40歳で引きこもりでニートの僕が宿屋に戻った話
とりあえず宿屋に戻ってみるとそこには信じられない光景が広がっていた。
ゴオオオオオオオオオオ!すごい火が宿屋についていた。
「魔物だ…魔物が勇者を狙ってきやがったんだ…」
絶望に打ちひしがれながら宿屋の主人がポツリと言った。
そんなことがあるだろうか。さっき見た時はこの街の門のところには門番が立っていた。
自分を狙った魔王の手先のモンスターが燃やしたのであればおかしいのではないか。門番がモンスターをどうぞどうぞと通したことになるじゃないか。
このバカ店主は論理的にものを考えるということができないのだろうか。
俺は意を決して言った。
「聞き込みが必要だ!」
「おお、勇者様」
「勇者様…」
「さすが勇者様だ」
まず向かったのは門番のところだ。
「これはこれは勇者様。旅に出るんですか?」
「いや、ちょっと聞きたいことがあってね。キミ、ここ1時間くらいの間にここを誰か通したか」
「ううん、外は魔物が出没するということで皆怖がってほとんど街から出ませんからねえ。たった3人です」
「その3人はもちろん人間だろうな」
「ええ。一人はマイケルという魔物ハンターです。デビルウルフ2匹を抱えていて毛皮にするんだと言って意気揚々と街に入っていきましたよ。背中には大きなオノを背負っていました」
「腕のたつ男のようだね」
「ええ。二人目はリッカという女性です。野草獲りをしてきたとのことです」
「外には魔物がいるというのにずいぶん呑気だな」
「いえ、彼女は実は魔法が使えるんです。そこいらのザコモンスターじゃとても敵わない強者ですよ」
「なるほど」
「三人目はグラースというガンマンです。モンスターを銃の練習台にしているクレイジーな男です」
「人格的に問題があるのか?」
「そうですね。この街でも5人を射殺しているほどの男です」
「ふむ。よく分かった。この3人の中に犯人がいるわけだ」
「犯人?何かあったんですか」
「実は宿屋が何者かに燃やされていてね。店主は勇者の俺を狙ったモンスターの仕業だと言っていたが、この通り街の入り口にはキミがいるわけだからモンスターは入れないわけだろ」
「そうですね。放火ですか。そういうことでしたら怪しいのはリッカかもしれませんね。彼女は炎の魔法を使えるんですよ」
「もう決まりじゃないか。有力な情報をありがとう」
「リッカを逮捕しろ!!!!!!!!生死は問わん!!!身柄を拘束した奴には報酬をはずむぜ!!!!!」
俺が号令をかけると城から兵士がワラワラと出てきた。そしてリッカという悪女を縛って城へ連れて行った。
しかし心のモヤモヤは晴れない。実は門番の話していたガンマンのグラースが犯人かもしれないとも思っているからだ。
こんな残虐な犯行を涼しい顔してやれるのはそこらの一般市民には難しい。しかし、クレイジーさが売りのグラースならあるいは…。
「グラース!!!!!どこだ!!!!お前だけは俺が許さん!!!!お前らも見つけたらすぐ殺せ!!!!!!」
「この国にほしいのはあの熱意だった」
「あのようなまっことの武の精神を持った男がこの国にいたとは」
セントクリスタン王国の国民が勇者のリーダーシップに感銘を受けた瞬間であった。