42話 足りない物
遂に1万PVを突破しました。これからもよろしくお願いします。
「さて、これ以外にも防具もどうにかしないと…いっそ新調するか?」
剣の作成依頼をした後、ルヴィスは軽鎧以外の防具も新調してしまおうかと考えていた。
前に使っていた物は憤激の薔魔人との戦いで破損一歩手前までになってしまったため修理をして貰おうかとも思っていたのだが、どうせなら新しくしてしまおうという考えが今になって出てきたのだ。
「ん?アンタ、防具の事で悩んでるのか?」
「あぁ、はい。今胴以外に装備してるのは間に合わせのやつなんですよ」
「なるほどな、道理で歪なわけだ。…どうする?修理ぐれぇなら俺も一応出来るが、新調するとなると他のやつを当たった方がいいぞ。俺も作ってはいるが、アミザっつー優秀な防具を作れるやつが他にいるからな」
「なるほど。燕子花さんはどっちの方がいいと思います?」
「それは修理しようと思ってる防具の壊れ具合にもよるな。今出すことは出来るか?それで判断する」
「分かりました。……これです」
ルヴィスがアイテムボックスから取り出した防具を見ると、燕子花は一つ一つを手に取って確かめていく。だがそれもすぐに終わり、ため息混じりに再びカウンターに置いた。
「こいつぁ駄目だわ。修理したら評価が下がっちまうレベルでぶっ壊れてやがる。買い直しだなこりゃ」
「そんなに…」
「こっからそこまでの道は分かるか?分からんならルート教えるが」
「多分分かる、と思います。じゃあその店に行きますね」
「おう、だが気を付けな。アイツの作る防具はプレイヤーにもNPCにも人気だからな、今日中にどうにかしようとしたら…って事もあるぜ。今の時間帯ならちょうど開店直前だろうが」
「…急いだ方が良さげですかね?」
その問いに対する答えは縦方向への頷きだけであったが、それを見たルヴィスは走って店を出ていった。
「あ゛っ」
アミザというプレイヤーが主となり経営する、様々なプレイヤーやNPCから人気の防具・服飾専門店のキャメロ商店。その中で一人とある一式装備を前に硬直する男がいた。
その視線は値札とメニューの現在の所持金が表示されている場所とを行ったり来たりしていたが、やがて溜息をつきながらメニューを閉じた。
「しまったなー…足りねぇ」
彼―――ルヴィスの目の前にある一式装備の値段は三二万、対して彼の所持金は八万弱と全く足りていない。その理由は彼のレベルにある。
「くっそ、前だったら適正のやつ…足りてないな。あれでも一式纏めてだと十五万前後だったし」
昨日までの彼のLvが32だったのに対し、今現在のLvは54。これは攻略班と呼ばれる半死半生の魚の様な目をしながら一日中戦闘やスキルの検証をしている廃人集団の平均より少し下ほどであるため、割と高Lvではある。
なお、三二万というのはあくまで軽戦士用装備の値段であるため重戦士だと更に上がり、ルヴィスがちらっと見ただけでも四十数万だったのが分かっている。
「これはー…しばらくは大人しくクエストやった方がいいか。よし、ギルド行こう」
こうしてルヴィスは金策のためにギルドに行くことにした。
「えーっと?今のランクで受けれるのがここらへんか」
そう言いながらルヴィスは複数受注しても大丈夫そうなクエストを選んでいく。彼が選ぶのは比較的手っ取り早く、かつ報酬もそこそこ良い討伐クエストと、討伐ついでにそのフィールドで集める事も可能である素材収集クエストである。
そうして選んでいき、最終的に二つの討伐クエストと三つの収集クエストを受けることにした。今はちょうど昼間なので、夕方までには終わるだろうという考えのもとである。
「んー、これくらいだな。討伐ついでに投擲とかもゲットできれば良いけど、まぁ期待しない方がいいか」
