48話 新機能?
本腰入れてやってないゲームに運が吸われまくる現象ってどう名付ければいいんですかね?(それにより過去数十敗)
突然だが話は遡り現実時間で一週間程前、リリース初日に奏夏達が課題を消化するために部屋に向かった後のこと。
「……よぉし、行ったわね。これでやっと出来るー、アイツは並んだみたいだけど私は別の店で予約してたもんねーっと」
先程とは打って変わって嬉しそうに声を弾ませながら、奏夏の姉の御月綾芽は読むために積み上げた本に挟み隠していたファトゥムオンラインのパッケージをいそいそと取り出す。
奏夏は知らなかったが、実は綾芽もかなりのゲーム好きである。それこそ根強い人気を誇っていた十数年前からあったVRではないMMOで一年以上ランキングトップをキープし続けていたような者である。課金も僅かにしたようだが、それはどうでもいいことだろう。
そのMMOも現在はサービス終了し、何か代わりになるものが無いかと探しているときに綾芽はこれを発見。気づいたら予約していた。
「で、機器はここ。チップをセットしてー、よし完璧」
準備がほぼ完了した機器を持った綾芽は、自室に直行してそのままベッドに仰向けになる。仰向けになるまでの倒れ込む少ない時間でヘッドホンとゴーグルが一体化したような形状である機器を頭に装着することも忘れない。そしてそのままの勢いで―――
「ダイブ」
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「…なんかさ、数増えてなかった?気のせい?」
「バレ、た?」
「おぉい、マジで増えてたのかよ……あと背中になんか刺さってるんだけど」
時は戻り検証場、そこでは情報量の暴力とまではいかないが遠くはない光景が広がっている。
まず某鉄の華の団長のようにうつ伏せになり右手に剣を持ち倒れているルヴィス、そしてその上に歯車製のふわふわと浮く椅子に座っている子供形態のリーネス。なおそのうちの脚一つの角がルヴィスの背中に当たっている。
そしてそれをスクショするシオンと見ているうちに暇になり座ったまま昼寝するノエル。もっとも、ノエルは支えにしていた腕から顔がズレた事により今目が覚めたが。
「うっ、首が…あれ、寝てた……?」
「十分くらい前からな。よし、いい感じのが撮れた」
「おい待てシオン、予想はつくけどどういうことだ」
「その予想通りのこと。これは永久保存版確定、って程でもないけど残しとくか」
「わぁい黒歴史」
「止まったお前が悪い」
「あれって何年前のネタなのよ」
「それはさておき、ルヴィス、あがった?」
「上がったって、あぁ『危険察知』のことか。あれなら10に上がったよ、あとそろそろ背中からどいて欲しいんですけど」
「ん、わかった。…えいっ」
要望通りリーネスはルヴィスの背中から脚の角を離した。
……ただし、結構な勢いをつけてというあんまりにもあんまりなおまけ付きだったが。
「あ゛あ゛ッ゛!!?」
「リーネス、その椅子浮いてるから勢いつける必要無かったよな?」
「……?」
「あっかわいい」
「首傾げてあざといポーズしても隠しきれないんだよなぁ…ノエル、脳死でスクショするな」
「むぅ、シオンにはきかなかった。もとのすがたならわんちゃん?」
「あの本性垣間見たらノーチャンだわ」
そうしているうちに悶えていたルヴィスが復帰した。とは言え立ち上がるときに腰辺りを押さえたままだったため、まだ痛みが完全に消えたわけでは無いのだろう。
「まだ痛ぇ…背骨にヒビ入ってたりしないよな」
「状態異常欄に情報載ってたりしないか?骨折してたら確か表示されるはずだ」
「そこまでのつよさでやってないから、だいじょうぶ。HPはへってるかもだけど」
「どれ…うん、確かに骨折どころかヒビすら入ってないっぽい。HPが一割くらい削れてるけど」
「結構なダメージじゃねぇか。つかそろそろ戻ってこい」
「……………」
あざとさにやられたノエルの意識を戻すために、シオンが剣の鞘で小突きながらそう言う。
