13話 イローとリーネス
リーネスが来てから約一週間たった。
この間、ルヴィス達は最深部でレベル上げをしたり、冒険者ランクが一つ上がり緑になったりしていた。
そしてこの日、二人はレミアの手伝いとして最深部に来ていた。
「さて、今日はこのイローの実を採ってきて欲しい。こいつはここいらだと珍しいMP回復薬が作れるんだ。あと普通に食べても美味しい」
「オッケー。……見た目は木苺みたいなんだな。確かに美味そう」
「ん、たしかにおいしそう」
「あ、でも油断はしないでくれよ?これ目当てに集まるモンスター……何故ここにいるのかな?リーネス?」
「おもしろそうだし、わたしのじつりょくをしめすために。ずっといえのなかじゃたいくつだった」
ルヴィス達が後ろを見ると、そこには当然のようにリーネスがいた。どうやらかなり退屈していたようだ。
「全然気付かなかったな……いつからついてきてたんだ?」
「いつからも何も、ワープしてきたんだからずっと後ろにいたんじゃないか?そうとしか考えられないが」
「シオン、あたり。ふたりのうしろをずっとつけてたら、ここについた」
「いや、まぁ君が自衛も出来ることは知ってるけどさ?来るなら来るって言いなよ…」
「こうやってかくれてたほうがたのしそうだったから、しかたがない。でも、もうちょっとおおきなはんのうをきたいしてた」
そう言って少しだけ残念そうな雰囲気を出しながらリーネスは文句を言った。
それを見て思い出したわけではないが、ルヴィスはリーネスが実力をどうこう言っていたのが気になったので、聞いてみることにした。すると、
「それはてきとそうぐうしてからのおたのしみ。それまでまってて」
と言われたので、実際に見てみるためにも、四人はとりあえず素材集めを始めることにした。集める量は籠に沢山だそうだ。
「そういえば、リーネス達管理人には更に上の存在はいるのか?いてもおかしくはなさそうだけど」
しばらく探していて、ふと気になってシオンが尋ねたが、流石に答えてはくれなかった。プレイヤーが知るべきことでは無いのだから当然とも言えるだろう。
そこから数分後、突然リーネスが立ち止まった。何かを探すように辺りを見回しているようだ。
「どうしたんだリーネス?……あ、エンカウントか?」
「そう、やっとわたしのじつりょくをみせるときがきた」
そう言ってやる気を出すリーネスの背後へ、ハイドエイプが飛び降りてきた。
ハイドエイプは状態異常は与えてこないが、油断している敵の頭上や背後から急襲してくることが多いため、この森の中では対処しにくい厄介なモンスターだ。
「っ!リーネス!危ない!」
「ルヴィス、てをださなくてもだいじょうぶ。…〘解放〙」
そしてハイドエイプが今にもリーネスに接触しようとして―――動きが急に止まった。
「大丈………あれ?止まってる…?」
「てか、その場で停止してるみたいだな?まさか、これが……ん?」
「そ、シオンの言うとおり。でもこんなの序の口だから、見といて。『時の歯車』」
そう言うと、停止したハイドエイプの周囲を埋め尽くすように歯車が出現した。よく見ると、歯車の中心部には時計のようなものが見える。
「これで終わり。〘動け〙」
すると、さっきまで襲いかかる直前で停止していたハイドエイプが再び動きだそうとし―――周囲にあった歯車が一箇所に集中し、中にいたハイドエイプを欠片も残さず挽き潰した。
さっきまでハイドエイプがいた場所には血塗れになった歯車が密集していた。中々にエグい。
「ふふん、どう?私の本気……と言っても五%くらいしか出してないけど、凄いでしょ?」
「あ、ああ。すごい、すごいけど……誰?」
「えっ?」
「なるほど。普段はあの姿で、力を出すときは今の姿に……あぁ、ごめん。ごめんってば」
ルヴィスが謝り倒している先には、半泣きになっている十八歳くらいの女性……になったリーネスがいた。
ルヴィスが言ったように、普段は十歳くらいの姿で暮らしていて、戦闘時には今の姿に戻るそうだ。つまり、元々は今のこの姿ということになる。
「しかし、力の制御?のためにわざわざ小さい姿になるとはな……最初は気付かなかった」
「グスッ………でも、理由は他にもある。例えば、食事量の制限とか」
「あれでも抑えてるんだ……でも、あれで五%ってことは、百%だとどうなるの?」
「ん、本気なら例えば、体の部位ごとの時間を加減速させたり停止させたり逆流させたりして対象を崩壊させることが出来る」
「うわエッグ……まぁいいや、ほら、また探すのに戻るぞ二人とも」
「「はーい」」
シオンの言葉で、再び十歳くらいの姿になったリーネスとルヴィスも探すのを再開した。
「ふぅ、こんだけあれば大丈夫かな?沢山あれば良いらしいし」
「流石にこれだけあればな。……食べるなよ?」
シオンのその言葉に、籠に近付いていたリーネスは動きを止めた。
「……だめ?おなかすいた」
「それでさっき集めてた分が全部パーになったのを俺は忘れないからな……?ほら、ルヴィスもさっさとしまっとけ」
「ほいほい。……よし、これで今度こそあとはいつもの場所に戻るだけだな。えーっと、ここからだと……」
「……はらへり」
若干不満そうにしながら後をついてくるリーネスにルヴィスがまたリゴの実を渡しているのを見て、シオンは食費がとんでもなさそうだと考えていた。
彼女の話を聞くに、力を使うせいで食べる量が多いわけではなく、ただ単純に大食いなだけのようだ。
しかも、子どもの状態でも平気で普通の人の三倍は食べるのだから、元の状態だとどれだけ食べるのか想像しただけでも恐ろしい。
シオンも言っていたように、一度はイローの実を集めて戻ろうとしたのだ。しかし、リーネスが二人の隙をみて集めた分を全て食べきってしまい、再び探すはめになったのだ。
それを踏まえてかごもしまったから流石に大丈夫なはずだと思いながら、ルヴィス達は集合場所に戻っていった。
「さあ、どうだい?イロージャムの味は」
「おぉ……イチゴジャムみたいで普通に美味い。これがMP回復薬になるなら、イチゴジュースみたいになるんじゃないか?」
「それがねー、他の必要なやつと合わせると結局ポーション特有のザ・薬って感じの味になっちゃうんだよねぇ……むしろイローで更に味が…」
イローの実を集めてから数日後、ルヴィスはレミアが余りで作ったイロージャムを味見していた。ちなみにシオンとリーネスは街の散歩に行っているためここにはいない。
ルヴィスは、ここまでイチゴみたいに加工できるなら別の食べ方をしても良いんじゃないか?と思っていたが、レミアもそれは試していたらしい。
しかし、どれもジャムに比べると味が何故か悪くなってしまうため、最終的にジャムとMP回復薬だけに使う結果に落ち着いたようだ。
「でも、MP回復薬の素材になるならこのまま食べても少しは回復するんじゃない?ほら、ニヘル草みたいな感じで」
「あー、確かにそうかもね。MPが減っている状態で食べたことがないからその発想には至らなかったや。よし、じゃあ検証場で確かめてみよう!」
ルヴィスもそれについていこうとして―――あることに気が付いた。




