64話 検証
来なかった……
「ほらよ、お前の分だ」
「うお、結構重いな。いくら入ってるんだ?」
「一人あたり三十万ね」
「マジかよ」
「へぇ、結構高かったんだね」
「長いことこっちで生きてる割には初めて知ったみたいな反応ね?」
「金貨は使ったこと無かったからね、武具を買わないとなると使っても銀貨ぐらいなものさ」
「確か銀貨で1000Gだから、そんなもんか」
「だね。ところで、これからどうする予定なんだい?イベントも終わっただろう?」
「どうすっかなー。今何時だろ」
時計を見ると、時針は5に向いている。クエストを受けに行くにも微妙な時間であるし、かと言って何もしないにしても時間が長いという微妙な時間だ。
「やる事無いな?」
「お前も多分Lv上がってるだろ?だったらスキレももしかしたら上がってるかもしれんぞ、俺は『月剣術-守』が10になったし」
「マジ?見てみるわ。…おぉ、65になってる。スキレ上がったやつは…『危険感知』3の『結晶魔術』5、『投擲』5で『初級盾術』が9になってるな。盾使ってないのに」
「あれ、ルヴィスって『月剣術-守』カンストしてたわよね?進化はしてない感じ?」
「してないなぁ。これ進化条件あったら面倒だぞ…」
「あぁ、そういうのもあるか。俺は戦技試しに行くけど、どうする?」
「俺も行こうかな。ちょっと見た感じ増えてるし」
「じゃあ私も。色々増えたし試しとかないと」
「んー…私は見てようかな?新しく使えるようになったものも無いし」
「月白風清ヤバくね?」
「だな、だけど上手く扱いきれる気がしねぇ」
「その月白なんちゃらっての、そんなにヤバかったのかい?ノエルちゃんの方見てたから見逃しちゃってさ、どんなのか実践してくれるかい?」
「オッケー、じゃあ早速。『守ノ剣-月白風清』」
発動されると、ルヴィスの前方にDを円状に重ね合わせたような障壁が現れる。それと同時に、剣には小望を発動させた時のような光が宿った。
「なんつー微妙な…まぁいいや。シオン」
「あいよ、『守ノ剣-月白風清』」
すると、シオンが発動した方はルヴィスとは異なり障壁は現れずに異なる強さの光が三つ剣に宿る。その違いは明確どころではない。
「んん?大分違うように見えるけど、二人の間で使ってる戦技は一緒だよね?」
「一緒だな」
「今回の場合ルヴィスはほぼハズレ、俺の方は多分当たりっつー違いはあるけど」
「当たりハズレがある…ランダム系なのかい?」
「ご明察。この戦技、『月剣術-守』の一から九までの中から三つランダムに同時発動するんだわ。だから運が良ければ状況に応じたやつが同時に三つ、悪ければ残念なことになる」
「ちなみにルヴィスが発動させたのは多分だが上弦、下弦、小望の三つで俺の方は新月、小望、十六夜だな」
「博打に近い戦技だねぇ。今のところ使う予定は?」
「多分無い」
即答であった。しかし戦闘時のリスクを考えれば妥当な判断ではある。
「そうだ。ルヴィス君の方で下弦が発動してたみたいだけど、そっちはどうだった?」
「下弦はなんだろ、ダメージ反射かな。上弦より耐久低いけど防いだダメージの一部を防御無視で相手に跳ね返すやつ、反射倍率は相当低いと思う」
「なーるほど、てことは硬い敵には有効ってことだね」
「そうなる。硬い敵が今のところロックタートルしか浮かばないけど」
「で、ノエルの方はどうだったんだ?」
「今もやってるけど、途中までで良いなら。『月魔術』で覚えてたのは『月明の加護』、『乱月輪』、『星守陣』の三つだね。最初のはパッシブ、あと二つはアクティブ」
『月明の加護』は名の通り月が出ている時に発動、魔力と精神を微増させるパッシブ戦技、乱月輪は成功時低確率で状態異常混乱を付与する拘束魔術、星守陣は知覚していない攻撃を一度だけ防ぐ魔術だとレミアは説明した。
「あとは『魔力制御』のレベル上昇でマルチロック数が増えたかな?って感じ。あのスキルは育てた分とても便利になるからね」
「へぇ…あ、終わったみたいだな」
「『魔力制御』って凄いのね。あると無いとじゃ大分変わる」
