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私ならできる


「ぶっちゃけて言おう、アイビーの力を貸して欲しい」


「は、はぁ……」


 『ラピスラズリ』の三人と街へ戻り、報奨金を五等分(アイビーも一人分)で分けていると、ムースさんに呼び出しを受けた。


 連れて行かれたのは、二回目の応接室。

 前回と間違い探しをするかのように、全く同じ体勢でアンドレさんが待っていた。


 そして開口一番、助けを求められたというわけだ。


「みぃ……」


「いきなり言われてもわからない。まずは詳しい説明からしてもらわないと。ギルドマスターだったらちょっとはこっちの気持ちも考えてよ、と言ってます」


「……すごいな、今の鳴き声一つからそこまで読み取れるのか」


 アイビーとはツーカーだからね。

 彼女の気持ちは大抵わかるんだ。


 なんでなのかは、僕もわからないけど。

 ――家族だから、なのかな?


「あいやすまん、ちょっと焦っててな。今から説明させてもらおう」


 アンドレさんの話はこうだ。


 実はアクープの街から東にあるトーヒェン伯爵のジンボウの街に繋がっている街道に、とある魔物が現れたのだという。


 常日頃から魔物達と戦い慣れているアクープの冒険者達ではなく、ギルドマスターを倒したとはいえ新参であるアイビーに直接話をしなければいけないほどの魔物。


 その魔物の名は――。


「グリフォンだ。等級は一等級……つまりは一番上だ。うちの冒険者達が束になって人海戦術に出て、なんとか倒せるってところか」


 魔物も冒険者と同様に、等級によってランク分けされている。


 大体同じ等級の魔物と冒険者パーティーが、同じくらいの戦闘能力らしい。


 グリフォンは一等級の魔物だから、つまり一等級冒険者パーティーと同じくらいの力があるということになる。


 一等級冒険者っていうのは、冒険者ギルドの最高戦力だ。


 そんな人達が束にならなければ敵わないというほどの魔物、グリフォン。


 今回の依頼は、往路を通せんぼして居座っているグリフォンをなんとかしてどかすというものだ。


 別に討伐する必要はなく、どこか別の場所に飛ばしてしまえばそれでいいとのこと。


 部隊の中に、アイビーとブルーノに入ってほしいと、アンドレさんに頼み込まれる。


 一等級って……僕まだ四等級になったばかりなのに。


 いくらなんでも、むちゃくちゃ過ぎないか?


「その今回の対グリフォン部隊……でいいんでしたっけ? その部隊にいるのって、多分……」


「ああ、主だった面子は二等級で、一人一等級の奴もいるな。四等級で参加するのはブルーノだけだ、これはすごいことだぞ」


 そんな風におだてられても全然嬉しくない。


 ……畜生。


 アンドレさんの話を聞いて僕が感じたのは、もっと上手くできたんじゃないかという後悔だった。


 確かにゼニファーさんに、目立ってギルマスや辺境伯の目に留まるようにとは言われた。


 でも僕たちはその言葉をあまりにも鵜呑みにしすぎたのかもしれない。


 ゼニファーさんはアイビーの回復魔法なんかの、魔法全般の練度については知らなかったはずだ。


 きっとアイビーはアンドレさんにあまりにも、目を付けられすぎた。


 僕が上手く立ち回れなかったせいで、まだ寝るところを決めるのがやっとという段階なのに、これほど危険な依頼にかり出されようとしている。


 それだけ覚えがめでたいのはありがたいけど……でもなんでも言うことを聞き過ぎてもダメだ。


 そんなことをしても、いいように扱われるだけになってしまう。


「アンドレさん、今回の……」


「みー!」


 僕が口を開こうとすると、それを遮るようにアイビーが叫んだ。


「みー、みー!」


「……いや、でも……」


 彼女は僕のことを、たしなめている。


 そんなことをするんじゃないと、そう言っているのがわかった。


 でもこんなすぐに危険な場所に行くことになるなんて、早すぎるよ。


 僕が危ないのはもちろんだけど、アイビーだって危ないんだぞ。


 元二等級のアンドレさんを倒せたとはいえ、君の力が一等級の魔物に通じるかなんてわかんないんだ。


「み」


 僕はそう反駁したが、アイビーは顔を背けて聞く耳を持たなかった。


「みみぃ」


 私ならできる。

 それだけ言うと、アイビーが顔をこちらに戻す。


 でも彼女は自分の意見は言うけど、決して傲慢じゃない。


 無理を通そうとはせず、それ以上何も言わないまま、僕の判断を待っている。


 ……どうしよう、どうすればいいんだ。


 アイビーの力が一等級に通じるかはわからない。

 彼女は大丈夫だと言っているけれど……。


 アイビーが本来のサイズに戻って全力を出せば……なんとかはなるかもしれない。


 ……今は彼女を信じるしかない、か。


 もし無理そうだったとしても、きっと逃げることくらいならできるはずだ。


 仮に負けることがあったとしても、それもまたアイビーにとっていい経験になる、そう思っておくことにしよう。


「わかりました、僕たちも参加します」


「みー!」


 こうして僕は、アイビーに説得される形で、グリフォンをどかす特別任務を受けることになった。



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