「なぁなぁそこの鬼の人、一人でそんな沢山クエスト受けて大丈夫なのか?」
「ん?」
突然掛けられた声に振り向くと、そこには笹状の細長い耳を持ち、腰に二振りの短剣を下げたエルフの男がいた。パッと見た印象としてはどことなく軽い雰囲気である。
「あぁいや、お節介だったら謝るよ。ちょっと警戒されてるっぽいし?」
「いや、別に大丈夫だけど…これって複数人の方がいいのかな?」
「どのクエストもそうではあるけども、どれどれ?……鬼の人、今のLvは?」
「え?あー、54…?」
「いやなんで疑問形なんだよ。でもそうか、そのLvなら何とかなる、か」
「多分な。まぁこの数でも夕方までにはどうにかなるだろうよ」
「おいやっぱり待て」
ルヴィスが終わらせようとしている予定時間を零すと、エルフの男は肩を掴み引き止めた。
「その中に一人だとかなり時間かかるっつーかほぼ無理ゲーなやつあるからな?今日の夕方までとか普通に間に合わんレベルの」
「マジで?この中のどれだ?」
「そのLvで知らないのか…まぁいい。これだ、逃茸ってやつの収集クエ。キノコなのに逃げ足が超早いから一人だと逃げられるばっかでどうしようもないぜ?多人数でも怪しいが」
そう説明された逃茸は食用として好まれており、ほぼいつでもクエストが受けられしかも報酬も良いということで一部の間で話題になった。
しかし、エルフの男も話したように触れた瞬間凄まじい勢いで逃走され、結局捕まえることが出来ないという事態が多発したためにあまり手を出されなくなったのだ。
「うわ、それは面倒だな…これはやめとくか」
「まぁ待ちなって。実は俺、コイツに逃げられることなく採ることが出来る方法を知ってるんだ。掲示板にも流してない情報だぜ?」
他の人に聞かれないようにしたのか、男は小声でそう言う。ただ、本当にそうなのかどうかが分からない以上はそれを鵜呑みにする訳にも行かない。
「ホントかぁ…?」
「ホントホント、ここで嘘こいたって意味無いだろ?ってな訳でさ、俺と一緒にやらないか?報酬金は全部お前ので良いからよ」
「そこまで言うなら…まさか、初めっからこのつもりで?」
そう言いながらもクエストの受注をしていき、ついでに二人はパーティを組むことにした。
「あ、バレたか。でもまぁ逃茸が一人だと無理ゲーなのは事実だから。んでもって俺はアーティ、レンジャー兼アタッカーって感じだな、よろしく」
「あー、俺の名前はルヴィス。避けタンク兼アタッカーかな?よろしく」
この時、ルヴィスは昨日あった出来事がワールドアナウンスとして全プレイヤーに知らされていることを完全に失念していた。つまりどうなるかと言えば―――
「あぁ、………なぁ、名前をなんて?」
「え?だからルヴィ…あ、やっべ」
「マージかオイ。いやその前に場所変えるぞ、他のやつに聞かれたらアンタも面倒だろ?」
そう言ってアーティはルヴィスを連れて人通りの少ない場所まで移動し、そこで深いため息をついた。
「はぁぁぁ…で、だ。ルヴィス、で良かったな?」
「あぁ。…聞きたいんだが、俺って今どういう扱いなんだ?何となく察しはつくけども」
「とんでもないやつとエンカウントしたのに何故か生き残ったやべーやつ、もしくはクソ強NPCのどちらかだな。まさかこんな形で一人正体が判明すると思って無かったけど」
「あー、まぁあれは運が良かったからな、なんとか死なずに済んだんだよ」
表面上は冷静に答えるルヴィスだが、内心では重要な情報をうっかりゲロったりしないように緊張しまくっている。
「ほーん…まぁいい。じゃあこれは正直に答えなくてもいいが俺からも一つ、何か隠してないか?」
段々他のプレイヤーとの接触が増えていきますが、ルヴィス君は様々な情報をゲロらずにいられるのでしょうか




