60話 魔王軍、襲来! 9
寒さが厳しくなってきたような気がします、防寒しましょう。
「ryqglc!」
「『サークルタウント』、『ブレイクタウント!」
「あぁァァッ!!クソがぁ!」
「おい、後ろ!」
「あぁ!?後ろがなんだっ「mgqgg!」」
「ヒエッ…これがデュラハンの製造過程か…」
「言っとる場合かーッ!一人マミった!援護プリーズ!」
プチべ○リットが大量に現れてからの戦いは、それ以前よりも混乱に満ちていた。
その見た目と生まれた過程の醜悪さに戦意を喪失した者や、それを見て他を出し抜くチャンスと思ったのか単身突撃してあっさり取り囲まれ喰われる者。変わらずマトモに戦う者の方がまだ多いとはいえ、その予測の出来ない奇妙な動き方に翻弄されている。
「yfzzzz!!」
「ルヴィス、そっち向かったぞ!」
「マジでぇ!?マジだなぁ吹っ飛べ『豪破突』!」
「でかした、ハァッ!よしさっきの倒すぞ」
「つーかこれって本体に物理通ったりしないのか!?あの毛全部抜けてんだから耐性剥がれるとかあっても良いだろ!」
「そっちはもう結果が出てるな。剥がれたのは耐熱性だけ、他は健在だとよ」
「うーん近接メタがひでぇ!こいつらにそれが反映されてないのが、救いだけっ、どっ…ちょこまか動くなつってんだろ!」
「iiii…!」
『前衛隊に通達、どうやら無限湧きじゃないっぽいから段々数は減ってるぞ!この調子で減らしてけば俺達も本体をぶっ叩ける、気合入れてけ!』
「ほんとぉ…?あ、でも確かに本体から出てきてるのは無くなってる」
「さっきまで大量にいたアサスラとかが素体になってるんなら出る数に限りはあるわな。このままアレが再生産とかし始めなければ、の話だけど」
「また産み出したら今度こそヤバいと思うんだ」
「fsqyncim!!」
「うおぉ飛びかかってくんじゃねぇ!?これでも食ってろ!シオン!」
「せぁっ!…よし、これで全部か?」
「んーーー…そうっぽいな。あとはあの本体だけかね」
あの後なんとか全員が立て直し、最後の一体まで倒して残すは本体のみとなった。その本体も飛んでくる魔術などに歯を飛ばしたり炎を吐いたりと反撃を繰り返していたが、タンクの活躍により被害は抑えられている。
「mewyyyyyy!!!!」
「何だ?アイツから膜みたいなのが剥がれてったけど…」
『前衛に朗報、物理耐性も剥がれて攻撃しやすくなったみたい!接地までしてる今がチャンスよ!』
「なるほど、耐性が剥がれたのか」
「人が向かってるなぁ、俺達も早く行こう。結構離れたとこまで来てたみたいだ」
「だな。残り体力どんだけなのか分からんが多分あと半分、それか三割くらいだろうし」
「でもこのままタコ殴りにして終わりってことは流石に無いだろうなー。反撃の一つや二つして…来てるな、触手で」
「目からもレーザーっぽいの出してるな。つーかこんなようなのどっかにいたな、名状しがたい者の目とかなんとかって名前の」
「懐かしい、あれ最高難易度だと便利なの落としてたよな」
「てなこと言ってる間に近くまで来た、ぞぉっ!?この距離でも感知してくるのか!」
「げぇっこっちにも来るの!?『ハードノック』ァ!よっし叩き落とせる!」
「ぶった斬った方が良さそうでもあるが、そんなこと言ってられないか。…改めて近くで見るとデカいな。どれくらいのサイズ何だアレ」
「この距離でこの大きさだと…直径五十メートル余裕で超えるんじゃねぇかな?」
「よく分かるなお前」
「そりゃ今クソ適当に言ったし?…だから待って、どっかの三丁目にいそうな料理人が包丁持ってる時みたいな顔で剣を向けないで」
