9話 検証場
今年もよろしくお願いします。
「君たちー!朝だぞー!」
「うおっ眩しっ!?……ぁあ、そうだった。おはよう」
「………まだ五時半じゃないか…二度寝したいんだけど?」
二人の寝ていた部屋に入り、レミアは閉め切られていたカーテンを開けて二人を起こした。
シオンは二度寝しようとしていたが、レミアはその言葉を無視して、朝食は既に作ってあるから早く降りてきなよー!と言い降りていった。
「あ、ホントに五時半だ。でもまぁ、とりあえず飯が冷める前に降りるぞシオン」
「まだ眠い…あぁ分かった、分かったから俺の顔面にリゴをぶつけようとするなぁ!」
「あ、このリンゴもどきそういう名前なの?あっ」
「痛ぇ!?」
色々あったが下に降り朝食を食べ終わった三人は、昨日話していた空間魔術でできることを早速検証しようという話になった。
「そういえば、結局どこでやるんだ?二人でマップ見てたけどそれっぽい場所無いっぽいんだが」
「フッフッフ、そういうと思っていたさ。さぁ、私についてきたまえよ二人とも!」
「えっ、そっちは出口じゃ……まさか」
凄まじい嫌な予感と共に二人はレミアについていき、地下にある部屋の扉の前までやってきた。
「……なんだろう、この扉を開けたら色々ヤバい気がする」
「まぁまぁそんなこと言わずに。さぁ、扉を開けて入ってみなよ!」
「入りたくないけど、開けてみなきゃ分からないよなぁ。……よし、突入!………なんじゃこりゃぁ!?」
ルヴィスの声に驚き慌てて入ったシオンも、同じような反応をした。それを見てレミアは笑いながら部屋に入ってきた。
「どうだい、このだだっ広い部屋は!私が使ってなかった部屋をちょーっとだけ改造した、その名も検証場だ!君たちも試したいスキルがあればここで検証しよう!」
「…ちなみに、改造の内容は?」
ルヴィスがそう尋ねると、レミアはその言葉を待っていたと言わんばかりに自慢げな表情になって話しだした。
「したと言っても改造点はたったの二つさ。部屋の拡張と、なんとなんと何しても壊れないようにしたのだよ!これなら威力が強すぎて崩落することも無いから安心だね!」
「「……ちょっと待てえぇぇ!!?」」
「ど、どうしたんだい二人とも。まさかこれじゃ不満だったのかい!?あぁ、じゃあ威力がどれくらいなのか分かる機能を……」
「違う、そんな機能はつけなくてもいいから!あっでもちょっとほしいかも…じゃなくて、この部屋破壊不能オブジェクトなの!?何かやらかすだろうなーって思ってたけど案の定じゃないか!」
「サラッと酷いこと言うねルヴィス君!?でもこうすれば安心安全だろうよ!」
「俺達の精神的疲労で安心できねぇんだなこれが!」
「なんてことを!?良いかい二人とも、そもそも………」
「さて、気を取り直して検証していこう!まずは……ふむふむ」
数分後、ようやく混乱から立ち直った二人をよそに、レミアは既に検証を始めようとしていた。どうやら最初はワープポータル的なものを再現してみるようだ。
「なるほど、空間を操る魔術だからワープも出来るかもだね。うーん、どうやればここの座標をセットできるかな?ここの術式をこうしてこれを…これで代用しよう。っと、今度はここが…」
「…あ、なんかすでに始めてる。流石にこんな短時間で使ったことない魔法を編み出せはしないよな。……出来ないよな?」
「うーん、あの人出来そうだからなぁ。管理人だなんだってとこを抜きにしても多分素であの技術力っぽいし」
「あ、せっかくだしこの間にレベルの確認とかしとく?森の深部?で結構な数倒したからな」
「あ、それいいなシオン。じゃあ早速、『オープン』」
ステータスの確認を二人がして、レミアがワープポータルを完成させようとして十数分後、どうやらレミアが完成させたようだ。
「最後にこうして…よし、やっと完成したぞ二人とも!こっちに来てくれないかーい!」
「ここのステが貧弱だからこう振って…あ、出来たみたいだぞルヴィス」
