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11話 最深部

 ネレモアという街から出て南側に、アニスの森がある。ここには様々な薬の素材やこの森にしか生えない特殊な植物がある。


 そのためか、普通はどの街にも二、三軒薬屋があるのだが、ネレモアだけで六軒の薬屋が存在している。


 しかし、その中で一軒だけほぼ誰も入ることが出来ず、またその入り方も不明な薬屋がある。その薬屋のたった一人の職員であるレミアと、その薬屋に入れる珍しい存在で、何故か定住する形となっているルヴィス、シオンの計三人は、アニスの森でも一番危険な最深部に来ていた。


「さぁ着いたよ、ここが最深部だ。そいでもって集めてもらうのはコレ、セムの実だ。大きさは物にもよるけど、この形状と色合いを見ればすぐ分かるさ」



「まず俺達は死なない努力をするところからだと思うんだが?前よりLvとかは上がってるから多少はなんとかなるだろうけど……」



「シオン君も心配性だねぇ、君達なら主人公補正でなんとかなるはずだ!ほら、ここから先の事も一切考えてない残念なアイツのことだ、君達が死ぬ時の描写なんて一切考えてないさ!」



「主人公補正とか俺達が死ぬ時の描写とか、そんなラノベみたいなこと言われてもなぁ……まぁいいや、そのセムの実だったっけ?をいくつ集めればいいんだ?」



「合計必要数が二四個だから三等分して八個、と言いたいとこだけど今回はこっちが十四個、君達ペアで十個にしよう。いつも行ってた場所だとソロでも大丈夫になってきたっぽいけど、ペアでいた方が死ぬ確率も減るだろうからね。あ、コイツは木の実だから見つけさえすれば数はすぐに揃うよ」



「すぐに見つかったら良いなぁ……運の値が仕事してくれるかどうかってのと、敵に遭遇しすぎないかだな」



「じゃ、集まったらまたここに来てね。さぁ、スタート!」


 こうして、二人が初めて死ぬ覚悟を持ってセムの実集めが始まった。





「うわあァ!?何この蛇と蜂が混ざったみたいなやつ!?」



「俺に聞くなルヴィス!たった今『鑑定』使ってわかったけどこいつ毒もそうだけど衰弱ってのも与えて来るぞ!ついでに言うとそいつイビルスネークって名前らしい!」



「えっなにそのヤバそうな状態異常ってあぁぁこっちに来るんじゃねぇ俺蛇嫌いなんだよ!『鬼化』ァ!」



「こいつ一匹にそれ使うのかよ!?あぁもう、援護するぞ!」



「ギュアァァァ!!」


 それは二人が運良く敵に遭遇することなくセムの実が生っている木を発見し、数も集め終わったので戻ろうとしていた時だった。今まで遭遇していなかった事で気を抜いていた二人に突然モンスターが襲いかかってきたのだ。


 相手は蛇の胴体に複数の蜂の翅と針を持ったイビルスネークといい、今までとはまた別の衰弱という新しい状態異常も使ってくる厄介な敵だ。


「シュイィィ!」



「ぐあっ!?針飛ばしてくるのかよ…!せいっ!」



「その針に衰弱効果があるらしいからさっさと抜いたほうがいいぞルヴィス!体が動かなくなっていくから段々不利になってくっぽい!」



「マジかよ!?って、あぁぁこっちに飛んで来るんじゃねぇぇ!『スラッシュ』!よしこの隙に……いってぇ!?返し付いてんのかよこの針!」


 初級剣術で覚えられる『スラッシュ』で運良く翅を一部切り飛ばすことが出来、なんとか針も抜いたルヴィスは、シオンの援護によって更に飛行能力を失ったイビルスネークに再び斬りかかった。


