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ハヤトくんを意識したきっかけは、真面目な話を2人で一日中していた時。マミもコージくんも来れないって前日に言われて、「じゃあ1日2人だねー。」ってなったあのとき。

当日はいつも通り雑談したりしてたけど、つい聞いてほしくなっちゃったんだよね。


「ねぇ、ハヤトくんは、聞かれたなくないと思うし、ハヤトくんの方の理由は言わなくていいんだけどさ。」

「うん?」

「あのさ、誰にも言ったことがなかったんだけど、私の引きこもった原因を聞いてくれたりしないかな。」

「…聞いていい内容なの?」

「うん。誰かに聞いてほしかったの。だから、ハヤトくんさえ良かったら聞いてほしいんだ。…いいかな?」

「いいよ、それでユメが楽になるなら。」

親にも先生にも言えなくて辛かったあの時の気持ちを聞いてほしい。誰かに話しただけで解決するわけでもないし、話しても疲れるだけだと思ってた。それでも、ハヤトくんに聞いてほしい。って思っちゃったんだよね。ハヤトくんが聞いてくれるか少し心配だったけど、ハヤトくんはいつも通り落ち着いた声で了承してくれた。


「ありがとう。私さ、学年で派手な女の子が好きだった相手に好かれちゃって。それがバレて次の日から無視されたの。私が地味だったから余計に苛立たせちゃったみたいでさ。中学2年の終わりくらいかな。そこから不登校になっちゃった。」


きっと、本当はずっとずっと誰かに聞いてほしかった。あの時はわからなかったけど、話しているうちにそうだったんだろうな。って思った。ハヤトくんならこんなこと言っても「モテ自慢?」とか言わないだろうしね。


「…俺さ、こんなこというと自慢に聞こえるかもしれないけど、モテすぎてしんどくなってさ。気の強い女たちに勝手に付き合っていることにされてさ。で、勝手に修羅場になって。あげく、殴り合いの喧嘩が目の前で繰り広げられるっていう。」


話し終わってどきどきしていると、少ししてから話し出したハヤト君の内容に衝撃を受けた。


「そ、それは…壮絶な体験…。」


「そいつらの話信じた周りからは、3股なんて最低!!って言われるし。誰とも付き合ってねーよ。って感じだけどな。無理矢理一緒に帰ろうとしてきて、姉や母親は女の子には優しく!って言われるしで。どうしていいかわかんねーし。何食べても味がしなくて父親に相談したんだ。そしたらさ、少し休んでろって。」


「うん。」


相槌を打ちながら、これだけモテている人にとっては私が告白されてって話きいてもそりゃモテ自慢とは思わないわな。と一人で納得した。


「父さん、普段は口数少ないんだけど、その時はバシッとしてくれてさ。母親も姉も父親の言葉は絶対だからさ。俺は中3の夏くらいかな。そこらへんから引きこもったかな。」


「すごくいいお父さんなんだね。あの、まさかハヤトくんが話してくれるなんて思わなくて、私が話しちゃったから話さざるを得なかったとかだったらごめんなさい。」


ハヤトくんのお父さんがハヤトくんの味方になってくれたのに安心しつつも、私が話したせいで話さざるを得なかったのでは?と心配になる。


「いや、俺も聞いてほしくなっただけだよ。似たような話だからモテ自慢って思われないかな。って。それに、俺の話聞いて、少しはユメも安心するかな。って。世の中には似たような話があるってさ。俺の話聞いて思ったことは、きっと俺がユメに思ったことと似たようなこともあると思うよ。相談受けるのに慣れてないし、その時の気持ちは人それぞれだしな。どんな言葉かけたらユメが救われるのかわからないからって俺の話しちゃったけど、ユメは俺の話で少しでも救われたかな。」



「ありがとう、ハヤトくん。」

ハヤトくんの不器用な優しさにちょっと泣きそうになる。人に無視されてから感情死んだと思ってたけど、最近涙もろくて困る。


「ううん、俺こそ話してくれて、話を聞いてくれてありがとう。ここはオンラインだし、各々色んな事から人の痛みがわかる人間がいるんだと思う。トラウマとか見た目からはわからないけど、入学時の書類から分析して比較的同程度の傷を負った人間を同じクラスにしているらしいぞ。」


「そうだったんだ、初めて知った。」


「一人で抱え込んでいると辛いから、クラスメイトと話す機会があった時に自分の方が酷いから言いたくない。ってのを防ぐ為とか色々理由はあるらしい。」


そのあとも2人で色々話していると、何だか昨日より前向きになれている気がする。生まれ変わったみたいな気持ちになる。うんうん。って聞いてもらっているだけでもすごく救われるものなんだね。新しい発見だし、結局また泣いちゃった。




