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61話 魔王軍、襲来! 10

「二分ってよく考えなくてもどれが効くのか検証する時間もねぇよなぁ」



「だからこそ囲んで殴ってるんだろうよ、剣だと弾かれたみたいなエフェクト出たから明らかに無駄と分かったけど。…あと一分か」



「うっそだろお前」



「マジなんだなこれが」


 発動まであと一分を切ったところ。二人は剣が効かないと分かってからは防御側に戻っていた。


 シオンが言ったように、意味のない攻撃では当たる前にシールドのようなもので弾かれてしまう。そのため該当のプレイヤー達は徐々に守りを固める側に向かったり、邪魔にならない場所に退避したりと行動を取っている。


 そんな中効果ありと判明した武器は短弓と拳。特に僧兵系統の拳が効くようで、数は少ないものの全員がその拳を振るっている。


「ナムアミダブツ!イヤーーッ!!」



「「「イィーヤーッ!!」」」



「なんかNINJA紛れ込んでねぇ?」



「案の定攻略班のメンバーらしいで。キワモノしかいねぇなあそこ」



「ネンブツを唱えながら全力で殴りに行く様はどう見ても真面目な僧兵。いいね?」



「「アッハイ」」



「アイターッ!?」



「あぁっすまん!誤射った!許して!」



「この距離で誤射ってマジ?」



「まだそんなLv高くないから補正低いのぉ!」



「ならヨシ!イィィヤァーッ!!」



「…何あれ」



「プレイヤーだよ。で、お前も上弦で盾貼るんだよな?時間考えないとだが」



「そうだった。あと…30ちょいか。準備しとこう」


 その数秒後には防御準備の合図がかけられ、今まで以上に防御面に特化したバフや戦技が発動されていく。


 そして残りカウント14、削っていた面々にも撤退指示が出かけた頃。その声は戦場に響いた。


「あらァ……♡近くで見るとずいぶん立派なコねぇ?で、も。なんだかとぉってもかわいそう…」



『ちょっ、ジェシーさん!?もう時間が無いですから逃げてください!』



「あらやだ、ワタシこの魔術の止め方がやっと分かったところなのよぉ?ま、何はともあれ実・践♡…はァ゛ッ!♡」



「俺は何を見ているんだ…?なんかシュ○ちゃんもびっくりなナイスバルクが桃色のオーラを発してるんだけど」



「視覚情報と聴覚情報が一致しねぇ…どう聴いても声は女なのに見た目が男、いや漢だ」


 そんな彼、いや彼女(?)が放つ桃色のオーラは二人が動揺している間に顔の無い人のような姿をとり始める。


 オーラがしっかりとした形になると彼女は凄まじい速度で頭上まで跳び上がり、一つの戦技を発動させた。


「さぁて、おねんねの時間よぉ?かわいい子犬ちゃん♡『ブレス・オブ・マザー』!」



「……!?oc、occ…?」



「えぇ、そうよぉ。ワタシがアナタのお、か、あ、さ、ん♡さ、素直になりなさぁい?」



「やべぇ、あの○タンドみたいなやつがハグしてる。てか言葉理解してるのかあの人…?」



「なんだろうな、声だけ聴くとオギャれる人はオギャれるんだろうが実際の絵面を見た瞬間にこう…ヤ゛ダ゛ー゛ッ゛!て言って憤死する人出てきそうな…」



「…あ、あぁ……ママーーッ!!」



「おい止まれテメェ!この局面でオギャりだすんじゃねぇ!」



「……見ろよ、アレが母性を求めすぎた末路だシオン」



「見たくなかったなぁ?…カウント止まってねぇ?」



「マ?…マジじゃん母性ってすげぇな」



「多分特例もいいとこ特例だと思うんだ俺」



「mewyy!mewyyyyrr!!」



「よしよし…♡我慢できてえらいわねェ…♡さ、お行きなさい」



「sl、uirry…!」



「あっ、消えてった」



「何この…何?俺達は母性の強さを見せられたのか?」


《RAID FINISH!戦績集計中…》


《放浪種死亡数 9216人》


《中隊長死亡数 0人》


《大隊長死亡数 0人》


《街の損壊率 8%》


《総合評価 S−》


《この後評価に応じた追加報酬が全参加者のアイテムボックスに送付されます。ぜひご確認ください》


『…わ、私達の勝利です!』



「うふ、根は良い子だったわねェ…♡」



