36話 帰還
お盆休みですが投稿ペースは変わらないと思います。
それはそれとして口内炎って恐ろしいですよ。何せ口開いただけで激痛、何かを口に入れたら呻くレベルで痛いですから…
「うーん、特に何事も無いって暇だねぇ」
「いや、こちらとしてはこれ以上何かあると困るんだけどな…」
「それもそっかぁ。いくらレベルが上がったとはいえまだアレは使えないしね…トランプ的なのって持ってたりしないかな?」
「暇な時に木の板削って作ったそれっぽいのが確かあったような……ロミナもやるか?ルールは教えるから」
憤激の薔魔人を撃破したルヴィス達は、軽い戦闘こそあったもののこれといったイベントも無くロステマに入るための人々が並ぶ場所まで進んでいた。
リネアは何も無かったことが若干不満ではあったようだが、ルヴィスの事を考えると戦闘になるのはそこまでメリットが無い。
ということで結局、待つ間はルヴィスお手製のトランプやらオセロモドキやらで遊んで暇つぶしをしていた。その間初めてやるはずなのにとんでもなくロミナが強かったためにルヴィス達が若干凹んだりという場面もあったが、それ以外では特に何も無かった。
「…はい、大丈夫っすね。次の人どぞー」
「あーい。さて、ロステマに着いたからここでお別れだね。ロミナ君もここに着けば大丈夫なんだっけ?」
「そうですね。ルヴィスさん、リネアさん、護衛してくださりありがとうございました。これ、どうぞ」
____________________________________________________
ユニーククエストクリア!
達成報酬
・3000G
・ランダムスキルブック
・邪花木薔薇の真蕾
また、このクエストをクリアしたことにより黄ランクのクエストを5つクリアしたと見做されます。
____________________________________________________
そう言われアイテムボックスに自動収納されたのは、パッと見古臭く、しかし重厚な本と本来倒すはずだった邪花木薔薇のレアドロップである真蕾であった。
「ランダムスキルブック……ランダムスキルブック!?こんな貴重なもの良いのか?」
「はい、僕のお師匠様が持たせてくれたのですがどうにも重たくて……迷惑じゃありませんか?」
「いやいやいや!むしろすっごい有り難い!まさかこんな良いものが貰えると思ってなかった。真蕾まであるし、これなら新しい剣もすぐ作れるよ」
「そんな凄いものだったんですねその蕾…では、僕はお師匠様のところに行ってこの絵を見てもらいます!」
「おう、良い結果になると良いな。じゃあこれでホントに解散?お別れ?だな。リネアも、また会えるといいな」
「ホントはここで会うべきじゃ無いんだけどねぇ。ま、君も無茶しないようにしなよ?見てる分には楽しいけど死なれるとこっちも嫌だしね。それじゃ…」
「「「お疲れ様 (でした)!」」」
「さて、確かここおおぉぉ!?」
「うわーっ!ホントに生きてたぁ!よっ、よがっだあぁぁぁ……!!」
「ぬあぁあ!待って、ここ一応路上だから!街の人とかに見られるから!中、中入ろうか!?」
帰って来たと思っていたらいきなりレミアに大泣きされながら無事を確認されるルヴィスだったが、どうにか店内に入る事ができた。その途中で再び『癒神の息吹』を三連続で使われたりもしたが、心配をかけたのは確かなのでそのままにしておいたようだ。
中に入ると、そこには若干安堵の表情が浮かぶシオンとノエルがいた。二人もルヴィスの事を心配していたのだろう。
「おう、遅かったなルヴィス。マジで死んでなくて良かったわ」
「そうそう、プレイヤー初の死亡者がリアルでの知り合いになるなんて最悪の事態にならなくて良かったわ。まぁ、どのプレイヤーにも実際に死んで欲しくは無いんだけど」
「あーー……あぁ、なんつーか、ごめんな、俺が勝手にやった事で心配かけちまって。俺もこうなるなんて思ってなかったんだぜ?…っ、あ」
そこまで言うと、ルヴィスは急に腰が抜けてしまったかのように座り込んだ。
「おい、どうした?やっぱどっかにどうにもならん怪我でもしたのか?」
