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43話 俊足の菌糸類

37話のステータスに計算ミスがあったので修正しました。それぞれ攻撃力が2、運が1、敏捷が6下がりましたが本編にさしたる影響はありませんので読み直す必要は特に無いです。

「何か…?いやまぁ、クエストを受ける理由が金欠ってくらいしか無いけども」


 当然嘘である。そもそもルヴィスがシオン達以外のプレイヤーに話す気が無いというのもあるが、このような状況で隠している情報などをゲロる者などほぼ皆無だろう。


「クエスト受けるやつなんて大体金欠だろうよ。……本当に何も無いのか?例えばあの緊急なんちゃらとやらの報酬の情報とか」



「逆に聞きたいんだけど、もしそういうので他のプレイヤーとかにめっちゃ有利になれる何か、例えばユニークスキルとかを入手したとして大人しく掲示板とかでゲロるのか?そんなのがこの世界(FO)にあるか分からないけども」



「それが支援系のスキルだったらまぁゲロるだろうな。というかMMOである以上は攻撃系スキルであれ他者との連携とかの為に共有は必要だろう?終身名誉ソロプレイとか知り合いとしかやらないんなら話は別だが」


 アーティの言う通り、MMOである限りはどこかしらで初対面の人と共闘する場面は出てくる。勿論秘匿したい場合はそれでも良いのだが、それを主力として戦う場合は隠すことは不可能だろう。


 その点で考えれば、ルヴィスが隠しているのは憤激の薔魔人やリネア達が関わる情報、主力で使う気は無い『結晶魔術』など別に隠していても問題無いものが多い。『月剣術-守』も主で使っているとはいえ、種族によるものなどを使えば特に問題はないだろう。


 「というか俺が何か隠してること前提で話してるっぽいけど、マジで何も無いぞ?」



「そうか…まぁいいや、正直に話さなくても良いって言ったのはこっちだしな」



「じゃあ、改めてクエスト行くか?確かパヨk「パロク高原だからな?」…パロク高原に逃茸があるんだっけか」



「色々危なかったがそうだな。ここが街の東の方だから、ちょうど向かいやすいぞ」



「なるほど、…ところで、ここはどう抜け出すんだ?」


 今二人がいるのは人一人いないような路地裏で、マップを見ても現在地のマーカーで道がよく分からないような場所である。


 アーティもマップを開き十数秒見ていたが、やがて何かに気付いたような顔をしてハッキリと宣言した。


「分かんねぇ!そもそもここまでどういうルート辿ったか覚えてねぇや!覚えてたりしないか?」



「いや知らないのかよ!?俺は知ってる道なんだろうと思って任せてたんだけど!?」



「ってこーとーはーー……」



「あぁ。道覚えときゃ良かった…」


 現在正午を告げる鐘が鳴る少し前、ルヴィスとアーティは迷子になった。







「よっ、と!アーティ!」



「『クリティカライズ』、『ツインヴォーパル』!」



「ブゴオォォォ……!」


 出口を求めて彷徨うこと一時間。ようやく抜け出せた二人はロステマの東にあるパロク高原で討伐対象のモンスターを倒しつつ、少しづつ素材も収集していた。


 たった今倒した相手は草豚魔(グラスオーク)という、草に紛れやすい色の表皮を使い擬態して獲物を襲うモンスターである。


 実のところ体格的な問題で全く擬態出来ていないのだが、それを無視できるほどの身体能力を持つために厄介視され、討伐対象になる事が少なからずある。


「おっ、肉だ肉だ。これで晩飯が豪華になる」



「やっぱり美味いのか?大体どんなとこでもオークって豚みたいな扱いされてるし」



「おうよ、しかもこの肉はレアドロだからちょっとした贅沢品として人気なんだぜ?ほれ、向こうにもいるだろ?」


 そう言ってアーティが指差す方を見ると、そこでは四人パーティが草豚魔を慣れた手つきで倒していた。しかしドロップアイテムに肉が無いと判断すると即座にまた別の草豚魔を探しに移動した。


