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18話 全力

「よし、ノエルも落ち着いたし『深淵魔法』がどんななのかってのを説明してもらおうと思うんだけど……」


 ルヴィスがそう言ってノエルに視線を向けると、先程落ち着かせるために口に突っ込んだリゴを脇目も振らず食べていた。食べ終わるまで待とうかとルヴィスとシオンは考えていたが、ノエルがこちらの視線に気付き、大急ぎで食べきった。


「え、えーっと?なんの話だっけ?けぷっ……」


 最後のに関しては二人は聞かなかったことにした。本人もとても恥ずかしそうにしているので、何も言わぬが吉だろう。


「あー、『深淵魔法』についてのことだ。どんな魔法があるのかってのを知ることができれば戦いやすいからな」



「『深淵魔法』かぁ…どんなのがあるかって聞かれると大分説明しにくいのよね、アレ。多分見たほうが早いと思うわ」



「なるほど、じゃあ適当なところで見てみるか。でもまぁ外はもう暗いし……」


 そう悩んでいると、一階の方から夕食だから降りてきなー、とレミアが言うのが聞こえてきたので、取り敢えず明日適当な場所で見てみようという事になった。





「じゃあ、よろしく」



「オッケー。『魔族化』!」


 ここはアニスの森の開けた場所。街のすぐ近くにちょうど良さそうな平原はあったのだが、肝心の敵がいなかったため、ここが実験場所になった。この時ルヴィスとシオンは検証場の存在を完全に忘れている。レミアが不憫だ。


 それはさておき、ノエルの『魔族化』が発動すると、薄浅葱色の髪の間から、少し捻れた角が二本伸びてきた。見た目は完全に悪魔のそれである。ついでに髪と同色だった目も金色に変わった。


「おぉ、めっちゃ強そう……いやまぁ実際強いんだろうけど」



「標的はあのゴブリンで頼む。足止めもしとくぞ、ルヴィス」



「あ、それなら必要無いわよ。というか、どんな感じなのか見たいんでしょう?」



「それもそうだな。よし、少し離れておくぞ、シオン」


 そうしてルヴィス達がノエルから数メートル斜め後ろに避難すると、同時にノエルも詠唱を始めた。ゴブリンは未だに三人に気付いていないが、その数を三体に増やした。


「〈闇より深く、光の全てを喰らい尽くせし深淵よ。汝は我が敵を滅する槍となり、何もかもを貫き穿つだろう。〉覚悟しなさい!『深淵ノ滅槍(アビス・イヴォール)』!」


 闇の色よりも更に濃く、終わりの見えない奈落を彷彿とさせる色をしたパルチザンのような形状の槍が一本、ゴブリンに向かって飛んでいった。


「グギィ!?ギ、ググギゲゲゲェァァ……!!」


 一体のゴブリンに突き刺さった槍は、その形を球状にしながら刺さった対象を呑み込み、膨張していく。その様子を見て何が起きたのかも分からず身動きを取れなかった他のゴブリンも呑み込まれていき、最終的に直径五メートル程の球体になった。


「こんなもんね。『崩壊(バースト)』」


 更に追加でノエルがそう言いながら指を鳴らすと、突如としてその球体は爆散した。その衝撃で周囲の木々が砕け、へし折れ、吹き飛び、残ったのはすり鉢状に抉れた地面と半径数メートルの森だった部分である。


