第6話 しせん(朔良)
――なんだか視線を感じる。
射殺すような視線ではなく、むしろ熱っぽい視線ではあるが……どうにも居心地が悪い。
しかもずっと見られているような気さえする。
(まさか、ストーカー?)
朔良は割と男女両方に好かれるタイプだ。
性格はサバサバしていてしっかりしているし、女子力が高くて可愛いものが大好きだから。
そんな朔良が告白されることは珍しくない。
だが、束縛されることを嫌う朔良は、その告白を全て断ってきた。
それがまさかストーキングされることになるとは。
「……めんどくせぇ」
「どうしたの? 朔良」
「うわあ!? びっくりしたぁ!」
朔良は突然かけられた声にびっくりして飛び上がった。
美久里はそんな朔良の様子に目を丸くする。
「そ、そんなびっくりしなくても……」
「あ、あぁ……ごめん。――って、お前またかよ!?」
「え、なにが??」
もうこれは尊敬するしかないだろう。
美久里のくせっ毛の強さには。
「今度は前衛芸術家が作ったアートみたいになってるぞ……」
テーマがなんなのか、凡人には理解できないが。
重力に逆らって伸びる髪の毛は、芸術家たちが褒め称えるレベルだろうと思う。
朔良は携帯用のクシで、美久里の髪を整える。
近くにあった公園のベンチに腰掛けて、朔良は美久里に問う。
「もしかしてあたしが感じてた視線って……美久里か?」
「えっ……!」
その問いかけに、美久里は明らかに動揺している。
もしかして、美久里は朔良のことが好きなのだろうか……
(いやいや! んなわけないだろ!)
だけど、もしそうだとしたら……その時はどうすればいいのだろう。
朔良は誰かのものになる気はない。
だけど、美久里を傷つけたくはない。
朔良がそのことに葛藤している間、美久里が覚悟を決めた様子で自分の胸の内を告白する。
「あ、あのね……その……さ、朔良ってスカート短いじゃん? だ、だから……その……中が見えちゃって……言おうかどうか迷ってたんだ……」
美久里は顔を真っ赤にさせながら、萌え袖の部分を口元に持ってくる。
それとは対照的に、朔良は血の気が引いた様子で顔を真っ青にさせた。
そして急激に顔を沸騰させ、スカートを押さえた。