15話 リメヌ山にて
「む、そろそろかえらなきゃ」
「すっごい急に言い出すねリーネス。なんかあった?」
シオン達がクレーマーに遭遇してから二日後、リーネスは急にそう言った。
話によると、管理漏れが出てきそうなのでそろそろ帰ってきて欲しいと部下から連絡が来たらしい。
「てことで、きょーじゅうにはもどるつもり。あ、でもまたこっちにくることもあるとおもう」
「それは良かった。これっきりってのもなんか寂しいからな」
「どうするよ?見送りパーティー的なのでもするか?」
「なるほど、いい提案だねシオン君。じゃあ早速準備しよう!」
そう言って張り切るレミアを見て、ルヴィス達は意外そうな顔をした。
「……ど、どうしたんだい二人とも。何故そんな意外そうな顔を?」
「いや、パーティーの案に乗っかると思ってなかったから。出会い頭に口喧嘩してたし」
「むしろ食料の為に早く帰ってくれーって言うと思ってた」
「あ、あれは取り乱してたから口喧嘩してただけでだね……そもそも私はリーネスのことそこまで嫌ってるわけじゃないからね?」
「ふーん、まぁいいや。じゃ、パーティー用の料理とか作るか」
「ん、すごいのをきたいする」
「任せてくれたまえよ!……また食材集めに行かないとだなぁ」
レミアが遠い目をしながらそう呟いたが、気にしない様にしてルヴィス達も料理の準備に取り掛かった。
「ん、だいまんぞく。これならしごともがんばれそう」
「それは良かったよ。なにせ食料庫にあったもの三割くらい使ったからね、ハハハ……」
「「(目が死んでいる…)」」
見送りパーティーも終わり、もう少ししたらリーネスも戻るそうだ。すると、何かを思いついたかのようにリーネスは立ち上がってルヴィス達の前に来た。途中で元の姿に戻っていて、何か重要なことを言うのかもしれない。
「多分これからも遊びに来るかもしれないけど、私からのプレゼント。大事にして」
そう言って二人に渡されたのはチェーンネックレスで、ペンダントトップとして小さな歯車が一つ付いている。幅一ミリほどの鎖部分にもよく見ると細やかな装飾が施されている。
「おぉ、ありがとう。失くさないように早速つけとこう」
「何か効果があるわけじゃないけど、一から丁寧に自作した。この世に二つしかない特別品」
「それは凄いな。俺もつけとこう」
「おぉ、人に物をあげるなんて珍しいじゃないか?そんなところ滅多に見たことないのに」
「………まぁ、この二人が私にとっても特別な存在だから。これくらいはしなきゃ」
そう言いながらそっぽを向き、じゃあまたね、と言ってリーネスはどこかに消えていった。
「またなー。………にしても、改めて考えると凄いことだよな、これ」
ルヴィスがネックレスを見ながらそう言った。
「まぁそうだな。普通のプレイヤーがこんな特別な物貰ったら即晒し者だろうし」
「だろうねぇ。キミたちもどうにかして隠しといたほうが良いと思うよ?外に出しといたらなんかの拍子に壊れる危険性も無いわけじゃないし」
「じゃあ、服の中に入れとこうかな。そうすれば見えないだろうし」
「俺もそうするわ。…よし」
二人が貰ったネックレスの問題(?)もあっさり解決したところで、今日は何をしようかという話になった。
また最深部でLv上げをしようかと二人が思っていると、レミアから一つ提案された。
「んー、君達のLvだと最深部でもそこまで苦戦しないんじゃないかい?いっそのことリメヌ山にでも行ってみたら?」
「あー、確かにそれも良いかも。でも人が沢山いるだろうしなぁ……」
「『鑑定』で称号見られたりしたら困るな。どうにかしてバレないようにしとかないとだ」
「あぁ、それなら簡単さ。称号をタッチして非表示にすれば『鑑定』でも見えなくすることが出来るよ。犯罪系の称号は隠せないけどね」
