65話 旗の回収
騎空士になりました。身体が足りません
今日ってエイプリルフールでしたっけ…?
翌日、三人は結果を予想しあっていた。
「とりあえず部門別報酬は10位以上だから多分無理だとして、個人総合どれくらいだろ」
「んー…2000位以内ぐらい入れたら良い感じかしら」
「そこらへんの順位報酬は…SP4と金属素材詰め合わせか。欲を言えば1500位以内入りたいな」
「ドロップ率増加するポーション貰えるんだっけ?確かに欲しいな」
ここで言われた金属素材詰め合わせの中身は既に公表されていて、鋼と魔鉄、そして銀がインゴット状態でそれぞれ十個となっている。
鋼は重装系防具などの耐久力に重きを置く物に使われ、銀は魔力を通しやすい特徴から魔術師系統の防具やアクセサリーに使われることが多い。
そして魔鉄は二つの中間に位置する金属で、魔術もそこそこ使う近接職や弓士などの物理後衛職の防具として使われる。
更に魔鉄はコバルトやニッケルと合金にすることで強度を増したり、『錬金術』で宝石と融合させることで防具なら該当属性への耐性、武器ならば属性付与が出来る。
どちらも効果は僅かであるものの、宝石の色が反映された時の見た目の良さやそれなりの性能などから、魔鉄は現状使われることが最も多い金属である。
「俺達の場合運の値かなり高いからドロップ率増加が実感できるかどうか微妙かもしれないけどな。…そろそろか?」
「見てみるわ、えー《只今から今イベントの最終結果を公表します。それと同時に順位報酬を送付しましたのでご確認ください。結果はこちらからも確認できます》…だってさ」
ワールドアナウンスが終わると同時に、三人の前に『結果を確認する』と表記されたパネルが表示された。タッチしたら飛ばされるタイプのものだ。
「ちょうどのタイミングだったみたいね。じゃあ、確認しましょ」
「あえてアイテムボックスから確認してみるか?順位見れるか分からないが」
「分からないんだったら普通に順位確認してからにしようや。それで中でも確認できるのが後から分かっても問題無いし」
「あー、そうだな。よし見るか」
シオンが結果画面に飛んだのを見た二人も、それぞれタッチして確認しにいった。
自分の順位を見たルヴィスが声に出して言おうとした時、ノエルがある提案をした。
「そうだ、この中で一番順位が高かった人が何か二人に奢るってのはどう?」
「低いじゃなくて高いやつが、か。良いな、俺は問題無いだろうし」
「なんでそんな自信満々に言えるんだお前」
「タンクが一番順位高いなんてことあるわけ無いだろ?てか一番高いのシオンだと思う」
「普通なら褒め言葉だが…なんでだ?」
「料理作ってたから、とかじゃないかしら?部門別ではそこそこでも総合順位で考えると私達はイベント中に生産系に手を出してない分減るし」
「……あーー、その分か」
ルヴィスとノエルはこのイベント中に何かを作成することが無かったのに対し、シオンは昼食を作っていたり自分用に間食を作っていたりしていた。
実はこのイベント、生産の計測方法の一つの基準として'生産系スキルの有無に関わらず何かを作る'というものも存在していたので、串焼きでも何でも良いからとにかく作ればほんの僅かとはいえポイントは加算される。なので一応『料理』スキルを持つルヴィスでも、一つも生産系スキルをとっていないノエルでも多少は増えたのだ。
一応イベントが始まってから集計方法にもその辺りの情報が載ってはいたのだが、シオンですら完全に無視していたためどうしようもない。
「確かにそこらへん考えると俺かもしれないが、ルヴィスも怪しいんじゃないか?ほら、レイドのあれとかよ」
「レイド?レイドってーと……え、あれ入るのか?実質戦犯だろあれ」