「おぉ、もう出来たのか。では、どんな感じになったかな?一応イメージ図は描いてみたけど」
「あぁ、あのイメージ図があったから割と早く完成したんだよね。あれは○or○alのやつを描いたのかな?」
「あ、そっち系のネタも分かるんだ。あれちょい前に人気だったゲームだけど」
「まぁね。っと、そろそろお披露目と行こうかな。じゃあ、ちょっと離れてね」
レミアが言うとおりに二人が離れるのを確認すると、彼女は詠唱を始めた。
「えー、〈此の門は彼方と此方を繋げし狭間の半身なり。『ポータル』〉。そしてちょっと遠くに行って……」
「おぉ、まんまアレっぽい青色と形状のポータルだ。てことは向こうも…」
ルヴィスの想像通り、レミアが少し離れた場所で出現させたポータルもオレンジ色のよく似た形状だった。そしてこの二つはどちらとも地面に設置される形になっている。
すると、レミアがこちらに戻ってきて何かを取り出した。見てみると、若干桃に似た形の木の実のようだ。
「さて二人とも、ここに取り出したるはピモの実。衝撃を加えると潰れて悲惨なことになってしまうだろう。これをこのポータルに入れてみると……」
「…おぉ、アレの通り行ったり来たりしてる……!」
「なんか面白い動き方してるが……ルヴィス、これどうやって止めるんだ?」
シオンがルヴィスに尋ねると、ルヴィスは二つのポータルを飛び出しながら行ったり来たりしているピモの実をタイミングよくキャッチした。
「まぁ、止めるときはこんな感じだな。そういえば、人もこれ通れるのか?」
「もちろん、たださっきのみたいな状況になると自力では中々抜け出すのが難しいかもね。あ、これはトラップにも使えると思うよ。例えば……」
そう言いながらレミアは片方を消して今度は天井に設置した。高さは大体四メートルくらいだろうか。そして地面にある方にどこからか取り出した石を投げ入れると、それは天井のポータルから飛び出して床に落ちていった。
「とまぁ、こんなふうな落下トラップだったり、崖付近で使えばほぼ即死な凶悪トラップも作り出せる。もちろん、自宅に片方設置して探索、好きなときにもう片方を設置して即帰宅なんて使い方も可能だ。かなり便利だね」
「普通に成功だなこれ。じゃあ次は……」
この後も、ポータルを応用して遠距離攻撃を無力化するシールドにしたり、何もない空間を作り出して刃状にして切りつけてダメージを与える攻撃用の魔術を作り出したりして、更に色々やろうとしたとき、それは起きた。
「空間切断って結構エグいよなぁ。じゃあ次は……」
★ルヴィスは称号"魔術応用の親"を手に入れた。
★シオンは称号"魔術応用の親"を手に入れた。
「「…………は?」」
「うん?どうしたんだい二人とも」
「いや、それが……」
「なんか、称号を手に入れたんだけど…魔術応用の親っていう」
「ほうほう………うえぇっ!?なんだいその称号!?私も知らないんだけど!えっちょっ、も、もしもーし!他の管理人ー!!?」
二人はこんなに慌てるレミアを初めて見たので、なんとなくずっと見ていることにした。
「あ、今のうちにもっかいステータス確認しとくか。シオンも気になるだろ?」
「まぁ、そうだな。じゃあ、『オープン』」
「『オープン』。さてさて、どんな……おおう、バランスブレイカー…」
「どんななんだよルヴィス……うわぁ」
二人のステータスには、先程とはかなり違ったステータスが表示されていた。その内容は―――
「「魔力二倍ってなんだよ……俺等剣士だぞ?」」
『空間魔術』で扱える魔法にワープはあってもワープポータルはありませんでした。このような元々は無い新しい魔法を作ろうとすると普通は発動しようとしても消費MPがとんでもなく高かったりと何かしらの制限がかかってしまいます。
しかし、レミアは管理人側だったためかその判定を無視してしまったのでこうなってしまったとも言えます。




