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プロローグ

「……(ガクガクブルブル)」


「みいっ!」


 アイビーがこちらを安心させようと、手を僕の肩にぺちぺちさせてくる。

 けれども緊張のあまり、今ばかりは彼女にいつもの笑顔で反応することができなかった。


 そう、僕は緊張している。

 というか……圧倒されているのだ。

 目映くそして荘厳な、王の居城に。


 目の前にそびえ立つのは、白亜の城。

 そして大男三人分くらいの高さがあるドアの左右には、いかにも強そうな衛兵さん達が並んでいる。


 列になっている彼らにぺこぺこと頭を下げながら、立ち止まって震えそうになる身体を叱咤して、なんとか歩き続ける。

 エンドルド辺境伯の屋敷も大きいと思っていたけれど、あれとも比べものにならない。


「開門!」


 僕らが近づいていくと衛兵のリーダーらしき人が何かを叫び、それに呼応するように門の上の方から鐘の音が鳴る。


 ゴゴゴゴゴ……と地響きのような大きな音を鳴らしながら、門が開いていく。

 ゆっくりと見えてきた中からは、美しい庭園が見えてきた。


「ついてきてくださいブルーノ様、アイビー様」


「は、はいっ!」


 僕らを先導する兵士さん。

 がっしりとした鎧を着けてガシャガシャと音を立てながら歩く彼の背中を、おっかなびっくり追いかけていく。


「どどどどどどうしようアイビー、本当に王城に入っちゃってるよ!」


「みぃみぃ」


 兵士さんに聞こえないように小声でやりとりをしながら、どんどんと前に進んでいく。

 隣にも後ろにも、仲間は居ない。

 今回はいつも一緒にサンシタでさえ、王都にある宿屋の厩舎に居てもらっている。

 王都まで一緒に来てくれたカーチャも、今は王城の別室にいるはずだ。

 

 ――そう、僕らは王様に呼び出されたため、王国の王都の中央にでかでかと鎮座している王城へとやって来ている。

 辺境のアクープからここまでやってくるのは、大変な道のりだった……。




 理由はわからないけれど、今回王様からの直接の手紙で王城へと呼び出されたのは、僕とアイビーのみ。

 他の人達は来ても来なくてもいいという話だったんだけど……。


『え、私? 面倒そうだからパスかな』


『勇者として命令を何度も受けたことがあるから、正直王様にはあまりいい思い出がない。だから私は遠慮させてもらおう』


『私、蜂蜜作りに真面目ですの。ですから結構ですわ』


『政治に関わることはもうこりごりですので、遠慮させていただきます』


『姫様がいかないのなら、私も行きません』


 という感じで、救世者の皆は早々に不参加の意を表明しており。

 結局僕らと共にアクープの街を出てきたのは最初についてきてくれると言ったカーチャと、

『よくわからないけど、ついていくでやんす!』


 人間の事情がよくわからないまま、なんかよくわからないけどついてきてくれたサンシタだけだった。


 皆ひどいよね。

 面倒ごとは全て、僕に押しつけちゃうなんて。


 まあたしかに、救世者自体いざという時のために僕を矢面にするために組んだ臨時パーティーみたいなところがあるから、別にいいんだけどさ……。



 アクープから王都までの道のりは比較的快適だった。 

 エンドルド辺境伯が豪華な六頭立ての馬車を用意してくれたし、何せ僕は今回王様であるヴェント二世の招待状まで持っている。


 道中山賊に襲われるようなこともなく、いくつかの街で歓待を受けながら、僕らは王都へ無事たどり着くことができた。


「まあ安心せい。多分じゃが王宮勤めの書記官あたりと話をして、褒賞をもらって終わりじゃろうから」


 カーチャにそう言われホッとしていた僕らは、そのままあれよあれよという間に王城まで連れて行かれ……


「余がヴェント二世である。ブルーノ、そしてアイビー、面を上げよ」


 そして気付けば、謁見の間にて、国王様と直接対面することになっていたのだった。

 ――代理人と話をするだけじゃなかったの!?

 話が違うよ、カーチャ!

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