「らしいな。さっき『月魔術』に関してはレミアから聞いたけど、他はどうだった?」
「火と風の中級魔術は新しく『フレアマイン』を覚えたくらいね。初級でのやつが強化されたみたいだけど」
「強化?なんたらⅡ、みたいな感じでか?」
「正解。でもってこれ、多分Ⅲとかありそうなのよね」
「確かにな。レミア、そこのとこどうなんだ?」
「それをこちらからバラすのはねぇ。自分で実際に確かめてみてほしいかな」
「というか、ルヴィスはレミアから情報を聞き出そうとするのやめた方が良いんじゃないかしら」
「う、そうだな……これからは無闇に聞かないようにする」
「そうしてくれた方がこちら的にも助かるかな、たまに言っていいか微妙なのもあるし」
「だろうな。で、こっからどうする?月白風清でどれが出やすいかの検証とかでも良いけど」
「あ、それなら支援魔術の方で覚えたやつの効果を確認させてくれない?一人だとよく分からないのよね」
どんな効果なのかとルヴィスが聞くと、ノエル曰くとりあえず回復するらしいがその回復量が知りたいとのことだった。前衛二人としても回復量は気になるところなので、早速試すことにした。その間にレミアは夕食を作っておくと言い残して戻っていった。
「じゃ、やるわね。〈再起の奇跡は傷つきし者に授けられる。その傷は戦うほどに癒やされる〉、『リアクティブヒール』。シオン、ルヴィスに攻撃してみて。あ、ルヴィスはノーガードで動かないで、自分のHPを確認してね」
緑色の光が体内に吸い込まれていったのを見ている最中にノエルにとんでもないことを言われたため、ルヴィスは呆けた声を出すことしか出来なかった。
「は?」
「了解、左手上げてくれよ、『三ノ剣-三日月』」
「え?ちょっ、ぐぁ……っ」
近接職での遠距離攻撃故にダメージ自体は低いといえ斬撃は斬撃、ルヴィスの左手に深い傷が刻まれHPも減少した。
しかし、その直後に先程の光が傷元を中心に輝き始める。手元に回復系特有の暖かさを感じているうちにも傷口は塞がり続け、光が収まった頃にはほんの少しの傷を残してほぼ無傷の状態に戻っていた。
「攻撃に反応して回復するのか」
「魔術だと自傷しにくいから試したかったのよね。魔術暴走させるとちょっとやそっとの傷じゃ済まない事が多いし…」
「だからって俺を犠牲にするかよ…あ、20減っての19回復だからあって損はないかもしれない」
「マックスの時のHPってどれくらいなの?」
「190だな」
「結構高いな、でもうちの疑似タンクだからそれで良いのか」
「おうよ。……なぁシオン、お前もやっといた方が良いんじゃないか?一回だけじゃ分からない事だってあるだろうし、最大HPによって回復量が変わるかもしれないからさ」
もっともらしいことを言っているルヴィスだが、実際のところは自分だけが痛い思いをするのは嫌だという中々にクズな動機がもとになっている。
「あ?あー、確かにそうかもしれんな。俺のHPが…145か、一応やってみるか」
「(っし…!)じゃあノエル、頼めるか?」
「分かったわ。さっきと対象以外は同じ感じね」
こうしてルヴィスの思惑通りとはいえ再実験した結果、シオンの場合は回復量が15。二人のを合わせると大体最大HPの一割回復だろうと結論が付いたところでレミアから呼ばれたため、三人はひとまず区切りをつけることにした。
他に取得した戦技
危険感知Lv3でパッシブ『攻撃方向感知』取得
初級盾術Lv8で『マジックパリィ』取得
結晶魔術Lv3で『クリスタルシールド』、Lv5で『クリスタルマイン』取得
投擲Lv5でパッシブ『精度補整増加』取得
中級魔術(火・風)Lv7で『フレアショット』と『エアロショット』(ショットガンのように拡散、近くで発動すると全弾命中しやすいため威力が跳ね上がる)、Lv9で『エアロマイン』も取得(『フレアマイン』と比較するとノックバック能力高め)
中級支援魔術Lv1で『ヒールⅡ』、Lv2でパッシブ『効果時間微延長』取得
話が脱線しましたが次回は流石に結果発表になります、多分




