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14話 衛兵さん

「……あっ、ちょっと待って」



「うん?どうしたんだいルヴィス君。なにかMP回復の良い案でも浮かんだのかい?」


 レミアにそう言われ、言うのを躊躇うように口を開けたり閉じたりして、意を決してルヴィスはたった今気付いたことを言った。


「か………」



「か?」



「体中が筋肉痛になってるっぽい……動くと痛い……」



「……えぇ………なんかすっごい大事なことに気付いたみたいな感じ出しといてそれかい。……さては一週間間が空いて何書こうとしたか忘れたな?アイツ」



「アイツ……?」


 レミアが最後に呟いた言葉が少し聴こえたルヴィスだったが、なんでもないとはぐらかされた。


 彼自身もそんなことを気にする余裕が無い程の痛みだったが、レミアが何かしらの魔法をかけると、体中の痛みがひいていった。


「お、おぉ……?治った、のかな?ありがとう」



「これくらいはお手の物さ。さ、検証場に行こう」





 試してみた結果、MP回復薬の一割くらいしか回復しないが、とにかくそのまま食べても回復することが分かった。


 ただ、その為だけにレミアが最大MPの九割ほどを使うような魔法を無駄に使い、危うく気絶しそうになったが慌ててMP回復薬も服用することでなんとかなった。


「いやぁ、試してみるもんだねぇ。当分イローは食べたくないけど」



「……あの複合属性ゲロビっぽい魔法が直撃しても傷一つつかない壁って一体何で出来てるんだ?あーいや、そういや破壊出来ないやつだったなこれ」



「権限って便利だよ?壊したくないものを何があってもそのままの状態に保てたり、黒歴史を見た人の記憶を改変することができるし」



「いや、後者のは普通やったら駄目なレベルの権限だろ……まぁいいや。そろそろあの二人も帰ってくるだろうし、夕食の支度でもしとくか?」



「だね。………一ヶ月分の食料が半月かからず無くなりそうなことに私は戦慄してるよ」



「……明日は食料調達をしに行こう。俺も手伝うから」



「ありがとう……さて、どこで集めようか」





 時間は遡りシオンサイド、こちらでは街の道把握も兼ねて散歩をしていた。


 ここでもリーネスの食欲は変わらず、シオンはアイテムボックスに入っている木の実などをあげながら歩き回っていた。


「ここはこうなってて、っと。あと三割くらいだな」



「シオンも物好き。そんなことしなくてもマップに頼ればいいのに」



「もしマップが使えなくなるようなことがあったら嫌だからな、今のうちに描き起こしとこうって思ったんだ。………流石に我慢しろよ、何故戻ってるのかは知らんけど」



「むぅ、ケチ」


 呆れながら歩くシオンのアイテムボックスの中には、既に食べられるものが入っていなかった。


 元々自分しか食べないだろうと思い、少ししか入れていなかったのもそうだが、それ以上にリーネスの食欲を甘く見ていたことも原因になっている。


「にしても、俺についてくるとは思ってなかったな。てっきりずっと家にいて食費をかさませる嫌がらせでもするのかと」



「私もそこまで鬼畜じゃない。ある程度の不幸は笑うけど、原因が自分にもあるようなら少しは抑える」



「だったら俺の懐にも優しくしてくれよ……?森に行ってまた集めてこないと……」



「善処する。…やっぱり、どこにでもやべー奴はいるみたい」



「ん?あぁ、そうだな。確かにどこにでもいるな。ああいう変なの」


 リーネスが指を向けた方向には、屋台にいちゃもんをつけている冒険者らしき男がいた。どうやら手に持っている食べ物に何かあったようだ。


「おいおい、どうしてくれんだこれよぉ!?弁償してくれよ弁償!」



「はぁ、私が見る限りその串焼きには何の異常も無いように見えますが?あなたの頭が異常なのはすぐ分かりましたけど」



「なッ、ンだとテメェ!それが客に対する態度かァ!?客は神様だぞ!こんなことも知らねぇのか!」



「いやー、そもそも客が神様云々っていうのはこちら側の信条ってだけで客側が言うことじゃないんですがねぇ。そんなことも分からないんですか?紙様(笑)」



「うわー、すごいなあの人。謝るどころか煽りまくってる……おっ?」



「ク、クソがァ!素直に金寄越さねぇテメェが悪いんだ!オラァ!殺されたくなきゃ金寄越せ!」


