第五話
、、、、、、
「カーンッ、カーンッ、、、」
遠くから鐘の音が聞こえる。
この鐘の音は、毎日朝と夜に俺たちの住居の出入りの時間を知らせる鐘らしい。
この身体に転生してから早数日。
すっかり奴隷としての生活に慣れてしまっていた。
正直仕事は農作業が主で肉体労働なので、前世の時よりも身体はしんどいが、上司に怒られないよりはマシだろう。
「けど、、、」
毎日のように夢の中に出てきてしまう。
響と子供、そして俺が幸せに暮らしている姿。
自分でもわかっていた。おそらく、もう戻ることはできないだろうと。
ところでこの身体の元の持ち主の魂はどうなったのだろうか。
亡くなってしまって魂が抜けた身体に俺の魂が入ったのだろうか?
それともまだこの身体にいる?
そんなことを考えつつ、俺は汗を流して労働に勤しんでいる。
そして最近、やっと同じグループの人達と少しずつだが話せるようになっていた。
グループの人達は初め、俺が記憶が無くなっているのであまり会話をするということはなかったが、最近ではやっと作業や世間話ができるようになった。
それでもやはり一部の人とはまだ話したことはない。
例えば初日から気になっていた耳の長い人とかだ。
やっと話せるようになった人から聞いたが、元々から社交的ではなかったらしい。
まあ、あの人にはあの人なりの事情があるんだろう。
それと、最近は自分よりもうちょっと年下の、奴隷とは思えない子達の世話も俺がしている。世話といっても休み時間に遊び相手になってあげているだけだが。
周りからは以前よりも大人っぽくなったと言われているが、まあ、実際に20過ぎてるからね、、、
ちなみに世話をしている子達は、年齢から順に女の子の10歳のミア、男の子のおそらく9歳のパウルと7歳のエミールである。
エミール、エーミール、、、うっ、国語か、、
3人の世話しているが、一番仲が良くなったのはパウルだ。
この子も俺と同じ、年齢がわからない。そして、自分の家族もわからないそうだ。
三ヶ月ほど前に奴隷としてここに来たらしいが、初めて友達になったのが、元身体の持ち主だったらしい。
ちなみにまあまあヤンチャっ子なので、エミールやミアによくちょっかいを作業中にするので、よく怒られている。
一応ヨゼフ爺が毎度毎度助けているらしいが。
それと、最近ヨゼフ爺の様子がおかしくなってきた。
よく見ると、背中にあった裂傷が化膿しているようだった。
俺が初日に庇ってもらった時についた傷だ。
ヨゼフ爺は、
「心配するな、これぐらい大丈夫じゃ。心配してくれてありがとう、フライ、」
と言っているが日に日に顔色が悪くなっているように見えた。
そもそも風呂という概念自体が無いのか、俺たちには風呂に入らないので不衛生なのもあるのだろう。
お陰で更に悪化しているようだった、、、
、、、、、、
夜、天使であり俺の監視役であるフレイヤを呼んだ。
「はいはーい、慈悲深い天使のフレイヤちゃんだよ〜」
普段俺の頭の中で俺のことを監視しているので、三人称視点で見たら俺の顔から幼子の幽霊が出てきたように見えるであろう。
俺の顔を貫通して出てきたフレイヤに対し、
「ヨゼフ爺がしんどそうなんだけど、今どんな感じかわかる?」
と聞いた。
「そーゆーことなら任せなさい!使い物にならない勇者。」
と言って、ヨゼフ爺の身体の状態を見てもらった。使い物にならないってなんだよ。
と思いつつ、結果が出たようだった。
結果は、
「ごめん、たぶんもう直ぐ死ぬと思う。この爺さん。」
「え、それってどういう。」
「そっくりそのまま、治療をしないと確実に死ぬ。」
キッパリと、フレイヤは俺にそう言った、、、
第五話 ー日常のはずが、、、ー
次回から話が一気に進みます。
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