言われた通りに二人が"管理人の友人"と"魔術応用の親"を非表示設定にして互いに『鑑定』をかけると、本当に称号が見えなくなっていることが分かった。
「これで安心だな。よし、行こ「回復薬の予備は大丈夫かい?」う……下さい。十五個くらい」
「はい、500Gね。ありがとう」
「締まらねぇな……」
「さて、取り敢えずリメヌ山の麓に着いた訳だけども……」
「やっぱりプレイヤーが結構いるな。この状況でLv上げできるか?」
「うーん、人の少ないところ………が無さそうなんだよなぁ。今のLvだと奥の方に行くのはハイリスクだし…」
「まぁでも、適当に見たこと無いもの探したり集めたりしてフラフラしてたら遭遇するだろうよ。行くぞ」
シオンの言う通り、見た目は化石の様な植物などの見たことが無い物も沢山見つかった。
中でも、桃によく似たチモの実を発見できたのは二人にとってもありがたいことだった。何せリーネスに今まで集めていたほぼ全ての木の実(といってもリゴくらいしか無かったのだが)をあげてしまったので、自分達が食べる分が不足していたのだ。
「そいでもって当然、初めての敵もっ、出るわけでっ!」
「誰に向けて話してえぇぇっ!?背中の岩飛ばしてくんのかお前!?掠っただけで腕が死にそうだ!」
二人が戦っているのはロックタートル。甲羅部分に大きな岩があり、更に防御力も高いため普通に戦う分には剣士だと相性が悪いモンスターだ。
しかもこのロックタートル、危険を感じると背中の岩をふっ飛ばしてくるおまけ付きである。
「いやでも、岩が無くなった今なら倒せ……甲羅もちゃんとあるのかぁ………」
「まぁ、そりゃそうだよな。ってか、甲羅の中に入られちまったぞ」
シオンが言ったように、ロックタートルは甲羅の中に篭ってしまった。しかもよく見ると灰色の甲羅から何かが生え始めている。
「……なぁ、あれ岩生えはじめてね?」
「言われてみると……どうする?このまま放ったらかすとまた岩飛ばされるし、甲羅の防御を貫通しようにも攻撃力足りないっぽいけど」
「うーーん………よし、『鬼化』!」
「力押ししか出来んのかお前は……まぁいいや。『鬼化』」
結局鬼化を発動してそのまま甲羅をタコ殴りして、罅が出来たらそれを広げて本体に攻撃するというとても地味な倒し方になった。
ルヴィスは浦島太郎のいじめっ子みたいだと思いながらやっていたが、傍から見るとそれ以上に酷いことをしている。
「すっげぇ疲れた…こいつ倒すだけでどれだけかかったよ?シオン」
「多分三、四十分くらいはかかったんじゃないか?次こいつと遭遇したら戦わずに逃げるか」
「そうだな……あ、他のプレイヤーがロックタートルと戦闘してる」
「あれも俺達くらい………嘘だろ?」
二人は、後ろで詠唱していたプレイヤーの魔法によりあっという間に倒される光景を目の当たりにした。
実はこのロックタートル、物理的な防御力は高くても魔法に対する防御力はとてつもなく低いのだ。そのためロックタートルを倒すときはある程度魔法を使える仲間に倒してもらうのが定石となっている。
そしてギルドで依頼を受けているとはいえ基本的に他プレイヤーとの交流が一切無い二人はそんな事は知らず、こんな結果になっている。
「………もうちょい他のプレイヤーと交流したほうが良くないか?これ」
「俺もそう思った。このままじゃ大損こくだけだな」
「と言ったところでどうにかなるわけでも無いんだよなぁ…もうちょい知り合いがこっちにいればなぁ」
「えーっと、アイツは課題に追われて来れなかったし、アイツも欲しいけど金欠って言ってたし、アイツに至っては自分の目の前で品切れになったって言ってたし………望み薄だなこれ」
「……………まぁいいか、あと1Lv上がったら帰ろう」
結局その後も他プレイヤーと何かを話すでもなく、二人は帰った。




