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【書籍化】その亀、地上最強【コミカライズ】  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)
第二章

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 暇そうにしていたサンシタをあやしても、時刻はまだ昼。

 夜からはパーティーなので、今のうちに必要なものを買っておかなくちゃ。


 どうやらカーチャの方も夜まではすることがないので、彼女と一緒に出掛けることにした。

 とりあえず時間が空いている今のうちに、パーティーで着るための正装を用意しなくちゃいけない。


 今回、僕とシャノンさんはカーチャの護衛という形でパーティーに参加することになる。

 ちなみにアイビーは僕の従魔という形で参加を許可されている。

 そして残念なことに、サンシタの許可は下りなかった。現実って、非情だよね……。


 とにかく、僕はそういったパーティーのドレスコードを守れるような、所謂フォーマルでかっちりとした服なんか一つも持っていない。


 今まで着る機会も一度もなかったし。

 そもそもパーティーなんてものは、平民の子供だった僕からすると縁遠い世界の話だったからさ。


 なのでどんなものを買えばいいのかとかなんてことは、当然ながらまったくわからない。

 今回は既に社交界に出た経験があるカーチャに完全に服選びを任せてしまうつもりだ。


「今日は暇だから、私もついて行くわね」


 シャノンさんは一等級冒険者として貴族に呼ばれることも何度もあったので、既に一張羅は持っているとのこと。なのでついてきてくれるのは、純粋な好意からだ。


 昨日は別行動だったけれど、今日は一緒に行動できるんだな。

 そう言えばこの街に来てから長いこと、姿が見えなかったけど……シャノンさん、一体何をしてたんだろう?

 ……まあいっか。シャノンさんにもきっとやることがあったんだろうし。


 とりあえず服を買うついでに、サンシタが喜ぶようなお土産でも買ってあげよう。

 窮屈な思いをしてばっかりじゃ、彼がかわいそうだしね。



 カーチャが選んだのは、店の外見からして高級な感じを受ける服飾店だった。

 中に入ると出迎えてくれた店員さん達も皆、ぴっちりとした制服に身を包んでいる。

 多分だけど、あれらも全部ここで作っているんだろうな。


「ふむ、やっぱりアクープより洗練されておるの」


「こっちのカットソーなんか良い感じよね、個人的に買っていこうかな?」


「みみっ! みーみーっ!」


 女性が三人寄れば姦しい。

 カーチャもシャノンさんもアイビーもあっちへふらふらこっちへふらふら。

 服が大量に並んでいるところを見てきゃーきゃーと騒いでいる。


 たしか僕の記憶が間違っていなければ、僕がパーティーに着ていくための服を見にきたはずなんだけどな……。


 でも流石高級店。アイビーが店の中に入っても、店員さんが顔色一つ変えていない。

 というかアイビー、君は一体何を見ているんだい?

 亀が人間サイズの服を見ても、楽しかったりするんだろうか……?


 僕は手持ち無沙汰になってしまったので、なんとなくそれっぽい既製品を眺めることにした。


 色も黒だったり灰色だったり紺色だったり。

 シャツがよく見えるタイプから、首までしっかりと締まっているタイプ。


 いっぱいあり過ぎて何がいいのかイマイチわからない。

 流石にこの黒の縦線が入っている柄を着て行っちゃいけないことくらいはわかるけど……。

 うーむ、悩むなぁ……この紺色のスーツなんかどうだろうか。


「色はグレーか黒にしときなさい。それ以外の色だと目立つわよ」


 気が付けば、端から順に服を眺めているカーチャとアイビーと別れたシャノンさんが、隣に来てくれていた。


「そういうものですか」


「とりあえず主催者より派手な色を使っているとマナー違反ね。だから勝手知ったるパーティーでもない限り、男は黒いスーツを着とくのが無難よ」


「なるほど……」


 それならとりあえず黒いのを着ていこう。

 護衛として行く僕が、カーチャより目立ったり、彼女の面子を傷つけるようなことしちゃいけないし。


「そうねぇ……これなんか似合うんじゃない?」


 そういってシャノンさんが出してきたのは、普通の黒のスーツだった。

 裏側の生地が赤くなっているのがおしゃれポイントだそうな。


 裏が何色でも見えないから変わらないと思うんだけど……と不思議に思っていると、シャノンさんはチッチッチッと指を左右に振った。


「見えないところにワンポイントあるのがおしゃれなんじゃない」


 どうやらおしゃれとはそういうものらしい。

 ちょっと僕にはわからない世界だなぁ。

 おしゃれの道は、なかなかに険しそうだ。


「じゃあこれ買います」


「ちゃんと選ばなくていいの? たくさんあるけど」


「たくさんありすぎて目移りしちゃいますよ。別に黒ければどれを着てもいいなら、シャノンさんに薦めてもらったこれにします」


「かわいいこと言ってくれるのね」


 そう言って顎下を撫でられる。

 ふわりと香る大人の香水の匂いに、思わず頭がクラクラした。


「ブルーノ、シャノン、こっちに来るのじゃ!」


「みいみいっ!」


 二人の呼び声を聞いて、僕は笑う。


 女の子の買い物が長いのは、貴族も平民も亀も変わらないらしい。


 本来の目的である僕の服を買ったんだから、もう戻ってゆっくりしとこうよとも思うけど、そんなことは言うだけ無駄なんだよね。


 これはパーティーギリギリまでかかるかもしれないな……なんて考えながら、シャノンさんと頷き合い、歩き出す。


 そして僕は女の子の買い物に長時間付き合うという、男にとってなかなかに疲れる仕事をこなし、そのままパーティーへと向かうことになるのだった――。

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