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【書籍化】その亀、地上最強【コミカライズ】  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)
第二章

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弟子


「わ、私が――この亀の、弟子に?」


「うん」


 ピッとアイビーのことを指さすアイシクル。

 彼女も最初の頃のレイさんのように、アイビーの強さを肌感で感じることはできていないらしく、すごくうろんげな眼差しを向けている。


 そう言えばアイビーは、まだ初見の人には恐れられたことがない。

 能ある鷹は爪を隠す……ってことなのかな。

 彼女の強さは、実際に戦ってみた人しかわからないのかも。


「僕よりアイビーの方が強いよ?」


「嘘おっしゃい、そんなはずが――」


「みいっ!」


 シュパンッ!

 フォンッ!

 ズドドドドッ!


 アイシクルを縛っていた縄が一瞬のうちにほどけ。

 展開されていた結界が次の瞬間には消えており。

 そして横に転がっていた無防備なアイシクルのどてっ腹に、夥しいほどの魔法が突き刺さっていく。


「あばばばばばばばばばば……おはな、キレイですわぁ」


 攻撃を食らいすぎたアイシクルは、見てはいけない幻覚を見始める。

 腹に光の矢を食らいながらどこか遠い目をしている彼女は、このままだと黄泉の国へと旅立ってしまいそうだ。


「あががががが……ガクッ」


 そのままアイシクルは気絶してしまった。

 アイビーは攻撃を止めて回復魔法を放つ。

 そして顔に熱湯をかけて、無理矢理目覚めさせた。


「うわっぷ! あっつ! あっついですわ!」


 ボコボコにされていたアイシクルが起きる。

 見れば彼女の甲殻ドレスも、何故か一緒に治っていた。

 身体の一部だとは思っていたけど、回復魔法で治るんだね。


 というかアイビーも容赦がない。

 レイさんの時もそうだけど、彼女って実は結構スパルタな熱血系だよね。

 僕に対する採点だけ、妙に甘いんだけどさ。


「ぐっ……ここまでされては、私としても認めざるを得ないですわね。この亀……アイビーが一廉の亀であるということを」


 一廉の亀という初めて聞くワードに噴き出してしまう僕をよそに、アイシクルは至って殊勝な態度を取っていた。


 なんでも魔物にとっては、何よりも強さが大事とのこと。

 こうやって圧倒的な力を振るわれると、屈服しなければならないと本能が訴えかけてくるらしい。

 弱肉強食というか……変にわかりやすい分、殺伐としてるよね。

 あの魔王が暮らす孤島って、もしかして修羅の国か何かなのかな?


「みいっ!」


「……ブルーノさん、彼女はなんと?」


「お前はそれでいいのか、と言ってるよ」


 どうやら彼女も僕やアイビーにボコボコにされるうちに、どちらが上なのかはっきりとわかったようだ。

 口調や立ち振る舞いは会った時とそれほど変わらないけれど、明らかに僕達のことを目上として扱ってくれている。


 自分の強さを認められたアイビーは、僕の肩から浮かび上がる。

 そして地面に着地するタイミングで大きくなった。サイズは家族全員で背中に乗ってひなたぼっこができるくらいだ。

 ドスンと大きな音を鳴らして地面に着いたアイビーは、高くなった視点からアイシクルを見下ろす。


「みいいいっ! みいみいっ! みっみみみっ!」


 あなたは魔王十指の中でも左手三指。

 まだ上には七体も魔物が控えている。

 お前はそれでいいのか。


 アイビーの言葉の意味を聞いたアイシクルは、俯きながら地面を見つめ出す。

 あごに手を当てて、思い悩んでいる様子だ。


「たしかに、そうですわよね。私は『昆虫女王』……女王はいつだって、頂に立っていなくてはなりません」


 そういうものなんだろうか。

 いや、きっとそういうものなんだろう。

 女王本人が言ってるんだから、きっと間違いない。


「アイビーさん、私は決めましたわ! まずはなんとしてでも――右手入りしてみせます! ご教授のほど、よろしくお願いします!」


「みみみぃっ!」


 私は厳しいわよ、とアイビー。

 構いません、むしろどんと来いですわと何故か物凄く乗り気なアイシクル。


 こうして『昆虫女王』ことアイシクルは、レイさん同様アイビーの弟子ということになった。とりあえずアクープについてくるつもりらしい。


 魔王の部下、というか魔王の爪を分けてもらった幹部を連れて帰る、か……。

 また想像していない、妙なことになっちゃったなぁ。


 エンドルド辺境伯の胃が、おかしくならないといいんだけれど……。

 それには期待できないと思うので、あとで回復魔法をかけてあげよう。

 行きよりも賑やかになった帰りの道で、僕はそう誓ったのだった……。

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