既に
「……と、言うわけだ。王国は現在、非常に危機的な状況にある」
「なるほど……」
僕達は久しぶりに、冒険者ギルドへやって来ていた。
ギルマスであるアンドレさんからの直接の呼び出し。
恐らく良くないことが伝えられるんだろうなぁと思ったら、案の定やってきたのは凶報だった。
――海を越えての、魔物達の侵攻。
魔王十指率いる黒の軍勢が、王国の港町を襲っているのだという。
アンドレさんは早馬で知らされた情報を辺境伯に伝えてから、次に僕らに持ってきたらしい。
「ブルーノ、アイビー、お前達に緊急クエストだ。今すぐ現地に向かい、魔物の侵攻を止めてもらいたい」
「わかりました」
「みいっ!」
「……え、いいのか?」
アンドレさんは、ぽかんとした様子でこちらを見つめている。
かなり意外だったようで、明らかに狼狽している様子だ。
「もちろんです。困っている人を助けるのは……当然のことですから」
王国にやってくるであろう、魔王の脅威。
それがそう遠くないうちにやってくるということは、既にアイシクルやレイさんから聞いていた。
王国が危険に晒される。
それはきっと、僕らが今まで関係を築いてきた人達や、その家族や友達といった大切な人達が傷つくということで。
僕らの行動理由は、いつだってシンプルだ。
――大切な人が傷つくのは、とても悲しい。
それが僕らが、戦う決意をした理由だ。
もしかしたら、人は僕らの行動理由を笑うかもしれない。
厳しい戦場に臨む理由は、同じく厳しいものじゃなくちゃいけないと。
けれどそんなことは、百も承知。
アクープにやって来たのんびりと平和に過ごすことができている僕らは、以前と比べれば少しだけ余裕ができた。
その余裕を使えば、誰かの平和を守れるというのなら。
それはきっと、戦場へ向かう理由になるはずだ。
「サンシタも連れていきます」
「従魔だからな、それはもちろん構わんさ」
「ついでにアイシクルも連れていきます。既に辺境伯から許可は取ってますので」
「……それならこれ以上、俺が言えることはないとも」
僕らの家に、魔物であるアイシクルがいることは既に周知の事実だ。
ちなみに魔王十指であることは流石に伏せられているため、珍しい人型の高い知能を持つ魔物ということになっている。
だがアイビーやサンシタで驚き疲れたアクープの人達は、まあそういうこともあるだろうという感じで受け入れてくれている。
おかげでアイシクルは本人がびっくりするほど、アクープの街に馴染んでいた。
ちなみに勇者であるレイさんは、冒険者ではないので許可を取る必要はない。
彼女は自分の意志や王命に従い、戦場を駆けることになるはずだ。
「とりあえず、緊急クエストの報酬は弾ませてもらう。だから、その……頼んだぞ」
「任せて下さい」
「みいっ!」
こうして僕らは緊急クエストを受けることになった。
詳しい話や現時点で判明している情報を聞き、ある程度情報のすりあわせや、どのあたりに向かって欲しいかといった情報を聞く。
王国を救う……か。
今までは魔物を倒すか近隣の問題を解決するだけだったので、なんだか話の急に規模が大きくなってきた気がする。
でも魔物達を、これ以上いい気にさせちゃいけない。
皆で力を合わせて、早く平和を取り戻さなくっちゃね。
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