従魔
アクープの街は魔物の侵入に備える形で、周囲を高い城壁に囲まれている。
城塞都市と呼ばれるタイプの街で、どんなところから魔物や侵入者がやって来ても対応ができるようになっているらしい。
僕二人分くらいの高さはあるけど、アイビーだったらちょっと踏ん張れば乗り越えられそうな高さだ。
「それじゃあ次の人………それは、ペットか何かか?」
ゼニファーさんが別れる前にしてくれた説明を思い出していると、どうやら僕の番が回ってきたみたいだった。
衛兵さんは長い槍の穂先で、手乗りサイズのアイビーの方を指している。
いきなり等身大で来たらまず間違いなく騒がれるから最小サイズにしてたんだけど、それでも興味を引かれたみたいだった。
「僕の従魔です。ほら、腕輪がついてますよね」
「ふむ、そうか……亀の魔物にしては、随分小さいな」
従魔であることを示すため、従魔師が引き連れる魔物は、身体のどこかに従魔証明のためのリングを着けなくてはいけない。
アイビーはサイズも変わるので、サイズ別のリングが四パターンほどあったりする。
今は一番小さなリングを手につけている形だ。
彼女はおしゃれにも余念がないらしく、よく見るとリングがちょっと削られてスタイリッシュな感じになっていた。
もしかしたらこういう小物とか、好きなのかもしれない。
今度何か、プレゼントとかあげようかな。
衛兵さんには、魔物として小さすぎたせいで、逆に興味を引かれてしまったらしい。
大きすぎてもダメだし小さすぎてもダメ……なかなか加減するのが難しい。
どのくらいのサイズが一番いいんだろうか。
従魔師が従える亀のサイズを、後で教えてもらう必要がありそうだ。
「従魔が器物損壊等の犯罪を犯した場合、飼い主である君も同時に処罰されるので、気を付けるように」
「はい」
従魔と従魔師というのは一心同体。
従魔がしたことの責任はそのまま従魔師に返ってくる。
そのため従魔師が従える魔物っていうのは、絶対に暴れないと言い切れるほどに気持ちが通じ合っているものらしい。
彼らは魔力とかなんとかとかいう魔法で気持ちを通じさせるらしいけど……僕とアイビーにはそんなものは必要ない。
気持ちは既に通じ合ってるからね。
「みぃ」
ほら、僕とアイビーは家族だもの。
「まぁその大きさだと、気にする必要はないだろうがな」
「はは……そうですね」
適当に相槌を返して、街の中へと入る。
衛兵さんもきっと本当の大きさを知ったら、目玉が飛び出るんだろうな。
街に無事に入れたので、まずは冒険者ギルドへ行ってみることにした。
ギルドの中の雰囲気とか、この職場(でいいのかな?)でやっていけるか、とか確認しなくちゃ。
登録自体は既にゼニファーさんと一緒に済ませている。
冒険者には等級というものがあって、一番上は一等級、一番下は六等級という風になっている。
僕はまだ冒険者になったばかりだというのに、五等級からのスタートだ。
どうやらゼニファーさんは冒険者ギルドにも顔が利くらしく、コネでワンランク上のスタートを切ることができてしまったのである。
彼がそこまで心を砕いてくれたのは、従魔師として登録することができるのが五等級以上から、という冒険者ギルドのルールがあるからである。
僕はなんの変哲もない普通の人間なので、アイビーなしじゃ六等級から昇格するまでにどれくらいの時間がかかるかわからない。
だからわざわざ手間をかけてまで、等級を上げてくれたみたいだった。
持つべきものは、コネのある知己なのかもしれない。
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