弟子
「アイビーが並々ならぬ亀だということは、私も理解はしているつもりだが……」
どうやら僕のことは勘違いしたままみたいだけど、レイさんの方もアイビーの強さを見抜いているようだった。
「みいっ! みぃみぃっ!」
……それって、どういう意味だい?
ちょっと抽象的だから、よくわからないんだけど……。
「ブルーノ、アイビーはいったいなんと?」
真剣な顔をしているレイさんに、アイビーが言っていたことをそのまま伝える。
「えっと……このままだと、レイさんは『本当になりたいもの』になれずに終わるって言ってます」
「――なんだとっ!?」
物凄い、にらんでいるかのような形相をするレイさん。
どうやら僕にはよくわからなかったアイビーの言葉も、彼女にはしっかりと響いているみたいだった。
「アイビーにはなんでもお見通し、というわけか……」
「みいっ!」
『私にできないことなんてないの!』とアイビー。
たしかによく考えてみると、今まで彼女にできなかったことなんて、ほとんどないような気がする。
彼女は僕の自慢の家族だ。
レイさんはううんと唸りながら腕を組んで、難しそうな顔をしている。
待つことしばし。
サンシタがすることもなくくああっと大きく口を開いてあくびをしたところで、レイさんが立ち上がる。
そして既に肩から下り、僕がギリギリ乗れるくらいのサイズになったアイビーの方へと歩いていく。
レイさんはそのまま、すっと腰を落とした。
「私には何人か師匠のような人達がいる。彼らは皆、大してできもよくない私のことをしっかりと育ててくれた。私にはやらなければならないことがある、叶えなければならないものがある。そしてそのためにこの身命を賭して尽くすことこそが我が使命」
レイさんは片膝を曲げ、目を伏せがちにして頭を下げる。
その姿は、非常に堂に入っていて、まるで騎士が王に剣を捧げる時のように様になっている。
「アイビー……いや、アイビー殿。是非とも私にあなたの持つ力を、ご教授願えるとありがたい。よろしく頼む」
「みいっ!」
少しだけサイズの小さくなったアイビーが、スッと右前足を上げる。
その足に、レイさんがそっと手を重ねた。
今のアイビーが何を言っているのか、レイさんにはしっかりとわかっているみたいだ。
こうして僕があわあわとしているうちに事態は急転直下に進み、レイさんはアイビーの弟子になった。
あれよあれよといううちに怒濤の展開が続いたせいで、なんだか夢でも見ているみたいだ。
とりあえずレイさんはしばらくの間、うちに逗留することになるということで話がついた。
これからよろしくお願いしますね、レイさん。
うちは色々と変わってるところも多いと思いますけど……きっと退屈はさせないですから。
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