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20話 灯台の下を月光で照らす

大奥を探索することもなく輝くアイドルのプロデュースに勤しむ人がいるらしいですよ?

「何の光ィ!?」



「うわ、急にどうしたお前。月光浴びて発狂とか暴君の親戚じゃあるまいし。あと記憶にズレが発生してるぞ」



「そんなことより職が変わってるわよ?なんか凄そうな感じのに」


 蒼い月の光を受けて月剣人(ルナ・セイバー)月魔術士(ルナ・キャスター)になった三人は、ステータスを確認してみることにした。


「おぉ、スキルが『月剣術-守』になってる。……防御とかカウンター特化なのかな?」



「どうなんだろうな。でも確か剣道とかだと守破離とかいう修行の段階みたいなのがあるらしいから、それかもな」



「私のも『月魔術』が追加されてるわ。でも元々覚えてた火と風の初級魔術は消えてないから、派生じゃなくて完全別枠っぽいわね」


 更に色々と確認していると、今まで三人が忘れかけていたレミアが声をかけた。


「確認もいいけど、取り敢えずここから帰ろうか。まぁまた目隠しをしてもらうけどね」



「目隠しをするのはいいけど、ここってセリフォトのどこらへんなんだ?なんとなく普通なら来ることもできない場所な気がするけど」



「それは秘密。でもまぁほんの少しのヒントくらいなら。ここに来るには色々無理難題をこなす必要があるってことだけは教えよう」


 それだけ言うと、レミアは三人が目隠しをつけたことを確認して、また同じルート(ルヴィス達には分からないが)を戻り家に帰った。


 レミアはなんとなく後ろを見て、確かに刑罰を受ける犯罪者みたいだと思ったが、口には出さないようにした。





「さて、ここからは少しでもスキルLvを上げるためにまたリメヌ山に行こうと思うんだけど……あ、『不眠加護(スリーププロテクト)』はいらないからな?いやガチでやるなら必要かもしれないけど」



「いらないと思う気持ちも分からんでもない。マンティコア・ブラッドを更に強烈にしたみたいな感じで眠気はあるのに眠くならないとかいう訳分かんない状態になるし」



「あれにはちょくちょくお世話になったわ……てかシオンも飲んでたのねあの魔血薬」


 レミアは何のことかは分からないようだが、とにかくヤバい物とだけは分かったようだ。


 と、ここでノエルが何かを思い出したようで、そのまま言おうとしたが結局やめるという行動を数回繰り返した。


「どうしたんだいノエルちゃん?行く前にも何か言おうとしてたみたいだけど」



「あ、えーっと、その…皆に聞きたいことがあるんだけどさ……」


 その言葉にマンティコア・ブラッドの話で盛り上がっていたルヴィスとシオンもそちらに意識を向けたところで、ノエルが再び口を開いた。


「私達……私は他のも使えるから厳密にはルヴィスとシオンなんだけどさ、その『月剣術-守』だっけ?のスキル使ってるところを他のプレイヤーに見られたらどうするの?最大三十人……逆に言えば三十人いても一発で突破できるのか分からないレイドに三人で挑むのは無茶よ?」


 その言葉にノエル以外の三人はしばらく考え、その可能性を微塵も考えていなかったことに今更気付いた。


 プレイヤーなら『鑑定』かそれに準ずるスキルは恐らく持っていないだろうと思っていたこともあるのだが、ルヴィス達三人は他プレイヤーとは違う特殊なスキルを使える。


 ノエルは『初級魔術(火・風)』を使えるためまだ誤魔化しがきくのだが、問題はルヴィスとシオンだ。この二人は『初級剣術』が完全に消えて『月剣術-守』に変わってしまっている。


「更に追加よ。もしルヴィスかシオンが避けタンクみたいな事をしたとして、三人で突破しちゃったらプレイヤー全員が私達に注目するでしょう?その場合どんな追求が来るか分かったもんじゃないわ。使ってたあのスキルは何だ?とか、他にも色々ね」



