う。
それが私にとっては、とても幸福なことなのだ。
宗教系の家庭に引き取られて特別視されてる義兄に気を遣ってたら、なんか執着されていました
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