長期休みが終わって、また授業授業だけど、進路の話もウッキー先生からされるようになった。

「自分がここを卒業するとき、どうなっていたいか、どんな人生を歩んでいきたいか考えてみてください。一人で考えてもいいですが、出来れば誰かと話してみるのも考えがまとまって良いと思いますよ。」



冬休みになると、私は完全に大学受験をしたい。という目標ができた。親に、大学行きたい。というと喜んでくれた。大学はこの辺を~っていうのは、「好きなところにしなさい。」って言ってくれた。進学さえしてくれれば、どこでもいいみたい。昔の私なら私に興味ないのかな。とか、色んなこと話したいのに。って落ち込んだと思うけど、今では、私の人生だし、私が好き勝手に決めよう。と思えるようになった。


冬休みもクラスルームは解放してくれているから、勉強しながら毎日そこに入り浸った。わからないところは各々質問したり、たまに雑談したりして、青春を少し位かじれてるのかな。って、ちょっと考えたり。



「もうすぐここも3年目になるね。みんなともあと1年でお別れかぁ。」

「皆は進路どーすんの?」


私が感傷に浸っているとコージくんから質問が皆に来た。


「私は大学行こうと思っている。」


「ユメ、大学行くの??私もっ!私も行きたい!!私ね、みんなとなら楽しくキャンパスライフ送れると思うの。もしね、もしよかったら…同じ大学受けたい!やりたいことバラバラだったら難しいけど…。」


この学校に入学してできた新たな大学に行くという一つの夢を話すと、マミにすごい勢いで食いつかれた。私もここを卒業しても皆と一緒にいたいし、皆でいれたら楽しいと思うけど、皆が行きたい進路があうのかちょっと心配。



「うーん、私はね、A,C,E,Fあたり志望しているよ。」


「私は教員になりたいと思ったの!ここに就職したくて!A,E志望してる!」


「マミ先生になりたいんだ。面倒見良いから向いてると思う。」


「ユメ、ありがとう。コージくんとハヤトくんは進路どうするの?」


「…俺はA,B志望してる。」


「大学ねぇ、ちゃんと考えてなかったけど、A大のゲームサークルは有名だから、そこは興味あった。」


全員がA大に興味があることに驚いたけど、難関大学だし皆頭の片隅にあるのは当然か。とも思う。それでもやっぱり嬉しいし、興奮するけど。


「皆がよければA大目指したい!」


「まぁ。そこが一番偏差値高いし、入れるならな。」


「ん~。じゃあゲーム時間減らして勉強しようかなぁ。サークルで浴びるほどゲームしよ。」


コージくんの理由に少し笑いながら、皆で通える大学生活を夢見ると幸せな気持ちになった。



3年目の進路調査で全員A大を第一志望で出した。

この学校では全員同じ第一志望ってのはまぁまぁあるらしい。


「私もこの学校を卒業しましたが、その時のクラスメイトとは今でも連絡を取り合っています。全員第一志望に合格させます。頑張りましょう。高卒認定試験も突破しましょうね。」


夏の高卒認定は手ごたえしかないくらい、完璧にとけた。

これもウッキー先生たちのおかげだ。


3年目はクラスによって変わるらしいが、ここは大学を目指すクラスなのでアフレコの授業はなくなった。散々ルームで話しているのもわかっているしね。内容までは把握してないけど、滞在時間だけは学校に通知いくようになっているらしい。アフレコはあくまで話す練習の授業だから。



「ついに明日結果発表だね。受かったら16時にルームに。ダメだったら入らないってことで。ゲーム我慢して勉強したし、こんなに勉強したことないってくらいやったから受かっててほしいけどね~。じゃあ、また明日ね。」


