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 全身から力を失ったグリフォンが大きな音を立てて地面に落ちる……直前、それを防ぐために一枚の障壁が現れた。


 少しして、重さを取り戻したアイビーと障壁を伝って降りてきたシャノンさんがやってくる。


 シャノンさんは、トドメをさすために首筋に剣を突き立てようと腰に手をやるが……。


「みー!」


「待って下さい!」


「む……わかった」


 彼女の動きを、アイビーが制した。


 死にかけのグリフォンに何をするのかと思ったら……えっ!?


 アイビーはなんと、グリフォンに回復魔法をかけ始めた!


 しかも使ったらマズい、傷を一発で治す上級の回復魔法だ!


 一体どうするつもりなんだい、アイビー!?



「おいおい待ってくれよアイビー、なんでいきなり回復魔法を――って、これもしかして……上級?」


「なぁおい、あれって……」


「うん、認めたくないけど上級の回復魔法。もう何あれ、ホントに亀なの? 亀の形したドラゴンとかでしょ絶対」


 あああ、言わんこっちゃない。


 近くで見てたシャノンさんも、少し離れたところで見てた二等級の皆も、今のを見て一瞬で何が起こったのか看破してしまった!


 今までは眉唾な噂だった回復魔法が、実力者達にも伝わる事実に変わっちゃったよ!


 折角の回復魔法を手負いのグリフォンに使うなんて……アイビーはいったい何を考えてるんだ!?


「み」


 いつの間にか更に一回り大きくなっていたアイビー。

 そのサイズはグリフォンの胴体を足で踏み潰せるほどに大きくなっている。


 彼女は自分の足をグリフォンの、治したばかりの腹に押しつけた。


「クルゥッ!!」


「みぃ」


 グリフォンが手足を必死にばたつかせて逃げようとするが、足が鉄の柱のように突き立っており、拘束から逃れることができなくなっていた。


 多分重力魔法で、重さを増やしてるんだと思う。


 何かをわめいているグリフォンには取り合わず、石のようにジッと動かないままのアイビー。


 動くな、と彼女は言っている。


「ねぇちょっと、何が起きてるのか教えてよブルーノ君」


 何が起こっているのかちんぷんかんぷんな様子のシャノンさんが、近くに寄って耳打ちをしてきた。


 彼女はアイビーと意思疎通が取れるわけではないので、作戦の最中も何度かこんな風に僕に確認をしてきた。


 今までだったら答えられたけど……彼女が何をしようとしてるのかは僕にもわからない。


 アイビーは何をするかまでは、言ってくれなかったから。


「……動くなって言ってました。多分グリフォンに何かをするつもりなんだと思います」


「危険なこととかじゃ……ないわよね?」


「ないと思いますよ。アイビーはそんなに危険な子じゃないです」


「そっか。じゃあ信じるしかないね」


 そんな適当でいいのか、と思ったがシャノンさんがアイビー達を向いている様子はひどく真剣だ。


 もしかしたらアイビーと戦うことを想定しているのかもしれない。


 自分もただでは済まないとそう思っているからか、シャノンさんは明らかに顔を強張らせていた。


 ……アイビーは意味もなく戦うような戦闘狂じゃないし、そんな心配しなくてもいいんだけどなぁ。


 さっき一応説明はしたけど、やっぱり僕の言葉を完全に信じ切ってはいないみたいだ。


 冒険者っていうのは、それくらい用心深くないとできない仕事なのかも。


「み、みみぃみぃ」


「クルゥ」


 アイビーは相変わらず足をグリフォンの腹に押し当てている。


 何か問答をしているようにも思えるが……不思議なことに今の彼女が何を言っているのか、僕の頭でも理解ができなかった。


 こんなの、初めてのことだ。


 もしかしたら僕に聞かせたくないようなことを、アイビーはグリフォン相手にしているのかもしれない。


 ……ってことは今までアイビーの気持ちがわかってたのは、彼女が魔法か何かを使ってたからなのかな?


 たしかにたまに、ただの鳴き声にしか聞こえない時とかもあったけど……。


「みぃみぃ」


「クル、クルクルゥ」


 てかさ、なんかアイビーって、グリフォン相手に普通に話をしてるように思うんだけど。


 魔物同士ってコミュニケーションとか、取れるの?


 それともアイビーが特別なだけなのかな。



 シャノンさん達が固唾を飲んで見守っていると、グッと突き込まれていたアイビーの足が引き抜かれた。


「みみぃ」


「クル、クルクル!」


 彼女とグリフォンが視線を交わすと、パアッと明るい光が生まれた!


 アイビーの体色のような藍色の光が、彼女とグリフォンの間に繋がって、一本の光の線になる。


 眩しくて目が開けられないほどの強さだった光は、反射的に目が閉じるよりも早く消えた。


 後には何事もなかったかのように佇む、アイビーとグリフォンの姿だけがある。


 アイビーがこちらへ駆け寄ってくる。

 そして徐々に身体を小さくさせてから、ふよふよと浮いて自分で僕の肩に乗った。


「みぃ」


 これで大丈夫、もうグリフォンは私の言うことを聞くからとアイビー。


 グリフォンが、アイビーの背を追いかけてこっちにやってくる。


「グルゥ」


【あっし、今日からアイビーさんの舎弟になるでやんす】




 ……ん、あれ?


 僕の頭がおかしくなったのかな?

 今なんか聞いたことない、変な声が……。


「クルクルゥ」


 【アイビーさんの家族って事は、あっしよりも格上。これからよろしくお願い致しやす】


 ……ダメだ、やっぱりグリフォンの声が聞こえてくる気がする。


 最近ちょっと寝不足だったからなぁ……。


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