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【書籍化】その亀、地上最強【コミカライズ】  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)
第二章

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謎の


 今日の晩ご飯はバーベキューだ。


 僕が作るのは基本的には男の料理。

 誰からも教わっていないし、そこまで食に執着もないから、手抜き料理ばかりしている。


 この別荘には外の庭に、野外用の釜や網なんかがあって、お手軽に野外料理が楽しめる。

 自然に囲まれた環境だからなんだか自由な感じがあるし、匂いが内側に籠もることもないので、僕達は基本的に外で食べることの方が多い。


「アイビー、お願い」


「みぃっ」


 アイビーが小さな火の玉を打ち込むと、入れていた薪がメラメラと燃え始める。

 グリフォンのサンシタもぐるぅと唸りながら僕の隣で火を見つめている。


 炎が反射してキラキラと輝くつぶらな瞳を見ていると、なんだか小動物みたいでかわいいなって気持ちになってくる。


【早く肉を焼いてくだせぇ!】


 その心の声を聞いて、先ほどまで感じていたはずのかわいさは一瞬のうちに消えた。

 うん、やっぱりサンシタはサンシタだね。


「そろそろいいかな」


 適当な火加減になってきたら網を乗せて、その上に買ってきた野菜を載せていく。


 最初からベジタブルな網焼きにサンシタが不満そうだったので、一画に肉だけのゾーンを作ってあげる。


 サンシタが一番好きな、なんにも処理をしていないし、なんならちょっと血が滴ってる生肉だ。


 サンシタは満足げにうなると、風魔法を使って肉を浮かせる。

 そして自分の目の前に持っていき、少し表面を焼いただけの肉を頬張って味わい始めた。


 人間と違いグリフォンだから、別に生で食べても何も問題はない。


 だけど最近サンシタは、僕やアイビーが味付けをしたり、調理方法を工夫してご飯を食べているのを見ているからか、【あっしもあっしも!】とせがむようになってきているのだ。


 といっても彼の場合まだまだ野生が強いからか、ほんのちょっと焼いただけですぐに食べてしまう。


 本人曰く、片方の半面にほんのり焼き目がついたくらいの焼き加減が一番好きらしい。


 ねぇサンシタ、それはほとんど生なんだけど……まあ、本人が楽しそうだから、細かいことはいっか。


「みぃっ!」


「あっ、ごめん、ちょっと焦げちゃった」


「みぃっ……」


 サンシタが血の滴る生肉をバクバク食べている様子に呆れていると、野菜から煙が上がっていた。


 ひっくり返してみると、黒焦げとまではいかないけれど表面がかなり黒くなってしまっている。


 アイビーは少し悲しそうな顔をしてから、ふよふよとちょっと焦げた野菜を浮かせ、自分の口許に運んでいく。


 彼女もサンシタも、僕が箸やトングを使って餌付けをする必要はない。


 そして焼いた食材を冷まさずに火傷しないくらい、口の中も丈夫だ。


 僕はパッパッと塩や刻んだ香草なんかをかけてから、トングで肉と野菜をお皿に乗せる。


「あつっ!?」


 ふぅふぅと冷ましてから食べても、まだかなり熱かった。

 どうやら火加減を見誤ってたみたいだ。


 口の中を少しだけ火傷してしまい眉をしかめながらもぐもぐしていると、すぐに痛みが消える。


「みぃっ」


 しょうがない子ね、とアイビーが回復魔法を使ってくれたのだ。


 そういえばこないだ、エンドルド辺境伯が連れてきた偉そうな人に、アイビーの回復魔法を見せる機会があったなぁと、少し前のことを思い出す。


 なんだか「こ、これは伝説のっ――!?」と驚いていたけれど、あれから音沙汰はない。


 アイビーが宗教関連のごたごたに巻き込まれないために必要だって言ってたよね。


 そういえば辺境伯が、遊びに来いって言ってたな。


 カーチャもアイビーとサンシタにもっと会いたいとことあるごとに言ってくるし……今度久しぶりに、辺境伯邸まで遊びに行ってみようか。


「みいっ」


 『いいね!』とアイビーもノリノリな様子だ。

 よし、たしかにアイビーも最近あまり外に出せてあげられてないし、明日にでも――。


「――みっ」


 アイビーがいつにないくらい、低い声を出す。

 彼女の顔は、ものすごく真剣だった。


 アイビーは浮かせていた野菜を元の位置に戻し、僕の肩の上に飛び移る。


 いったい何が……と思っている僕の耳に聞こえてくるのは、がさがさと茂みの揺れる音。


 ここらへんに魔物は出ないはずだけど……と思っていると、そこから一つの影がゆっくりと現れる。


 そこにいたのは――全身を葉っぱまみれにした、女性だった。


 見たことがないほど上質な鎧を着ていて、意志の強そうな瞳はらんらんと輝いている。


 剣を入れている鞘には宝石が散りばめられていて、いかにも上等な冒険者といった風体だ。


 いったい、どうしてこんな辺鄙なところへ……?


 自分達で住んでる場所ではあるけれど、ここはアクープの外れも外れなんだけど……。


 ごぎゅるるるるっ。


「す、すまない。食べ物を恵んではくれないだろうか……」


「……ど、どうぞ?」


 彼女のお腹の音は、それはもう尋常じゃないほどに大きかった。

 いったい何日ご飯を食べてないんだろうというほどに。


 なんだかわけありそうだけど……。

 そんなにお腹が減っているんなら……僕らのご飯、食べますか?



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