「そんな筈ある訳ないじゃないか!?『癒神の息吹』は全状態異常、全欠損を完全回復した上更に自己回復力まで増幅させる魔術で……!」
「あぁいや別にそんな大したことじゃないから。してたかもしれない怪我もさっきので全部治っただろうし」
取り乱すレミアに対してそう言うルヴィスだが、未だに立ち直ろうとはしない。いや、表情を見るにしたくても出来ないのだろう。
「じゃあ、なんで…?」
「まぁ、アレだ。俺がこんなこと言うと思ってなかったけどさ……生きて、ここに帰ってこれたんだなって。その実感が湧いた瞬間力が抜けたんよ、ははは…」
ルヴィスはなんとか笑おうとしているが、実際は少しずつ涙が溢れ始めていた。いくら圧倒的な強者が協力してくれたり暇つぶしに遊んでいたりしたとはいえ、自分がいつ本当に死ぬのか分からない状況下にいたために過剰な程張り詰めていた緊張の糸が今ここで切れたのだろう。
床に両腕を付きながら話してはいたがそれも限界のようで、とうとう仰向けになってしまったが、それを情けないと笑うような者はこの場にいない。死んだら本当に死ぬ状況で自分と三倍ものLv差がある敵に強制的に一人で挑まなければならない恐ろしさが、何となくではあるが伝わるのだろう。
「うあぁあ………!」
「……しばらくそっとしとくか、精神的に疲れてたんだろうし」
「あわわ…こういうのに効くポーションとか探さなきゃ」
「しなくても良いと思うけど。そこまで過保護になる必要も無いでしょうし、まぁすぐ元通りになるんじゃない?」
「うおぉめっちゃ恥ずかしい……そうだ、戦利品確認をしよう!」
「どっからその発想に至ったのか分からんけど、確認してなかったのか?」
「それどころじゃなかったからなぁ……えーっと、多分これかな?」
まだ目元が赤いが、その恥ずかしさを紛らわすようにルヴィスは戦利品と思しき物を取り出した。肉のような色味の葛籠サイズであるその物体は、よく見ると僅かに蠢いているのが分かる。
「うわ何そのうぞうぞしてる、箱?なの?よく素手で持てるわね…」
「いや割と持ってるだけでもキツいわこれ。微妙に蠢いてるのが余計に開ける気失くす謎仕様だからなこの箱っぽいナニカ。しかも多分あと二つ同じのがある」
「とにかく開けてみたらどうだ?手突っ込んだら中身掴んで引っ張り出すだけみたいだし」
「え、これ開けるタイプじゃないのかよ…ええいままよ!うへぁ生温かい!?あ、なんかあった」
掴んだ物をルヴィスが引っ張り出すと、その手は明らかにその中には収まりきらないだろうというサイズの武器を掴んでいた。
全体に茨のような装飾が施されたそれは、ある一部を除けば俗に言うハルバードのような形状をしている。
「これは、ハルバー…いや何この、何?どうなってんだこれ」
「うーん。見た感じ持ち手が中心にあって、片方はハルバードでもう片方が…これはスネークソードみたいな感じになってるね。真ん中で分離させることは出来るみたいだけど…何というか、実際にこれを使おうと思う人はいるのかって感じの残念な見た目だけど」
「というかたしかスネークソードを使うなら剣術じゃないスキルがほぼ必須だったような。最初に選べた蛇剣術ってやつ」
「確か、無くても使えないわけじゃないけどスキルは発動できないし、持ってる人に比べたら攻撃の威力も下がるんだっけ?ルヴィスにとっても私達にとってもコレって外れじゃないかしら…」
憤薔の戟蛇剣という名前らしいこの武器は、確かに物理攻撃力の高さや装備時重量軽減などのパッシブスキルは攻略班が使っているような武器よりも遥かに高性能なのだ。
しかし当のルヴィスは勿論、他の面々も戟術や蛇剣術などのスキルを持っていないため、四人の中では実質ハズレ武器となってしまった。
「な、なんてこった…いや、まだあと二つ残ってるんだ!何かしら当たりはある、はず!よっしゃ次だ!」
リネアはあの後更にビーフジャーキーを追加補充して再び業務に戻ったようです。また憐れなクソザコプレイヤーが犠牲になる……!
あと説明されてませんが生温かい葛籠っぽいナニカは憤怒ノ戦箱という名前のようです。しれっとシオンが『鑑定』を使って開け方などを確認していました。




