うわぁ……
ということで、あっという間に集合場所までやってきた。
森の中腹にある大きな池の右側にある樹の前、というざっくりとした決め方だったけれど、上空から偵察のできる僕達に死角はない。
どうやら既に合流する人達はやってきているようだった。
カーチャを迎えるということは、恐らく向こうも立場がある人達だろう。
上空から飛び降りてびっくりさせるのはよくないだろうと思い、場所を覚えてから一度戻る。
そして僕が先導する形で、カーチャとシャノンさんと一緒に目的地へと向かうことにした。
「すみません、セリエ宗導国の方であって……ますか?」
カーチャが最初に声をかけてしまっては、彼女の品格が落ちかねない。
そしてシャノンさんではちょっと威圧的かも、ということで僕が声をかける係に決定した。
「是」
「……ふぉっふぉっふぉっ、こりゃまたかわいい坊主が来たもんじゃわい」
「……亀?」
「ずいぶんかわいらしい亀さんじゃのう。ペットは心が和んでええよなぁ……」
そこに立っていたのは三人の大人達だった。
寡黙そうな女性が一人、そして柔和そうなご老人が一人、最後にその後ろに紳士服を身に纏った貴族然とした男の人が一人。
僕らも人のことを言えないが、なんだか変わっている人達に見える。
「おおこれはこれは、お待ちしておりましたエカテリーナ様。私は案内人を務めさせていただくボルゴグラード・オミグレオと申します。一応男爵位を叙爵されていますが、この国では貴族はさほど重要な意味を持ちませぬ。私は平民以上司祭以下という扱いをしてくだされば結構です」
「よかろう、ボルゴグラード。それでは案内せい」
「御意に」
ボルゴグラード男爵はそれだけ言うと、我先にとスタスタと森の中を歩き始める。
数は減ったとはいえ一応魔物は出てくるんだけど……護衛の二人より前に出るっていうのは、自分の強さへの自信の裏返しなんだろうか。
魔力を感知してみた感じ結構戦えそうなだけの魔力があるし、この森の魔物程度はもんだいなく倒せるんだろうな、きっと。
「でも貴族がさほど重要じゃないって……どういう意味なんですか、エカテリーナ様?」
「む……はっ、うむ、妾自身もそこまで詳しいわけではないが、あらましくらいなら語れるぞ。前提知識がないせいでヘマをしても面白くないので、とりあえず教えておくとしよう」
『どうして急に仰々しい呼び方に……はっ、そう言えばここはいつ誰の目があるかもわからない他国の中だった! 妾もしっかりとしなければ!』
とこんな感じで色々と心の動きの変遷があったのだろう。
百面相をしながらも最後にはキリッと立て直してみせたカーチャが、このセリエ宗導国について詳しく教えてくれる。
「セリエ宗導国はその成り立ちが少々特殊な国なんじゃ」
「成り立ちかぁ、うちの王国は普通に王様が建国したんだっけ?」
「うむ、その通り。言い伝えによれば神から統治の正統性を認められた建国王レギオン一世が王国を建てた……ということになっておる」
ということ、かぁ。
それが普通の建前なんだとしたら、セリエはどんなものになるんだろう。
「向こうも基本は同じじゃが、そもそもセリエ宗導国に王は存在しない。あるのは神の意向を伝えてくれる教皇とその周りに居る五人の枢機卿、そして彼らが束ねている教皇庁によって国が回っておる」
ふむ……なるほど?
一見するとそんなにうちと変わらないように思えるけれど、一体何がそんなに特殊になるんだろうか?
そんな僕の心の疑問に答えるように、カーチャが自分の髪を撫でながら言う。
「早い話が、ここでは教皇の言葉は神の意志じゃ。なので枢機卿も貴族も民も、誰も教皇には逆らえん」
「う、うわぁ……」
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