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【書籍化】その亀、地上最強【コミカライズ】  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)
第一章

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戦い


 冒険者ギルドへ、緊急依頼と呼ばれる受けることを強制させられる特別な依頼が張り出される。


 依頼名は辺境伯領の防衛、その内容は昏き森から湧き出してくる魔物達から、このアクープの街を守ること。


 昨晩昏き森に入り魔物討伐をしていた冒険者達が、魔物の数が激減していることを報告。


 真相を確かめるべく放った鳥型魔物の従魔と視覚共有をしたテイマーが、魔物が森の奥深くで隊列を組んでいることを確認した。


 通常魔物にそんなことをする知能はない。

 たとえ同じ種族だろうが、エサがなくなれば共食いをし合うような、良くも悪くも獣のような存在だからだ。


 つまり彼らは何かに操られている、ということになるとは思うのだが……その黒幕の正体が何なのかは未だわかっていない。


 しかし、たしかなこともある。

 それは魔物達が大きさも区々で稚拙ではあるが、隊伍を組んで軍隊のように行進を始めたこと。


 辺境伯領で昏き森に接している領地は幾つもある。

 その中には辺境伯以外の貴族が治める領地だってあった。


 だがどういうわけか、彼らは皆一様にアクープの街を目掛けて進軍を始めている。


 恐らくはまず最初に、辺境伯領の中でも栄えているこの街を落とし、勢いそのまま他所を侵略しようという意図なのだろう。


 そんな侵攻のやり方さえも、どこか人間くさく、本能のままに生きる魔物らしくない。


 今頃他の場所にも、同様の依頼が張り出されていることだろう。


 が、冒険者達はまず魔物達の襲撃の第一波を食い止めるため、かなりの数がアクープへと集結している。


 僕は冒険者ギルドへと向かう道すがら、カーチャの言葉を思い出していた。


 戦争を求めているセリエ宗導国の怪しい動き。


 未だピースは揃わずなんの確証もないが、この魔物の襲来には人間が関わっているのかもしれない。


 それがセリエ宗導国であるとするのなら、魔物達に街が蹂躙されるというのはただ破壊され逃げるというのとは訳が変わってくる。


 魔物達の動きが橋頭堡を作るような役割になっているのかもしれないし、もしくは何か本命を隠しているのかもしれない。


 なんにせよ僕はこの街を守るために、戦うつもりだ。

 そしてその気持ちはアイビーもサンシタも、同じようだった。


 僕たちが想像していたのとは随分形は違ったけれど。

 それでも送る毎日は平和で、温かかった。


 それを壊そうとする奴らがいるのなら、魔物だろうと人間だろうとそれは僕たちの敵になる。


 ただ一つ、気がかりというか胸のつかえになっていることがある。


 これからこなす依頼は、戦いだ。

 何百何千という魔物を倒す、戦争のように激しい戦いだ。


 僕はそれに、アイビーを巻き込まなくちゃいけない。


 僕には、何もできないから。

 彼女は、何でもできるから。


 今までの、地位有る人達とつなぎを作って、安定した生活を送るためのものとは違う。


 規模も違うし、目的も違う。


 戦いの規模は大きく、そして敵は大量だ。


 一体一体ならそれほど問題は無いだろうが、今昏き森の魔物は皆がこちらに向かってきているのだ。

 その数は数千とも数万とも言われている。

 それだけとてつもない物量となれば、アイビーだってどうなるかはわからない。


 もし魔物達をなんとかしようとするのなら、アイビーは相当な力を使わなければいけないはずだ。


 被害を出さないようにするとなると、本気を出すために、本来の大きさになる必要があるかもしれない。


 もし彼女が全力を出して敵を追い返すことができたとして。


 アクープの街の皆は、そんなことのできるアイビーを、化け物としてではなく今まで通りに見ることができるだろうか。


 できないのなら、きっと彼女は傷つく。


 僕はアイビーの心が、それほど強くないことを知ってるんだ。


 村の皆に酷いことを言われたとき、深夜に誰にも見られないよう、こっそりと泣いていたのを僕は知っている。


 だからこそためらってしまう。


 こういう風に自分ではなく彼女を矢面に立たせてしまえば、アイビーの心はいつか削れて、すり切れて、壊れてしまうんじゃないかって。 


 僕は感情を消化しきれぬまま、アイビーの首筋を撫でた。

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