「誰のせいで…何かしようとしてないか?」
「え、何が?…あー、ホントだなんか膨張し始めてってマズくね?タンクの人達が守り固め始めてるけどなんとかなるか?」
そのまま一.五倍程も膨らんだそれは、充血しきった全身の目という目から紫混じりの血のような液体を放出した。攻撃によって潰された目からは出ていなかったが、いくらタンクと言えどもこのように液体によって攻撃されては完全に防ぎ切ることが出来ず、他のプレイヤー達にも飛沫が飛んでいく。
余裕を持って避ける方が多かったが、油断しきっていたプレイヤーは当たったらどうなるかを周りに示すことになる。
「うわっ、なんか手に飛んでアツゥイ!?てか痛ぇ!」
「すっげぇ俺の近くからシューシュー言ってるんだけど何が起きてるの?焼き肉?」
「オメーの装備が融けてんだよ!俺のもだけどって毒ぅ!?マジかよ欲張りセットか!?」
「毒消し使ってもまたすぐ毒るんだけどお!!あっ死ぬ」
「サヨナラ!」
『今のを見て分かったと思うが、装備融かしたり素肌に付いたら毒らせたりするような液体だ。絶対に触れるなよ!』
「最初っから微塵も容赦しないなこのイベント」
「しかも触れるなって言うのは分かるが、例の液体アレの周りに池みたいに溜まってるんだよな。俺ら近付けないぞ」
こうなると近接職は再び遠距離によって削れていくのを見ているだけになってしまうのだが、それでは納得いかないとばかりに各々がスキルに備わっている遠距離攻撃戦技や本職に劣るとはいえ取得した魔術、それも無い者は石を投げるなどしてダメージを更に与えていく。
当然反撃はされるのだが、触手であれば待ってましたとばかりに迎撃を、目からのレーザーは死亡覚悟で気合避けするなどで対応という荒業で対処する。
そして誰かが放った魔術が最後まで残っていた目に命中。完全に視界を奪うことに成功すると、傷だらけの全身でも唯一傷が付かなかった口部分に変化が起き始めた。
「llyyyiiiiir!!」
「…歯無くなってない?さっきまで飛ばしても再生してたし、目潰し切ったのがフラグか?」
「ついでに言えば周りにあった血溜まりが消えてってるな。でも地面に消えてる訳でもないだろうし、なんかエフェクト残して消えてもない。吸収でもしてるのか?」
「とりあえずまた少しずつ近寄れるようになってるけどさ、なんか口の向き明らかに調整してるんだよなアイツ。こう、なんつーの?直径を確実に取るような向きにしてるみたいに」
「あー…なんか分からんでもないな。っておいそれ一番駄目なやつじゃねぇか?流石に隊長格も気付いてるけどさ」
シオンの言うように、口が向きを変えるのに合わせて全員がそれを真正面から受け止めるように移動を始めている。
合間合間に攻撃も飛んでいるが、それが動きを止めることに繋がってはいない。
そして大きく開かれた口に赤黒い魔法陣が形成されたことで、大半のプレイヤーが「これもしかしなくてもゲロビぶちかますつもりでは?」と理解した。そしてその予想が正しいことを無情にもアナウンスが知らせる。
《FINAL FASE!死の間際に放たれる戦術級魔術の直撃を阻止しましょう。特定の攻撃を与えることによって威力が減衰する可能性があります!発動まであと120、119…》
『見えたわよね!できる人は全員総攻撃!カウントが30になったらタンク隊とバッファー、デバッファーは全力防御の準備、それ以外は残り10になったら退避!』
『ってことだ。もう血溜まりも見えねぇんだ、特定の攻撃が何か分からんのがアレだがとにかく叩け!』
戦闘描写やっぱり苦手です…技量が欲しい




