47話 特訓(拷問)
掌握戦行きたかったのに行けませんでした(全ギレ)。全ては外そうにも外せない用事ぶち込みやがった上司が悪い
「んで、結局あれからずっとあんなだったのか?」
昼食時、疲労困憊といった様子でテーブルで溶けているシオンにルヴィスはそう聞いた。シオンはその問いに顔だけを上げて答える。
「歯車は途中で四つに増えて、その後で『危険察知』生えたから更に増えた…」
「でも、ちゃんとさばいてた。あのちょうしならまだふやしてもだいじょうぶ」
「って言ってるけど?」
「死ぬ」
酷く簡潔な答えである。なおこの短時間でシオンが使っている剣の耐久値はかなり減ったらしく、あと一割あるかないかという程らしい。
「あ、今思ったんだけど、ルヴィスって『危険察知』のLvはどうなったの?カンスト?」
「いやー、それがまだ上がんないんだよな。ずっとLv9止まり」
「まぁそんなもんじゃないかな?はい、今日のお昼」
「おー…おいしそう」
「…余分に作っといたから、足りないなら自分でよそってね」
昼食を食べ終わってからのこと。ルヴィスは少しアイテムボックスに溜め込んでいた果物の皮などを包んだ物をゴミ箱に放り投げた。これといった狙いも無い、入ったらラッキー程度の下投げである。
「さて、また結晶を投げる作業やるかぁ……おっ、入っ」
★ルヴィスはスキル『投擲』を手に入れた。
「たぁ……ぇ?」
「あ、たおれる」
「うおぉア゛ッッッ!?痛ゥゥ…」
「何やってんだこいつ」
「さぁ?ゴミ箱になんか捨ててそれが入って、そのまま後ろに倒れてったけど」
「なんだい今の音、はー……?またなんかネタムーブかましたのかい?」
「かんたんにいえばそう、かも?」
「いってぇ…コブできたか?じゃなくて。遂に『投擲』ゲットしたんだよ!」
「お、やっとか…おい待て、もしかして今のでか?」
「そうっぽい。確かに結晶だけを投げなきゃいけないとは無かったけど、このタイミングで来るとは」
『投擲』は普通ならとても取りやすい部類のスキルである。何せ目標と定めたものに今持っているものを手当たり次第投げてヒットさせるだけなので、そこらの石だろうがゴミだろうが取り敢えず何でも拾ってポイポイしてるだけでも取れる。
ルヴィスは何を勘違いしたのかただひたすら自前で壊れやすい結晶を作り投げていたので、やけに時間が掛かったのはそのせいでもあるだろう。
「でも最初は戦技無いんだったか?3だか5辺りでやっと出るらしいが」
「ちょい待ち。あー、確かに今のところ戦技は無いな。スキル持ってりゃ投擲する時に補正かかるみたいだけど」
「とにかく取得できて良かったじゃない?それで、これからはどうするの?」
「どうするか?あー、そういう。何すっかなぁ…」
「ルヴィス、それならシオンがやってたこと、やってみる?」
「んー?…分かった。どうするかなぁ、他のスキレ上げるか?それとも……」
「決まるまで時間掛かりそうだなこれ。そういえばノエルはLvいくつになったんだ?俺は50で、そろそろ51だ」
「こっちは今51ね。……夜中に出るやつってやっぱり経験値も多いのね、改めて実感したわ。とは言っても、50からまた上がりにくくなってるみたいだけど」
「……?まぁいいや。やるらしいし、じゅんびしとこ。〘解放〙」
「うーん、多分だけどやっちまったねぇルヴィス君…まぁいいや、ポーション補充しよっと」
そして数分後、ようやくルヴィスの中でやりたいことが決まったようだ。
「よし決めた。…リーネスは何故戻った状態で俺の近くに?」
「何故って、シオンにやってたことやるから。さっきも肯定してた」
「……え?待っていつ返事したっけ?いや別にやる分には構わないけど」