しかし時折リーネスを見ながら考え込む彼女にはその程度では届かないようで、次第にシオンがハリセンでしばくような叩き方にしかけて止める回数が増えていく。今は理性が勝っている証拠だが、このままだとどうなるかが目に見える。
「くっ…こんだけやって戻らないってどういうことだ」
「んー…リーネス、ちょっと耳貸してくれ」
「りょーかい」
すると、未だにシオンが小突き続ける横で二人は何やら短時間話し合い、その後二人して悪い顔をしながらサムズアップをした。
「何企んだんだよ」
「まぁちょっとした事だよ。リーネス、いけるか?」
「おっけー。じゃあ、やる」
そうして何かを実行しようとしたその時、ずっと小突かれていたノエルがようやく気付いた。
「さっきから一体何がぶつかって…シオン、何で私の頭を?」
「お前がリーネスのあざといポーズにやられてたからだよ。数分前からやってるわこれ」
「だから妙に最適化されてるの…で、ルヴィスはなんでそんな残念そうなのよ」
「え?いや何もないけど。ちなみにリーネスが謎の構えしてるのはシオンが何か企んでたからっぽい」
「へぇ…?」
「おうしれっと責任転嫁してんじゃねぇよド外道」
「おまいう」
酷い擦り付け合いである。そしてこれをしているうちにノエルはリーネスに何かを頼み込み苦い顔をされていた。
「ぜったい、かんりにんにたのむことじゃない…」
その翌日。いつものようにレミアから頼まれた素材を集めていると、通算三回目となるワールドアナウンスが突然響き渡った。
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《あるプレイヤーが規定条件を達成したため、兼職機能を本実装致します。詳細はヘルプその5〜職関連について〜をご覧下さい》
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「兼職…?複数の職に就けるってことか?」
「そうだろうな。えー、ヘルプヘルプ…下の方に情報が追加されてるな」
「んーっと?兼職とはその名の通り複数の職に就くことが可能になる機能です。するための条件は……」
要約すると、一定のLvに到達するとそこでその職でのLvは打ち止めするが、兼職を使い他の職―――剣士から槍士など―――にすることで再び上げることが可能になる機能だ。
当然Lvは1からではあるが、ある程度のステータスや種族スキルはそのまま引き継がれるため、元よりは多少早くLvを上げることが出来る。ただし狩場が適正Lv帯より上すぎると当然のように死亡率が跳ね上がるため、極端なパワーレベリングは不可能であるらしい。
「そして兼職により解放される職も存在しますが、そちらは自力でお探しください…と」
「なるほどなぁ。あ、兼職可能なのは最大六職までって載ってる」
「一つだけじゃないんだな。てことはこの先当然のように合計Lv300とか出てくるんだろうか」
「インフレが加速しそう……って程でも無いのかしら?どれかの職をリセットして他の職にして、スキルとかをリビルドする事も出来るみたいだし」
「これまた個性が出てくるな。まぁ、まずは今の職でカンストをしなきゃいけない訳だが」
「今気になったが、これ誰が達成したんだろうな?やっぱアルバトラズって人か?」
「いや、違うらしいわよ?今攻略掲示板確認したけど、本人が違うって」
「じゃあ誰が…あ、達成した人?が情報提供してた。えーっと、アゲートさんか」
「どんな人なんだろうな?誰も知らなかったっぽいから生粋のソロプレイヤーなのかね?」
談議しながらも採取を続けた三人は、その道中で出た敵なども倒しつつ頼まれた分を集め終えた。
余談 いきなり登場したアゲートさんの名前の元について
宝石のファイヤーアゲートからです。実行力の向上、願望の実現、生命力アップなどの活動的なパワーが秘められている石だそうですよ?なのでスポーツやってる人などにはオススメです