「ふぅ。どうよ?思わず本気出しちゃったけど、大体こんな感じね」



「………エグい性能の魔法だなぁ。これ、使ってもらうときは全力で退避しないと巻き込まれるぞ?」



「大丈夫大丈夫、普段はそんな全力でやらないから。……まぁ、これ使う機会があったのって本気でやらなきゃダメなときばっかりだったけど」



「普段使いするならもうちょい弱めのやつを使ってくれ。で、だ。この惨状をどうするよ?」


 シオンが指差す先にはプレイヤーが見たら事件だと思いかねない光景が広がる。当然だが修復されることは無いだろう。


「あーー………どうしようね?何か案はない?ルヴィス、シオン」



「いや、俺達に聞かれても。でもまぁ、どうしようもないよなこれ」



「ノエル、お前はなんか思いつくことないのか?俺としてはいっそ落とし穴的な……マジか」


 シオン以外の二人が惨状から目を逸らしながら話し合っていると、突然抉れていた地面から直径一メートル程もある芋虫のような何かが現れた。


 その芋虫は辺りを見回すような動きをすると、うねるような奇妙な動きをした。すると、散乱していた土などがそれの下に集まり始め、そのまま抉れていた地面を修復した。


「お、おぉ……凄いな。もしかして、普段からこんなような事をしてるのか?コイツは」


 そのままシオンが呆気にとられながら見ていると、取り敢えず良しとしたのだろうか、モンスターはそのまま地面に潜って消えていった。そして現れた場所も何故か既に修復されている。


「シオン、計画が…………えぇ……?」



「どうしたの……よ…この短時間でもう落とし穴作っちゃったの?早くない?」



「いや、俺じゃない。俺じゃないんだが……あれは何だったんだ?修復モンスター?っぽいやつがあっという間にこの状態にしてくれた。しかも一切音を立てずに」


 ルヴィスとノエルは、シオンが幻覚でも見たのかと思うような事を言い出したので多少心配したが、説明されるうちになんとなくだが理解する事はできた。


「へぇ、そんなやつが…でも木は戻らないんだな」



「こっちでも自然は大切にって事だろうな。……さて、これからどうする?リメヌ山でも『魔族化』とか込みでの戦闘の確認とかするか?」



「そうしましょうか。しばらくの間は連携の練習とかが主になりそうね」


 その後、三人とも種族スキルを発動した状態での連携や何らかの理由でメンバーが減ったときの対処法などを確認すること数日後。その日はレミアに素材集めを手伝って欲しいと言われ、さぁ行こうと思った瞬間に、聞き慣れない音をルヴィス達は聞いた。


「ん……?」



「どうしたんだいルヴィス君。なんかあったかい?って、みんな立ち止まってるじゃないか。ホントに何があったんだい?」



「あぁいや、なんか電子音?みたいなのが急に聞こえてきたから……何だったんだ今の」


 ノエルも何があったのかとメニュー欄を開いて色々な機能を確認している。それを見て、レミアは何かを思い出したようだ。


「おぉ、君達プレイヤーが来てからもうそんなに経ったっけ。それは数日後にイベントが始まる事を知らせてるんだと思うよ。どんなイベントかは見てのお楽しみさ!」



「マジか、この状況になってもイベントってあるんだな。まぁ飽きが来ないってのは良いことだけど。さてさて、どこにその通知が……」



「見つけたわよルヴィス!メニュー欄の右上に小さくお知らせって書いてある項目があるじゃない?そこをタップすれば見れるわよ!」


 いち早く見つけたノエルの言葉に従い探してみると、確かに目立たない色の枠でお知らせと書かれた場所があった。それを開いて見てみると、そこにはこんな事が書かれていた。


____________________________________________________


新イベント開始のお知らせ(NEW!)


遂に新エリアに続くダンジョンを金ランク冒険者が発見しました!それに伴い、新エリア開放レイドバトルを開催します!


※レイドバトルでのルールをこれから説明します。

1.レイドバトルでは、最大三十人で一つのパーティ(レギオン)として戦闘に参加することになります。当然高難易度の戦闘になりますので、準備等は万全の状態で挑むことを強く推奨します。


2.一度レギオンが敗北しても、次のレギオンが一定時間以内に再挑戦をすればある程度HPが減った状態から戦闘を開始できます。ただし、一定時間を過ぎれば再び最初からとなりますのでご注意ください。


3.最終的にレイドボスを討伐し、その時点で部門別貢献度が高かったプレイヤー上位三名は特殊報酬を獲得出来ます。貢献度は、どれだけダメージを与えたか、どれだけ味方をサポートしたか、の二部門から判定されます。なお、悪意を持ってレギオンの味方の妨害をしたプレイヤーにはペナルティがありますのでご注意ください。


さぁ皆さん、全力で頑張りましょう!

____________________________________________________

ルヴィス達三人は既にレミア薬局を家と呼んでいるようです。だからどうしたって話ですが

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