「私も今日はもう寝るね。明日全員で受かったって笑顔で報告できますよーに!」


コージくんもマミも、そういうとルームから退出した。



「2人とも、いつもより早いね…。やっぱ前日は落ち着かないもんね。私たちももう寝る?」


「寝れる気…しないけどな。ユメと居たほうが落ち着くから時間ギリギリまでいない。無理か?」


「ううんっ!大丈夫!私もハヤトくんと話しているほうが落ち着くから!」


「そうか。」


「ねぇ、私たち全員受かったら同じ大学になるね、初めて会うの緊張するね…!!」


「もし受かったら入学前に全員一回会ったほうがいいな。」


「確かに!それなら春休み一緒に遊べるね!みんなの住んでいる場所知らないけど上京組とかもいるのかな?」


「そういえばそうだな。首都圏の大学に進むってことだから関西とかの方ではないのかなと思うけど。」


ハヤトくんと大学に受かったらトークをしていると、なんだかもう大学受かっている気がしてくる。不思議、これが恋のパワー?だとしたら新発見だ。


「あっ、もう時間になるな。明日、全員でここにこよう。」


「うん、おやすみなさい。」


落ち着いたと思ってたのに、一人でベッドに入るとそわそわして寝れなくなっちゃう。

ハヤトくんとの大学生活を考えると違う意味でどきどきするし、目を閉じて素数を考えよう。



発表当日、朝から結果はみれるけど、16時少し前にみることにした。そうじゃなきゃ16時まで待てないから。親からはさっさと見れば?って言われたけどね。親としては、他の大学受かっているからまぁいいらしい。ソワソワしながらA大の周りのおしゃれカフェ調べたりした。ハヤトくんとデートしたり、4人で20歳になったらここで飲むとか考えて時間つぶした。ちょっと楽しかったけど、それでも時間はなかなか経たないから、泣きそうだった。


やっと15時50分!震える指で受験番号を入力した。どきどきしながら…パソコンの前でお祈りをしてから目を開けたら…受かってた!!!!!!!!


人は驚きすぎると声が出なくなるらしい、新発見、叫ぶかと思って口に手をもっててたのに。でも泣いたからタオル用意はあってた。受かってた、よかった。


そのままルームにつないだ。時刻は16時ジャスト。

ルームに入ると、同時にマミも入ってきた。


「マミ!!よかった!!」


「ユメーーー!!私たち、同じ大学に…うわぁぁん。」


「えっ、マミ泣かないで。」


マミがすごい勢いで泣き始めるから、嬉しい気持ちと同時に慌てた。


「受かったよー。って報告きたけど、マミ大丈夫か?」


「ゴージグン゛!!!」


「はいはい、マミ、ゴージぐんだよ~。」


どうしようかと思ってたらコージくんが入ってきた。マミが泣いて濁点のような音しか出せないのを面白がっているみたいに真似している。マミはそんなことに気が付かないのかずっと泣いたままだけど。


「コージくん、受かったんだ、よかった、おめでとう。」


「うん、ユメもおめでとう。」


マミのことは心配だけど、まずはコージくんにおめでとう。とお祝いの言葉をかけることにした。残るはあと一人。


「ありがとう!あとはハヤトくんか…。」


「ごめん、母親とかがうるさくて遅れた。受かってたよ。」


そんなことを言っているとフラグなのか、すぐにハヤトくんが現れた。マミは相変わらずずっと泣いてたけど、ハヤトくんが現れて全員そろったことにまた泣いた。


「バヤ゛ドぐん゛!!!!」


「え、マミどうしたの??」


「マミ皆受かってすごい嬉しいみたい、おめでと~。ほら、マミ。ハヤトも驚いてるぞ。」


ハヤトくんが泣いているマミに気付いたみたいで困惑しているとコージくんが説明してくれる。


「だっでぇ゛!!」


「ハヤトくん、おめでとう!」


「あぁ、ユメもコージもマミもおめでとう。」


「ほら、マミ。来年からも同じだからもう泣きやめ。」


いつもはマミがコージくんの面倒をみているイメージだったのに、今回はコージくんがマミの面倒をみているのが面白い。泣き止まないマミをなだめながら連絡先の交換をする約束をした。交換は卒業式の日に。ってことらしい。


無事に卒業式の日に連絡先を交換した。でも使用するのは会う当日からってルームで決めた。卒業式の次の日にA大学最寄り駅で会おうって。上京組はいないから翌日から会えるらしい。緊張する。



星の里駅で待っているとグループにメッセージが入った。


『誰かいる?俺いるけど。』


『はい!私います!』


ハヤトくんのメッセージに即座に既読して、周りを見ながら返信するとまたすぐに返信がきた。


『もしかして俺の目の前にいる黒髪ロングの青いスカート?』


「えっ!」


そのメッセージに驚いて顔を上げると目の前にすっごくカッコイイ人がいた。


「やっぱり?」


「ハ、ハヤトくん…?」


「初めまして。」


「はっ、初めまして!ユメです。」


「ねぇ、みんなが来る前に言いたいことあるんだけどさ。こんなムードがないところで言うつもりなかったんだけど…。実際に会ったら心配でさ。ユメのこと好きだから、俺と付き合ってくれない?」


あの時引きこもったのはつらい時間だったけど、その時間があったからこそ会えた人たちに感謝しながら、私は生きていきたい。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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