表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

113/127

再会


「ふぅ……」


 朝からやっているお店を探し、席ごとにカーテンで仕切られている半個室のレストランを選ぶことにした。

 この後に控えている朝ご飯のことを考えて注文は控えめにして、一つのものを頼んで三人で分けていく。


「落ち着くなぁ……」


 辺境伯のお屋敷は一部屋がかなり広く、使われている寝具のどれもこれもが一級品だった。


 ベッドは押した指の跡ができるくらいに柔らかくて、布団もふわふわすぎて乗っている気がしない羽毛布団。枕は頭が地面に吸い込まれていきそうなくらいの低反発で、サイドランプはなんと明るさ調節までできる。


 けれど、元がただの農民の生まれだからなのだろうか。

 良いものを使いすぎているせいで逆にどうにも寝付けず、眠りは浅かった。

 アクープに戻ったらあの慣れ親しんだ馴染みのせんべい布団で、またゆっくり眠れたらなと思う。


 人目を気にすることもなく、ようやっと過ごせる周囲から隔絶された自分だけの時間。

 きっとどんな人にも、こういう誰の目も気にせずいられる場所は必要だと思う。


 ほうっと一息吐きながら、温かい紅茶で唇を湿らせる。

 目の前にある白いカーテンの仕切りが、僕をグリフォンライダーからただの少年に変えてくれるのが本当にありがたかった。


 ゆっくりとしていると、ここ最近の怒濤のようなイベントの数々が頭の中で流れては消えていく。


「魔王十指、か……」


 突如として現れた、魔王十指を名乗る魔王軍幹部達による人間界への侵攻。

 左第一指であるガヴァリウスを殺してしまったあの少年のような見た目をした魔物。

 名前はたしか……クワトロとか言ったっけ。


 彼から感じる圧力は、尋常なものではなかった。

 もう長いこと変わっていないという魔王の右手達。

 あんなのがあと五人もいると考えると……今から憂鬱になってくる。


 アイシクルから聞いたことによると、左手指とは違い右手指の魔物達はほとんど人間界に興味がないのだという。

 今回の魔王軍の侵攻にも、彼らはほとんどかかわっていないだろうと言っていた。

 だがだとしたら、なにゆえわざわざあの場にやってきたんだろうか。


「そもそも勇者と魔王って、なんなんだろう」


 以前僕はレイさんに、自分は勇者なのだと告白をされたことがある。

 勇者の伝承はいくつもある。

 その誰もが大きな功績を残し、人間達の救世主としてその名を後生まで語り継がれている。

 その功績の中には、魔王を討伐したというものも多い。


 勇者の対となる存在が、魔王だ。

 勇者が人間の旗頭だとしたら、魔王というのは魔物の王だ。


 彼らは魔物達を率いて人間界に侵攻し、人間を滅ぼそうとしている存在なのだという。

 でもその話も、どこまで本当のことなのかわからない。


 本当に僕達を滅ぼすつもりなら本人が出てこないのも、魔王の側近中の側近であるはずの魔王の右手指達を侵攻に駆り出さないというのもおかしいしね。


 僕らは恐らく、今後魔王十指と戦うことは避けられないだろう。

 であれば僕はもっと、魔王や魔物というものに関して詳しくならなくちゃいけないだろう。


(そういえば今あの人は……王都にいるんだっけ)


 僕らはまだしばらく王都にいるつもりなので、あの人――ゼニファーさんに一度詳しい話を聞いてみるのが良いかもしれない。

 あの人より魔物に詳しい人を、僕は知らないからね。


 というわけで僕が試しにアポイントメントを取ろうとすると、本来なら激務で予定がないはずのゼニファーさんが会いに来てくれることになった。

 なんやかんやですれ違いになっちゃうことも多かったので、会うのもなんだか久しぶりな気がする。

 少しだけ楽しみに思いながら、僕は久しぶりに好奇心旺盛な魔物学者さんと会うのを楽しみにするのだった――。

好評につき、短編の連載版を開始致しました!

↓のリンクから読めますので、こちらも応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