「「「「「……お、おぉ…?」」」」」


 当然と言えば当然だが、ほぼ全員何が起こったのか理解が追い付かずにこのような声しか上げることが出来なかった。


 更にその後、またいつものように空が暗くなり魔王の姿が映し出された。


『ふむ…まさかここまで奮闘、しかもアガニを撃破するとは。少々貴様らの実力を侮っていたようだな』



「…【あ、また喋れなくなるのか。そういえばあのボスフルネーム分かってなくね?】」



【そうだったな。でも報酬かなんかで情報開示来るんじゃね?】



【あー、ありえるかも】



『まぁ、良いわ。これでデータもしっかりと取れたというもの。…些か異常が過ぎるデータも取れたが、放浪種のことだ。如何なる事態にも対処できるようなモノで無ければ今回のようになるということだと思えばどうということは無い』



【アレに関してはこっちも想定してないんだよなぁ…ジェシーさんだっけ?あのヤバい人】



【あぁ、掲示板で名前が出たりはしてたが見たのは初めてだったなあの人。見た人全員が困惑するのも理解出来たわ】



『さて。此度の侵攻はこれで一先ず終わってやろう。今回だけで終わると思うなよ?次は我が直々に出向いてやるかもしれぬなぁ…?楽しみに待っておれ。フハハ、ハハハハハ…!』



【次も何も、今回既に来てたんだよなぁ…】



【お忍びだったんだろ、戦闘もしなかったし。次は戦うんじゃないか?】



「…もう話せるようになってるじゃん。でも確かにそうか、次戦うって感じかー。って何だ?大量の鳥…?」



「あれはー、椋鳥か。最寄り駅の近くに大量にいたなぁ…いや今回その比じゃないレベルで数いるな」



「空埋め尽くされてねぇ?プレイヤーの数分いるとか…言いそうだなこれ」



「しかもなんか落としてないか、なんか光ってる白いのだけど」


 シオンが言うように、プレイヤーの頭上にまで飛んできた椋鳥集団の一羽ずつがプレイヤーに向け白く光る何かを落としていっているように見える。なおその見た目は集団に向かってフンの絨毯爆撃を行う空一面を覆う鳥という酷いものとなっている。


「親方!空から白光りする鳥のフンが!」



「うるせぇ誰が親方だ、五秒で受け止めろ」



「五秒と経たず降ってくるんだよなぁ!?あっ、あっ、グワーッ!……お?」


《レイド報酬をアイテムボックスに送付しました。そして只今をもってイベント『魔王軍、襲来!』を終了致します。それに伴いこの特殊フィールドからもあと三分で強制退出となりますのでご注意ください。最終結果は明日十時に発表となります》


「あ?っと。…アイテムボックスに吸い込まれてったな、ってことは今のがレイド報酬受け取り演出か。なんつー紛らわしい…」



「あ、見つけた。二人ともお疲れ様ー、今の凄かったわね」



「ノエルか、そっちも乙ー。まさかあんな演出するとは思ってなかったわ」



「それ。後衛隊はどんな感じだった?アガニだったかに向けてひたすら魔術放ってたってのは知ってるが」



「え、あー、なんて説明すれば良いかしら…私の近くではお嬢様と愉快な下僕たちみたいなのが繰り広げられてた、わね。うん」



「?????」



「おうフェイッターで使われる顔文字みたいなポーズとるのやめーや。そうしたくなる気持ちは分からんでもないが」



「私もアレが実際起きてたことかどうか疑問に思いたいわよ…そっちは?」



「前衛はー…うん、最後に母性の強さを知ったのと僧兵がNINJAだったことくらいか?あとプチべヘリ○ト、じゃなくてプチアガニか。アレ近くで見るとマジでヤバかった、SAN値削れそうだったし」



「あとあれだな、毛玉形態の時急にあいつの周囲が大炎上したことあっただろ?」



「あーー、あったわね。あれなんだったの?」



「コイツが例の爆弾ポイズンティアに向けてぶん投げたら鱗粉に引火、それが毛玉の出してた粉にも引火してあの惨事」



「……アンタかぁぁ!」



「すまない…燃やしてしまって本当にすまない…」



「本気の謝罪なのかどっかの竜殺しのアレなのかが分かんねぇなぁ?誠意見せろ誠意」



「エンコ詰めた方がいい?」



「回復するんだよなぁ…」

なんでレイドボスがオギャってるんですかね…?

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