「お前がさっき考え始めた辺りで返事してたな」
「まぁじでぇ?あーー、でも確かになんか返事した気がするぞ?」
「とにかく、早くやる」
リーネスがそう言うや否や、ルヴィスの身体に輪っか状の物が三つ巻き付いていった。腕と指の付け根、膝辺りを拘束したそれはやはりと言うべきか小さな歯車が噛み合って構成されている。
そうしてほぼ身動きが取れなくなったルヴィスは、僅かに抵抗するがそれも無駄に終わり、少しだけ地面から浮いた状態で検証場に連行されていった。
「あれ、拘束具としても使えたんだな」
「助けようって気には……まぁ、ならないわよね多分」
「アイツが言ったことだし?というかあれを外せる気がしない」
「それもそうね」
「…その鎧だっけ?」
「そう。今思ったんだけどこの世界って、あんな感じのがどれくらいいるんだ?」
「アレは……内緒。私が知ってるかもしれないし、未知の存在…イレギュラーなのかもしれない」
「まぁ、そう簡単にネタバラシはされないか。んで、俺の場合っていくつのを相手取れば良いんだ?」
「九」
「……マジ?それ現状でやれるもんなの?」
「○イム○ルター無しでも、ルヴィスくらいのLvで『危険察知』Lv9ならなんとかなる、はず」
「その元ネタどんだけ前のだ…?あの愉悦神父はバケモンだと思、じゃない。ホントに大丈夫なら良いんだけど、当たったらどうなるよ?」
「良くて掠り傷、打ち所が悪いと…前が見えねェ?」
「顔面陥没かぁ…」
なおリーネスが振ったネタをどちらも知っているルヴィスもルヴィスである。
「じゃあ、行くよ?」
「お手柔らかァッ!?マジかよいきなり来るのかよ!」
完全に準備しきれていないところへの凄まじい速度の不意打ちであったが、正面からだったため辛うじて剣を振り抜き受け止める。
ギャリギャリと火花を散らしながら弾き飛ばしたは良いものの、隙だらけになってしまった所に別の大小様々な歯車も襲いかかる。
「イィッヒィーー!?やっべぇもげるもげるもげる!!」
「そこまでの威力じゃないから、安心して。…聴こえてない、かな?背後からもやっちゃえ」
「もげねぇよ現実見ろ現実って後ろォ!?〈魔晶よ、ここに在れ〉『クリスタルクリエイト』そぉい!!」
「わお、凄い速さの詠唱。これなら、気兼ねなく全方位からやれるかも?」
「人間ってあんな動きできるんだな。というよか『危険察知』であの挙動になってるのか?」
「いやぁ、どうなんだろ…?あ、『鬼化』10にしたら上位スキルになるらしいわよ?」
「へぇ、でも流石にそうだよな。他の人間以外の種族でも確認されてるらしいし」
「ンアァァちっこいの避けづれぇ!でかいの重い!フェイントがヤバい!!」
「ふふっ、楽しい…!」
「…アイツ生きてられんのか?」
「確かここで死ぬことは無いってレミアは言ってたけど…実際どうかは分からないわよね」
「よし、最悪尊い犠牲になって貰うか。先人の知恵無くして発展はほぼ不可能だろうし」
薄情を超えて鬼畜である。種族的には鬼なので間違ってはいないのだろうが。
「オイ今の聴こえたぞシオンァ!意地でも死んでやらんからなぁぁ待って死ぬ死ぬ死ぬぅ!」
「いくら見てても面白いの卑怯だと思うんだ俺」
「うーーん、この悪魔」
「それはお前だろ?」
「いやそういうことじゃないわよ。絶対分かってて言ってるでしょ」
大体のスキルはLv10になると上位スキルに進化します。たまにLv自体無かったりあるけど10より上が上限のスキルもありますが現状ではまだ珍しいようです。もしくは未確定
『投擲』に関しては本文でもありましたがルヴィス君の本気の思い込みによるガバで取得が遅れてます。でも作者もこういう系のやったら多分やらかす自信があるんですわ