 クレーマーは煽られることに耐性がないのだろうか、ついに背負っていたバトルアックスを使い脅そうとしている。


 その様子を見て、今まで相手をバカにするような雰囲気を出していた店員が、何故か今度は上手く行ったとでも言い出しそうな顔になった。


「あらー、怖い怖い。一体私はどうなってしまうんでしょうかねー?」



「あァ!?何ニヤニヤしてやがんだテメェ!いいからさっさと金寄越せっつってんだろがぁ!」



「えぇー、嫌に決まってるじゃないですか。どんだけ金欠なんですか一体。そんなにお金が欲しいなら冒険者らしく働くなりすればいいじゃないですか。……あっ、もしかしてそれすら思い付かないような頭してました?それか薬草集めすらできない忍耐力持ってます?」



「い、言いたい放題言いやがって!もういい、テメェをぶっ殺してでも金を奪ってやらァ!」



「おいおい、大丈夫なのかあの人。ケガしたりしないよな?」



「もちろん。あぁいう輩にこっちが対策しない訳がない」


 そしてクレーマーを散々煽りまくった店員に向かってバトルアックスが振り降ろされ―――何故か直撃する寸前で急停止した。


「おっ、やりましたね?私に危害を加えようとしましたね?こんな時はこう叫ぶに限ります。えーいへーいさーん!」



「あァ!?何言ってやがるテメェ!……クッソ、武器が動かねぇ!何しやがった!」



「さぁ、何をしたんでしょうかねー?ほらほら、衛兵さん来ちゃいますよ?逃げなくて良いんですかぁ?」



「言われなくても………ッ!?体が、動かねぇ!」


 そしてクレーマーが逃げようともがいている(実際には動いていないので表情でしか分からないが)うちに、クレーマーの周囲を九人ほどの衛兵が取り囲んだ。


「おぉ、実際に見るのは初めてかもだ……『鑑定』」


 シオンが興味本位で『鑑定』を衛兵に使ってみたが、見ることが出来た情報はLvだけだった。


 しかし、そのLvだけでも100を軽く超える値が見えたので、動けなくなっているクレーマーが逃げ切れるとはとても思えない。


「うわぁ、このLvは……」



「衛兵はよっぽどじゃない限り戦おうとすること自体が馬鹿馬鹿しいくらいの力を持ってる。だからあの変なのは助からない」



「それなら犯罪者も減るわな……お、抜剣した」


 衛兵達が一斉に剣を抜くと、クレーマーの正面に立っている一人が口を開いた。


「俺は衛兵長のラノスだ。これからアンタを処罰する。何か言い残すことはあるか?」



「……………ッ!……………………ッ!!?」



「拘束に随分と抗ったようだな?安心しろ、今すぐアンタ……いや、ギズゲルと言ったか。とにかく牢獄にぶち込んでやる。総員、構え」


 その言葉に応じて衛兵達がギズゲルに剣先を向けた。立っている位置は丁度ギズゲルを中心にした円を九等分するようになっている。


 そしてラノス自身も剣先を向けると、その状態で詠唱を始めた。


「〈我等は守護者にして断罪者。この剣の輝きは一切の容赦無く汝を灼き尽くすだろう。不出にして不壊の牢獄に墜ちよ〉。『アビスフレア』」


 それが発動すると、詠唱中に薄い光を放っていた衛兵達の剣から強い光が放たれ、それらが全て着弾すると同時に青暗い炎が激しく燃え上がった。


 そして炎が消えると、そこにいたギズゲルもいなくなっていた。詠唱にもあった牢獄に行ったのだろう。


「おー、綺麗な炎でしたねー。ありがとうございます衛兵さん。また何かあったらお願いします。あ、串焼きいります?美味しいですよ」



「いや、一応仕事中なんで遠慮しときますわ。でも、仕事が終わったら寄らせてもらうんで。………おい、残念そうな顔をするなゲニモ」



「そーですか。じゃ、とびきり美味しいの準備しときますねー。さてさて、普通に営業も再開でーす。串焼き美味しいよー。私ことミーネおすすめだよー」


 そして何事も無かったかのように営業は再開された。


 


レミア

「そーいえばイローってLv低いとあんな感じの症状出ることがあるんだった………内緒にしとこ」



衛兵長さんは公私を使い分けるタイプですが、仕事モードでも口調に少しだけフランクさが感じられたりするのでネレモア住民からは結構人気だったりします。具体的には子供がいつかはあんな大人になりたいと言う感じ

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