「改めて見るとやっぱりキモい見た目だぁ……はっ!」



「うおっ!?流石にこんなすぐにはやられないか。ルヴィス、噛まれるなよ!飛んでないけどそいつ普通に素早いからな!」



「うおぉぉ!?お前は剣でも噛んどけ!」



「シュウゥァ!!」



「これで死んでくれ!『スラッシュ』!……ふぅ、大丈夫かルヴィス?」



「多分。衰弱の影響でなんか力が入りにくいけど、まだ普通に行動できるレベルだから問題は無いはず」



「よし、じゃあ今度こそ戻るぞ」


 この後も途中で二回ほど戦闘になったが、それらもなんとか倒し、集合場所に到着した。既にレミアも集め終わっていたようで、暇そうにして待っていた。


「おっ、やっと来たね。案外なんとかなるもんだろう?」



「いや、運良く三回しか遭遇しなかったからなんとかなったけど、六回くらい遭遇してたら死んでたかも…」



「そっちはー……もはやアレの実験台にしかなってなさそうだなぁ。どうだった?」


 シオンがそう聞くと、レミアは目を輝かせながら話しだした。


「いやぁ、あれは素晴らしいね!扱うモノがモノだからうちは当てにくかったけど、当たれば確実にダメージを与えられる上に断面も超キレイ!面倒なときはポータルで相手を無限ループさせとけばそのまま放ったらかせるし、最高だね!」



「試したのは……ポータル系かぁ、アレの使い方ならこうすれば……」



「ほう、ほうほう……フフフ、ルヴィス君も中々エグいことを考えるじゃないか」



「おーいそこの残念二人組ー、そろそろ街に戻るぞー!」



「「残念とはなんだ!」」



「ハモらんでいいから…で、今までのこと考えると、レミアもここになんかしらの細工をしてるんじゃないのか?例えばこっから家へのワープポータルとか」


 シオンがそう言うと、レミアは少し驚いたような顔をした。



「よく分かったね。その通り、ここから家まではポータルで繋いであるのさ!これでいちいちここまで歩かずに済むね!さ、こっちこっち」


 レミアがそのまま歩いて行った先は、特に何かあるわけでもない普通の木の前だった。しかしその木をよく見てみると、(うろ)の中にポータルがあるのが確認できた。


「ここなら間違えてモンスターが入ってきたりする事は無いだろう!じゃ、こっから帰ろう!」



「…そういえば、これモンスターは入らないだろうけど、なんかしらの拍子にプレイヤーがここに飛び込んだら中に入れちゃうよな?大丈夫なの?」



「あっ………ど、どどどどどうしよう!?もしイキった奴等がここに入ってて荒らしてたら私はどうすれば……!そ、そうだ。侵入者をデストロイして更に強力な認識阻害効果を……!」



 そこまで考えていなかったのか、レミアはルヴィスの言葉におおいに取り乱し始めた。このままだと思想が危険な方向に行きかねないため、慌てて二人は止めにかかった。


「ちょっ、落ち着け!それだったら、ここら一体に同じように"管理人の友人"の称号を持ってるやつしか認識すらできないような魔術をかければいいだろ!」



「で、でも!もし既に入ってたらどうするんだい!?やっぱりミンチにしてついでにリスキルしまくって強制的に記憶を無くした上で……」



「そもそもここまで入ってくるようなプレイヤーはほっとんどいないし、そもそも攻略班以外で最深部に来てるようなプレイヤーはアンタのおかげで俺達くらいだから!あぁもうだから落ち着けぇぇ!」





「と、取り乱してすまなかったね。じゃあ、改めて帰ろうか」



「そうだな……」


 しばらくしてやっと落ち着かせることができた二人は、その精神的な疲労を隠しきれずにポータルの中に入っていった。


 通った先はどうやら検証場の中のようで、周りを見ると、別の場所に繋がっていると思われるポータルがある。ポータルの近くには行き先が書かれた看板もあるので、間違えて別の場所に行くことは無いだろう。


「よし、私はここの安全を確認してくるから!君達は部屋に戻っててもいいよ!今日はありがとう!」


 レミアは戻ってきて早々に全力で店が大丈夫かを確認しに行き、二人も特に彼女に用事は無いので部屋に戻ることにした。


「あーー……最後の最後にめっちゃ疲れた。寝ようかな…」



「あぁ、そうしよ「な、なんで君がここにいるんだぁ!?」う……えぇ……」



「あー、レミアの知り合い?管理人仲間?がいるのかもしれないな。とりあえず行ってみるか」


 更なる面倒ごとの予感を感じながら、二人は検証場から出て一階に上がっていった。

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