「…大体があんな感じなのか?」



「まぁ、どこも似たような感じだな。たまに肉寄越せって欲が強過ぎて威圧みたいになってるやつもいるけど、ごく一部にしかいないな」



「うわぁ…ん?あれって逃茸か?あそこにあるやつ」



「お?そうそうあれだ。んじゃあ、楽に採るための秘訣をお前に教えよう!」



「……?あぁ、そんな事言ってたなそういえば」



「忘れてたのかよ…まぁいい。この紙に書いてあるとおりにやってくれ」


 取り出されたのは四つ折りにされた紙で、開くとそこには"逃茸の捕まえ方"と言うタイトルと共に分かりやすい説明が載っていた。


 それを読み込んだルヴィスは、本当にこんな方法で出来るのだろうかと思ったが、本人が自信満々にしているのでこれで良いのだろうということにした。


「読んだな?じゃあ、指定の位置についてくれ。」



「オッケー。…………よし、いけるぞ」



「了解。三、二、一…せーのっ!」



「「はっ!」」


 逃茸には逃げ足が速い事以外にも、逃げている状態で捕まった場合は諦めたかのように大人しくなるという性質を持っている。


 そのため直後に縄で縛るなどの対策も考えられたのだが、器用に抜け出してしまうなどして結局失敗に終わっていた。


 今回アーティが発案した方法も縄を使い縛るという点では同じであるが、逃茸の性質を利用したある物を取り付けたのだ。それは―――


「えっ嘘こんな力強い感じなの!?『鬼化』!」



「逃げ足だけじゃ、無いってことなんだろうよ!生存するためとはいえやり過ぎだとは思うぜ!」



「ぬおおおぉぉ……お?なんかだんだん抵抗する力が弱くなってきたな」



「っし!これで魚籠もどきでのお手軽採取法の実践成功!」



「ぶっつけ本番だったのかよ!?」


 今回縄と合わせて使ったのは魚籠(びく)と呼ばれる物で、本来は釣った魚を逃さないように入り口に網とそれを締めるための縄が付いている籠だ。


 アーティはここから着想を得て、網を布に変えて巨大化した物を使ったのだ。どうやらぶっつけ本番ではあったようだが、それでも上手く行ったので本人は満足そうである。


「そういえば言ってなかったか?ま、成功したから良いだろ!」



「逃げられたらどうするつもりだったんだよ…」



「そりゃ必死こいて追い掛け回すんだよ。というかそれがメジャーな採り方だし」



「…もしかして、推奨敏捷値的なのもあったりするのか?」



「まぁ、あるにはあるな。確か90くらいあれば初動に対処出来て、本格的に追いかけるなら115以上とかだ。バフかけりゃ推奨未満でもなんとかなるけどな」



「なーるほど。アーティはどんくらいなんだ?」



「俺か?種族とかも込みで、150ちょいってとこだな。お前は?」



「俺は120くらいかな。今の装備が代わりのやつってのも関係してるけど」



「へぇ、やっぱ元の装備はあの戦いで?」



「それ知ったところで意味無くないか?てかこんな話してる場合じゃないわ、下手したら日が暮れる」



「引き出せなかったか。でも逃茸問題もどうにかなったし、後はぼちぼちやってこうや」







 その後も順調に討伐や収集をしていき、残すは穴土竜(ホールモール)を一体討伐するだけとなった。


 このモンスターもまた厄介で、穴をそこかしこに掘り散らかして簡易的な落とし穴を作ったり、どこから出てくるのかを分からなくさせて奇襲するという攻撃を多用する。


「また潜ったぞ!ルヴィス、いけるか!」



「オッケー、『タウンティング』!」



「………ギイィィィィ!」


 ルヴィスが戦技を発動した状態で左手の盾を剣の柄で打ち鳴らすと、その盾からヘイトを集める効果が持つ赤い光が発せられる。そして数秒後、アーティの背後にあった穴から穴土竜が飛び出して襲い掛かった。


 穴土竜の奇襲は、地中にいる時点で一番ヘイトが()()相手への攻撃である。そのため、潜ったら後衛などは迎撃の準備を、タンク役はヘイトを集める戦技を発動して待機するという対策が取られる。


 全員が一箇所に集まるという手段もあるが、迎撃しようとして他人とぶつかってしまい結局失敗する例もあるためあまり使われることは無い。


「背後!」



「よし来た!『ラウンドエッジ』ィ!」



「ギュオアァ!?」



「止め、『憤鬼撃』!」



「ギェェェ…」


 本来地面と水平に攻撃するものを跳んで体の軸ごとずらすことで地面と垂直に放たれた『ラウンドエッジ』で打ち落とされた穴土竜は、怒れる鬼の如き一撃によりその命を絶たれた。

ぶっちゃけ筆者は松茸よりもえのきとかエリンギの方が好きです。別に香りがあったところで味が…って感じですし


何故ルヴィスに剣と盾があるのかと言うと残っていた金で間に合わせの物を購入したからです。そのため残額は三万あるかないかってところです。

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