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真昼の王宮にて

 ――真昼の王宮にて。


「リオン様、聖堂のあの話のこと、聞きましたよ! 珍しいじゃないですか! 急にどうしたんですか!? 僕の敬愛する主君は腕っぷしもたつし誰よりも優秀だけど、女性に関してだけはいつまで経っても堅物一辺倒なのが正直どうかなと思ってたから心配してたのに、ごく普通の男だったようで安心しましたよ!」


 執務室にやってくるなり、エドガーに普段の倍以上は陽気に言われ、リオンは露骨に顔をしかめた。


「なんの話だ?」


「またまたー、もったいぶってわざとごまかさなくたっていいじゃないですかー! 僕はもう全部知ってますから!」


 リオンはエドガーの意気揚々とした様子を見ながら、ひとしきり考えを巡らせた。


 ――全部知ってる……だと? おい、ちょっと待て、何をだ? 今、エドガーは確かに聖堂って、言ったよな……? ということは、まさかセーラのことか? 聖堂のパンの人選を変えさせた話は、後で勘ぐられないように、エドガーは関わらせないよう抜かりなく話を持って行ったはずだよな?


 最近の自分の行動に落ちがないかを思い返しながらリオンはそう思いつつ、


 ――それとも夜に聖堂に行き過ぎて、とうとう誰かに俺が通っていたことまで感づかれたのか? それとも全く別のどこかから情報を仕入れてきたのか? そもそもエドガーは、俺とセーラの話をいったいどこまで知ったんだ? エドガーの裏の人脈や情報網は侮れないが……いやいや、だからといってまだ完全にそうと決まったわけじゃない。先走りせず落ち着いた方がいいだろうな。


 疑問が尽きずリオンは内心かなり焦っていたが、それを極力表には出さずに、エドガーにもう一度再確認するためにたずねた。


「だからなんの話だと聞いているんだが? まずは先に俺の質問に答えろ。……それに俺は許しているからいいが、その態度は他ではお前自身が余計な敵を作ることになるから、あまりやるなよ」


「この部屋の防音は城随一で、完璧ですから心配には及びません。……が、そんなに周りのことばかり気にかけててそういうのって疲れませんか? ただでさえ考えなきゃならないことばかりの生活してるのに」


「俺はこういう性格なんだよ。……で、なんの話だったんだ?」


 リオンは話を最初に戻して、再びきいた。


「何って、ガルディアン大聖堂の娘が街頭で寄付を募ってる話に決まってるじゃないですか! 最近街の方じゃ、歌って踊るその娘たちのことがとても有名になっているそうですね。寄付金もたくさん集まって、美しい声で大層評判だとか。僕は中心になってやっているというふたりの姿をたまたま見かけた警備の兵士から聞きましたけど、天使のような心が癒される歌だそうですね。リオン様もそれを誰かから聞いたから、今度のパンの機会にその娘たちに会ってみたいと思われたんですよね? 男なら可愛い女の子を見たくなるのは、ごく普通のことですからねー」


「……?」


 こちらのことを構わずに進むエドガーの話が全く読めず、リオンはますます不可解な表情になった。


「だからその天使のような歌、ってなんのことだ? まずはそこから説明するべきだろ!」


 人選に介入したことが結局筒抜けになっていたことにがっくりしながらも、エドガーに詳細に説明させて、リオンはようやく全容を理解するに至った。

 聞かされたのは、間違いなく自分が想い続けている娘のことだった。

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