01白に呑まれる
気まぐれにゆきます。
「よっしゃできた~~!!!!」
テレピンを染み込ませたキッチンペーパーで筆にに付着した油絵の具を拭き取りながら俺、光染 彩は自分の描いた渾身の絵を眺める。
補色の朱色と緑がかった青を貴重とした世界。様々な色が混ざりあっているはずなのに、濁りもせず、鮮やかに、そして鮮明に、この地球には存在しない不思議な光景がそこに広がっている。
全てが自分の空想の街。
いやしかし、あー楽しい。
まじ最高すぎるわ、ずっと見てられるんだが。
絵描きにとって、自分で完成させた絵を眺めることはとても至福の時間であるのだよ!諸君!!
この1人しかいない美術室でテンションMAX状態だった俺は、小躍りしながらピシッと筆を前に突きだし、ポーズをとる。
それと同時ににドアが開いた。
「最後の美術部員さん、もう時間なんで鍵閉め…」
事務のおじさん!?
いや、まじ恥ずい。何してんだこいつって顔してる!!
「!?あ、すいません!もう出ますんで!!」
恥ずかしさを抑えながら俺は答えた。
まじか、もう7時なのか。
部活動の終了のチャイムから、2時間以上も時間が経過していたようだ。
もう外だって暗くなってるし…
絵を描いてたら時間のことすぐ忘れるんだよな、とりあえず急がないと。
そうして俺はブラッシュクリーナーを取り出し、筆の洗浄に取りかかった。
くっそ、こういう時に限ってクリーナー液残り少ないのな…
1本づつ液の中で筆をほぐし洗いをしていく。
油絵の具は水彩用の絵の具やアクリル絵の具と違い水で落とせないのが難点だよな。全て専用の液で落とさないといけないのがなぁ…めんどくさいというのが本音だわ。
白い絵の具を落としながらふと考えた。
純粋な白が表現出来ればなぁ、と。
絵の具では表現出来ない色がある。
それは『純粋な白』と『純粋な黒』。
強烈な白い陽の光、漆黒のブラックホール。それらが『純粋な…』の者達に値する。それらを表現できればなと考えただけである。
まあ、無理だろうけど。
「施錠お願いします!!すいません、遅くなってしまって」
なんだかんだで画材の洗浄に10分かかってしまった俺は、学生服に着替えずにツナギを来たまま学校を出た。
まあ、多少汚れてるけどしょうがないよな。時間なかったし。
そんないいわけを考えながら駅に続く道を歩いていると、カラオケ店の前でワイワイと4人の高校生がだべっていた。
少し通行の邪魔だな、こんな所でも立ち話するなら、どっかカフェにでも行ってくれりゃいいのに。
そう考えたが、そんなことわざわざ言おうとも思わなかったのでスルーする。
彼らの隣を通りすぎようとしたその瞬間だった。
白。
『しろ』に囲まれた。
最も明度が高く、
絵の具やインクでは表現出来ない、
純粋な白。
頭が真っ白に染まって、
意識を塗りつぶされるようで。
もう、なにも
かんがえ、られな、い ───────
そして俺は、
『しろ』に呑まれた。
面白かったらポイントいれて頂けるとうれしいなぁ~っと|*・ω・)チラッ