変
アクープを出る前に辺境伯から「フュールの街へ、か……くれぐれも、くれぐれも気を付けるようにな! 問題とか起こさないでくれよ!」と必死になって言われる一幕はあったものの、僕達は無事アクープの街を出ることができた。
帰ってきた時にアイビーが皆から忘れられてないといいな、と思いながら門を抜ける。
やってきた御者さんに挨拶をして、お金を少し多めに払って超特急で駆けてもらう。
いつもの乗り合いとは違い、今回は貸し切りだ。
ちなみに今回、サンシタはお留守番である。
グリフォンを連れてその辺を歩いたりすると、絶対に面倒ごとが起きまくる気しかしないからね。
【あっしは除け者ってわけですかい……】と寂しそうな顔をしていたが、ダメなものはダメなのだ。
アクープなら定住しているからいいけど、行く先々でグリフォンのことを説明して回ってたら疲れちゃって魔物討伐が万全の状態でできない……なんてことになっても本末転倒だし。
馬が疲れすぎないように時折回復魔法をかけてあげて疲労を取ってあげたりしながら、僕達は車に揺られて旅路を行く。
「ふわああぁ……」
「みぃ~……」
街から街までを進む道は日程にすれば三日程度なんだけど、揺れる車内の中だとすることが限られてくる。
僕にできることは、あくびをしながらぼうっと外を眺めるくらいなものだった。
本当なら本が読みたいけれど、馬車の中で本を読むと酔うんだよね。
魔法をかければ治してもらえるけど、気持ち悪くはなるから無理して読もうという気にもならない。
なにもそこまで本の虫ってわけでもないし。
アイビーも眠そうだ。
太陽がピーカン照りなおかげで、陽の光が降り注いできて室内はぽかぽか。
いつものお昼寝の時間ということもあって、僕らはむにゃむにゃとまどろむのだった。
「……ん」
元々浅い眠りなので、何かの拍子にすぐに目は覚める。
今回目が覚めた理由は、雲に隠れて陽光が降り注がなくなった違和感だったみたいだ。
一気に暗くなった気のする室内で伸びをする。
見ればアイビーの方は、ぐでーっと床に身体を預けて気持ちよさそうにしている。
彼女は僕が起きたことに気付いてから、肩の上に乗る。
二人でなんとなく、窓の外を見てみる。
「お、起きたのか」
僕とアイビーが馬車から顔を出すと、そこには馬に乗っているレイさんの姿があった。
彼女は日々これ修行なりという修験僧みたいなことを言いながら、僕達が乗る馬車に併走する形で鞍の上にまたがっている。
魔物討伐の時に疲れないのかと少し疑問に思ったけれど、ふと見た時に寝ながら馬に乗っているのを見て問題なさそうだなと思った。
なんでもレイさんは人馬一体というか、馬に乗っても全然疲れなくなるように訓練を積んでいるらしい。
時折垣間見える彼女の師匠がたのスパルタ加減を見ていると、これから会う人がどんな人物なんだろうかと少し不安になってくる。
変な人じゃないといいんだけど……まず間違いなく、変な人だよなぁ。
待ち合わせ場所へ到着すると同時に、それは起こった。
「ふむ……お主、強いな! いざ尋常に――勝負ッ!」
ギィンッ!
アイビー目掛けて振り下ろされた真っ黒なロングソードが結界に弾かれる。
ちょ……挨拶もなしにいきなり攻撃してきたよこの人!?
……うわーん、やっぱり変な人でしたぁ!
【しんこからのお願い】
この小説を読んで
「面白い!」
「続きが気になる!」
「応援してるよ!」
と少しでも思ったら、↓の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!
あなたの応援が、しんこの更新の原動力になります!
よろしくお願いします!




