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32話 少年は望む、禍々しき薔薇の蠢きを 6

タイトル名のガバと話数ガバと設定ガバが積み重なり最強に見える。



すいませんでした。気付いた限りは全て直しましたので爆死だけは勘弁してください

「ほらほら、テンション上げていかなきゃ。それで本気なんて言わないよねぇ?」


 薔薇野郎を挑発しながらもさっきより加速した、文字通りギアを上げたような動きでネリアは攻める。それに紛れて俺も脚に本当に僅かではあるだろうがダメージを与えていく。


 予想してはいたが、やはり薔薇野郎が纏う赤黒いオーラはその濃さを増す度にステータスも増加するようだ。ガードした時に削れるHPが少しずつ増えていく事でそれが分かった。というか普通キレてる奴って防御が疎かになりやすいはずなのにコイツはむしろ硬くなってる気がするんだが?


「小娘がァ…!『縛リ喰ラウ魔蔓ノ怒リ(シール・ロヴァスーラ)』!!」



「さっきとほとんど変わんないじゃん舐めてんの?『ブラストグラウンド』」


 薔薇野郎が人型に変化してすぐ俺に使ってきた『縛レ魔蔓栄光ヲ(シール・グローリア)』の強化版みたいなのが出てきたが、それは見飽きたと言わんばかりの表情で砲剣を地面に突き立てトリガーを引く。


 発射された魔砲弾は地面に着弾し、その衝撃を周囲に向けて炸裂させる。それによって地中から飛び出す筈だったであろう蔓も地面と共に吹き飛ばされ、ネリアの周辺が歪な円形に抉れる。


「うーーん、脆くない?もうちょっと頑丈に出来ないの?例えばアンタの脳…あっごめん、それだと筋肉ムキムキの蔓になっちゃうね」



「我を侮辱するか貴様ァ!ッ、『反怒ノ暴盾』!『排撃(リバース)』ウゥァ!!」



「またそれぇ?あーでも今のはいい感じかも。まぁ…4点?」


 不意打ちで放たれる魔砲弾にも対応してカウンターを成功させる薔薇野郎だが、それもド辛辣な評価と共に地面から生えかけた蔓が対象を捕捉することもなく消し飛ぶ。


 というか俺が脚に与えるダメージ、やっぱり減ってる気がする。一回攻撃したときに付く傷跡が段々小さくなってる。取り敢えず欲張ろうとはせずにすぐ距離を取ってまたどっかで攻撃しにいこう、雨垂れ岩を何とやらってやつだ。





「グッ……蝿の如く動き回りおってぇ…!」


 二十分?二十五分?それ以上経過しただろうか。その間ずっと薔薇野郎はネリアに翻弄され、俺は何度か被弾して死にかけたりもしたが一度だけ転倒させることに成功した。


 やはり直立二足歩行は伝家の宝刀(膝カックン)に弱いようで、『朧突』と『豪破突』を右膝裏に連続でヒットさせたらバランスを崩せた。後は全力で姿勢を立て直すのを妨害すればすっ転ぶ。ね?簡単(クソ難易度)でしょ?もう二度とやりたくねぇわ、その間も殺意モリモリな攻撃してくるから割とマジな走馬灯が見えかけたぞ。


 とは言え散々ネリアに挑発されながらボコされた薔薇野郎は今や赤黒いオーラが鎧のように全身を覆い、唯一外から確認できる目だけが怒りと憎悪で相手を殺せるのではという位禍々しく輝いている。


「一度その蝿に転ばされたのはどこの誰なんだろうね?そんな奴がいるなら見てみた…あっ、ゴメン君のことだったかぁ!」



「ここまで辱められ、我の怒りを踏み躙る貴様を生かすなど断じて許さん……!本気で殺してやるァ!!」



「ネリア、流石にこっから先舐めプするのはもう不味いんじゃないか?薔薇野郎もマジギレしてるし」



「だーいじょぶだいじょぶ、こっちもそろそろ()()()()()()でやるから。武器一つだけって逆にやりにくいんだよね、っと!」



「タワーシールド…?なんで―――」


 突然だが瞬きにかかる時間を知っているだろうか。そんなこと考えたこと無い人の方が多いかもしれないが、一回につき大体0.1秒らしい。なんでそれを聞いたのかって?簡単なことだ。


 瞬きしたらネリアが構えてた盾に右拳を叩きつけ拮抗状態にある赤黒騎士…騎士?がいた。恐らく、というか間違いなく薔薇野郎なのだろうが見た目が全く違う。俺こんな暴力的なイメチェンアピール知らないよ?


