組み手 ③
もう考えてる暇はない。
「ウェンディ……悪いが、一撃で終わらせるぞ!」
ウェンディは立ち止まり、笑った。
「テリー、何の冗談なの? 私のスピードについてこれてないじゃない!」
「今の俺ではついていけないが、俺はまだまだ本気を出していないぞ?」
ウェンディはさらに笑う。
「あはは、嘘はダメだよ! 貴方に[四刹四唱]以上の力があると言うの?」
「あるさ! 俺は[十刹十唱]までは身体に負担がなく使えるんだ」
まぁ、[十刹十唱]を人間相手に使う気はないんだがな。
ましてや、爺さんの弟子同士の組み手で使うなんてあり得ない。
「嘘だわ! 今のビリー様でさえ[五刹六唱]が限界なのよ?」
ウェンディは一向に信じない。
「まぁ、見ればわかるさ! 嘘か本当かは見てから決めればいい」
目を瞑り、両手を合わせて集中する。
「これが俺の実力だ! [五刹六唱]!」
赤いオーラが身体を包み込む。
「さぁ、組み手を再開しようじゃないか!」
「[五刹六唱]なんてハッタリよ! どうせ、私のスピードにはついてこれないわよ!」
「喋ってばかりいないで、かかってこいよ?」
ウェンディの顔つきが変わった。
「調子に乗らないで! 私の本気の一撃で終わらせるわ!」
「[四刹四唱]! アニマル流・[犀舞武]!」
両手を合わせて、動物の犀のように突進をしてきた。
[刹]魔法も組み合わさって、スピードは速く、威力は凄まじい。
「凄い技だ! スピードと威力が桁違いだ!」
「勿論よ! 私の本気の技だからね!」
爺さんに見せたかった技だし、丁度いい!
「だが、俺はさらに上をいく!」
「[五刹六唱]! 空手流・[真・正拳突き解]!」
俺の真・正拳突き解とウェンディの両手が衝突し、カルロ森全体が揺れた。
空手流・[真・正拳突き解]は、通常の[正拳突き]を俺なりにアレンジした技だ。
対武闘家用に考えた技で、腕をトルネードの様に回転をさせる。
威力は絶大だが、身体に少しの負担がかかってしまう。
爺さんが組み手を止めに、俺とウェンディの間に入る。
「お主ら、そこまでじゃ……勝ったのはテリーじゃな」
「爺さん! まだどちらも倒れていないぞ!」
「ウェンディ、まだ戦えるよな!?」
ウェンディは静かに首を横に振り、言った。
「テリー、私の負けよ! 全ての力を出し切ったわ!」
「それに、貴方はまだ、本当の全力を出していないでしょ?」
俺は何も言えなかった。
実際、まだ全力ではなかったしウェンディが全て正しかった。
「そういうことじゃ! これで組み手は終わりじゃ」
ウェンディが笑顔で、俺と爺さんの間に入ってくる。
「組み手をして疲れたわ! 早くご飯にしましょ!」
こうして、爺さんの弟子同士の組み手が終わった。