「………あれ?俺ら参加するの強制的に無理じゃね?」



「だな……すまん、完全にそのことを見落していた」



「私からも謝るよ……というか、下手したらここから先イベント全部無理じゃないかい………?う、うわぁああぁぁぁ!ホントごめんね三人ともおぉぉぉ……」



「いや、このイベントが終わって特殊職の存在が次のエリアで知られるようになればまだチャンスはあると思う。まぁ、賭けみたいなもんだけど……」



「………取り敢えずスキルLvだけでも上げて、レイドは不参加。恐らくこうするしか安心してここで生活するルートが無いんだが、それで賛成か?」


 シオンの言葉に、ルヴィス達は頷いた。三人とも本音を言えば上位報酬が欲しかったためこの決断はとてもしたくなかったのだが、最悪の場合を想定するとこうするしかなかった。


「これで他のプレイヤーに実は既に特殊な二次職になってます、ってやつがいたら……いやどっちにしろかぁ」



「まぁ、この際すっぱりと諦めて観戦側に回ってみればいいんじゃないかなと私は思うよ。ずっとレベリングしてるよりかは精神的にマシだろうからね」



「それもそうだな……よし、取り敢えずどんなスキルがあるか確かめよう。さっきまで寝てたからそこまで眠いわけでもないし」



「それもそうね。レミアさん、私達は検証場行ってくるけどあなたは寝たほうがいいんじゃない?」



「私なら大丈夫さ。普通の人ならともかく、私とかの管理人は意図的に眠気を遮断することが出来るからね。あ、あと検証場にカカシを追加しといたよ!このカカシは敵としての判定もあるから攻撃系スキルがホーミングするかどうか分かって便利だと思うよ!」


 またとんでもない事を言ったような気がしたが、やってくれたこと自体は特に問題があるわけでは無かったため三人はありがたく使うことにした。





「流石は特殊な二次職、強い」



「語彙力少なすぎないか?いやまぁ確かに強いが」



「まさか身体系バフに実質落下ダメージ無効化出来るものがあると思ってなかったわ……デメリットの方が大きいけど」


 試した結果、Lv1の時点でもかなり便利なスキルがあったようだ。と、そこにどこかへ行っていたレミアも検証場にやって来た。


「どんな感じだい?『月魔術』は私も使えるからどんなスキルがあるかは知ってるけどね、『月剣術-守』にどんなのがあるかは知らないんだ」



「『月魔術』も使えるのか……まぁいいや。とりあえず見てもらったほうが早いかな」


 そう言ってカカシと向き合ったルヴィスが発動したのは『一ノ剣-新月』。このスキルは攻撃時に低確率で相手を盲目状態にさせる効果がある……らしいのだがカカシ相手ではよく分からなかった。追加効果として、新月の日に発動すると威力と盲目の発生率が上昇するらしい。


「にしても、思いっきり相手の目の部分を狙って斬りつけてるのに盲目になるのは低確率ってのも不思議な話だけどね。ダメージは……なるほど、これなら盲目狙わなくても普通に使えるスキルだね」



「別に目の部分を狙わなくても良いんだろうけど、なんとなく確率が上がりそうだから目に向けてやってみた。多分戦闘時に目を狙うの無理だと思うからやらないけどね」



「じゃあ次は『月魔術』だけど……Lv1だと『月落(ルナ・フォール)』と『星弾(スター・バレット)』の二つだっけ?」



「その様子だと効果も知ってそう……でも一応使いやすいのよね、使い道が限られてくるかもだけど」


 『月落(ルナ・フォール)』は対象の重力を六分の一にするというスキルで、落下ダメージを防ぐ用途でも使えるのだが、走るたびにふわふわとした動きになるため微妙に使いづらいようだ。


 『星弾(スター・バレット)』は他の魔術でも最初から使えるバレット系の魔術だが、他と違って弾がある程度相手をホーミングするという便利なスキルになっている。威力もバレット系にしてはそこそこあるため、割と頼りになる魔術であるようだ。


 するとここで、レミアが何かを思いついたようだ。


「今思いついたんだけどさ……」


 三人はまた嫌な予感がしたが、まずは聞いてみることにした。

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