 鎧のように纏ってはいたが少し輪郭がボヤけていたオーラは全身鎧にはなっているのだが、ガントレット部分だけが異様にデカく刺々しくなっている。俺なら掠っただけで挽肉に変身出来る自信があるレベルだ。


「へぇ、剣より拳って感じ?まぁどっちにしろ効かないけど、ねっ!」



「オラァア゛!!」


 死ぬ程声が聴き取りにくくなった薔薇野郎の拳がいなされると、今度は使っていなかった方の拳を地面に叩きつける。すると、ネリアの方に向かって凄まじい勢いで茨の壁が襲い掛かっていく。


「やっといい感じになってきたねぇ!じゃあ私からもプレゼント。『滅焦刃』!」



「あっっっづぅ!?」



「あ、君だと多分コイツにダメージ与えられないと思うんだよね。避難しといた方が良いと思うよ?攻撃の余波でも下手すりゃ死にかねないだろうから」


 確かにそうかもしれない。今ネリアが飛ばした燃える斬撃みたいなの、少し離れてても熱湯に触れたみたいな熱さを感じたんだがそれを飛ばした先にある茨の壁は途中までしか斬れてな……あ、爆発して消し飛んだ。でも熱でそうなったというより衝撃でそうなったように見えた、耐火性持つ植物とかヤバすぎない?


 正直八つ当たりもアイツがすっ転んだ時点で満足はしている。欲を言えばもうちょい何か出来ないかとも思うがあの状態でダメージを与えられる気がしない。情けない気がしないでもないが無駄に意地張って死にたくもないからロミナが絵を描いてた辺りまで逃げておく。


「そういえばあの燃える斬撃…漢字が分からんな。あれはどこか、ら……マジで?」



「そらそらもっと楽しもうじゃないか、『フレアカタラクト』!」



「ウ゛ル゛ゼエ゛ェエ!!」


 なるほど今までが慣れない戦い方というのも納得できる。何せ今のネリアは武器を周囲に浮かせる形で複数展開して、それらを全て達人のような動きで扱い攻撃している。その武器も剣に槍に、あれは鉄鞭だったか?とにかく多種多様だ。


 さっきの砲剣だけは背負っている状態だが、その分の重量を全く感じさせない動きで何となく口調が変わった気がする薔薇野郎の拳を弾く避ける反撃する……彼女はどれだけ廃人じみたレベリングをしたのだろうか、同じプレイヤーとは思えない動きだ。


「よっしゃ今度は殴り合いだ、つっても私はか弱い女子だからコレ(三節棍)を使わせて貰うけどねぇ!『鳳虎戦舞』!!」



「か弱い……?っつぁぁあっぶ!?」


 思わず口に出したら浮遊してた武器の一つがとんでもない速度でこっちにかっ飛んできた。いや見た目ピコハンでヒット時の音も完全にピコハンなのに地面が人一人分くらい陥没してるんだけど。何この殺人おもちゃ…


 というか拳と三節棍だと後者の方が扱い的に不利な気がするのだが、それすらも楽しんでいるのだろうか。ラッシュを全て弾き返し、途中でどこからともなく生えてくる茨は周囲の武器が排除する。まるで無双ゲー終盤の主人公みたいだぁ…


「よっし野球の時間だアンタがボール役ね!『アッパーインパクト』ぉ!」



「バグュッ!?」



「ヒエッ」


 吹っ飛ばされ方は正にホームランだろう。だが狙う場所がまさかの股間だ、どう考えてもゴツいハンマーでフルスイングしていい部位では無いと思う。薔薇野郎にそういうモノがついてるかなんて知りたくもないけど。


 見てるだけで伝わる痛みに思わず内股になっていると、突然ネリアは今まで出していた武器を全てどこかに消し、代わりに最初に使っていた鎌を取り出した。


「そろそろ終わりにしようかなー、長引いたところでいいことあまり無いからね。『死ヲ振ルウ冥府ノ黒鉄(レテ=パンドカロニス)』」


 その瞬間、世界が闇に呑まれた。

未だにネリアの事をプレイヤーだと思い込んでいる主人公くん、いつになったら流石に違うと気付くのか

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