謝り合戦
「すすすすすみませんっ!」
「いえいえ、勢いよく歩いていた僕も悪いですから!」
僕へぺこぺこと頭を下げているのは、修道着を着ているシスターさんだった。
ゆったりとした青い服に、エプロンのような白い布が縫い込まれている。
服には金の縁取りがされていて、素材も肌触りが良さそうなのが一目でわかった。
多分、カーチャと同じくこのホテルに宿泊しているお客さんの一人なんだろう。
「僕が」
「いえいえ私が」
「いえいえいえ僕が……」
「いやいやいや私が……」
ぺこぺこ、ぺこぺこ。
自分が悪い、いやいや私が……と言い合いを続ける。
お互いが謝った回数が五回を超えたあたりで、この謝り合戦があまりに不毛であることに気付いてしまった僕。
下げていた頭を上げると、シスターさんと目が合う。
こちらに何かを訴えかけるようなその視線に、彼女も僕と同じ結論に至ったことを悟った。
「「……」」
お互い視線は合わせたまま、相手のことをじっと見る。
さっきは格好に完全に意識が持っていかれていたので気付かなかったけれど、このシスターさん……とんでもなく顔立ちが整っている。
それだけじゃなく、スタイルもすごい。
いわゆるボンキュッボンってやつだ。
失礼にならないよう、目線はお人形さんみたいな顔に固定させた。
「「ぷっ……あははっ!」」
どちらともなく笑い出す。
謝り合ってる僕らは間抜けだ。
ああ、おかしい。
「ぶつかってごめんなさい、実は道に迷ってしまっていて、外からなら部屋がわかるかなと思って急いでいたんです」
「私はやらなければいけない用事を思い出しまして。急いで部屋に戻ろうとしたところをその……あなたにぶつかってしまいました、ごめんなさい」
「それじゃあお互い様、ということで」
「はい、ふふふっ……」
手で口を抑えて上品に笑う様子には、愛嬌があった。
多分立場のある人なんだろうという感じが、挙動の端々から伝わってくる。
カーチャとはまた違ったタイプのお嬢様だ。
……いや、カーチャが特殊すぎるだけで、こっちが一般的なのかな?
「僕はブルーノと言います」
「――まあ、それでは、あなたが……」
「……え、僕のこと知ってるんですか?」
「はい、もちろんです。そのご高名はかねがね」
名前を聞こうかな。
でも彼女が立場のある人なら、聞かない方が精神衛生上いいかな。
なんて考えていた時のことだった。
――殺気ッ!
即座に結界を周囲に展開させる。
ギィンッ!
展開が間に合った。攻撃してきた武器は――長くて尖った、針?
初めて見る武器だ、暗器の類だろうか。
「おい下郎、聖女ヴォラキア様に狼藉を働いたな?」
「えっ!?」
この女の子が――セリエで教皇を唯一止められるという、あの聖女様なの!?
どどどどうしよう。
ぶつかっちゃったせいか、護衛の人がものすごい怒ってる……。
誠心誠意謝ったら、なんとか許してもらえないかな……?
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