「あぁ、あの大炎上事件ね?でもあれで粉出なくなったんだし、一応ファインプレーだったんじゃないかしら。いきなりやったのは良くなかったと思うけど」
「そこは十分反省してる…てか、ノエルはなんで候補にトップ上がらないんだよ」
話を戻すためにルヴィスが話を振ると、なぜか勝ちを確信しているような声で彼女は話し始めた。
「だって、ねぇ?二人に比べたら特別何かした訳でも無いし、ただ普通に戦ってただけよ?いってもこの中で二番目じゃないかしら?」
「ほう…そこまで言うなら全員で一斉に順位開示するか?」
「良いわね、やってやろうじゃないの!」
「あれで大金手にしたとはいえ奢るのやだなぁ…よし、準備できた。シオンは?」
「大丈夫だ。ノエルもいいな?…よし、せーの」
突然決まった男気溢れる競い合い、果たしてその結果は―――
「合計5380Gでーす。…ありがとうございましたー」
「人の金で食う飯は美味いなやっぱ」
「自費で食べるのも良いけど、やっぱりそうね。……元気出しなよ1461位さん」
「順位で呼ぶのやめてくれる!?ぬぁー、なんで俺が一番高いんだよぉ……」
結果はノエルが1498位、ルヴィスが1461位、そしてシオンは1463位とかなりギリギリの戦いとなった。
それぞれの結果を見て男二人組が特に順位を見比べあった結果、ルヴィスが某賭博黙示録の実写主人公のような声を出したのは他二人の記憶に新しい。なおシオンはそれをスクショしていた、これはひどい。
「何回言うんだよそれ、この中でトップだから良かったじゃないか1461位」
「そうよ?私なんかドベだったんだから結構悔しいのよ1461位」
「くっそ…トップで嬉しくない事が起きるなんて思って無かった」
「まあでも、限定称号も貰えたしプラスにはなってるんじゃないかしら?」
「んーーー…確かに貰えたのは嬉しいけど」
今回、1500位から501位以内に入ったプレイヤーには記念として"侵攻を退けた勇士"という称号が贈られている。
それ未満にも"侵攻を退けた者"という称号は与えられたが、それよりはやはり上位限定称号の方が貰う側も嬉しいだろう。
「そうだ、これからどうする?」
「今のうちに装備更新しとくか?俺は剣とか買っときたいが」
「あー、そうね」
「じゃあ武器屋に行くってことで良いか?」
「おう」
それぞれが武器を新調し、最後にシオンが店を出て二人に合流した。
「ん、俺が一番遅かったか。待たせてすまんな」
「別に良いよ。…なあシオン、少し気になることがあるんだが」
ルヴィスがそう言い視線を向けるのは彼の腰辺り、剣が佩かれている場所であった。
「あぁ、この剣か?」
「おう。なんだろな、柄?のところがなんかな。これと同じでモンス素材か?」
「よく分かったなお前」
武具には金属素材だけではなく、当然モンスターの素材を使ったものも存在する。
状態異常耐性が手軽に得られることや金属素材と比べると比較的軽量な物が多いことが強みだが、その分耐久値が低かったり特定の属性に弱くなるなどのデメリットも存在するので、レンジャーなどの素早さを求められる職では使い手が多い。
そんなモンスター素材製武具には特徴があり、どこかしらに必ず素材になったモンスターの特徴が現れる。例えばルヴィスのロザリエディザイアなら鍔に茨の模様が刻まれたりするのだが、シオンの剣の場合は柄が黒っぽい半透明であった。ルヴィスはこれを特徴と判断したのだろう。
「これ、アサスラの素材使った剣なんだと。イベント限定武器だから性能低いかと思ったら割と優秀だったから買った」
「どんな性能してるの?やっぱり、相手の防具に影響与えるとかかしら?」
「それの確認も兼ねてになるが、今から行きたいところがあってな」
「良いけど、どこ向かう?」
「旧遺跡にあるらしい例の地下に向かおうと思ってる。どうだ?」




