表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/49

5-A 放課後の会話

 11月の席替えの結果は、7月とだいたい同じだった。

 つまり、影郎と太薙が窓側最後列で隣同士。晴日、らん、早月、嶺は、廊下側前方に集中している。


 同月中旬のある日。放課になると、晴日、らん、早月の3人が、影郎の周りに集まった。


「次の月曜、式神退治やな」


 らんが影郎の机に両手をつく。


「そうだな。確か、相模原市まで行くんだっけ? ずい分と長旅だな」


 影郎は座ったまま、カバンに教科書などを詰め始めた。


「それなんだけど、学校の運動場に変更だよ」


 早月が、太薙の席をちらと見た。

 太薙はすでに、下校している。ホームルームが終わると、急いで荷物をまとめて行ってしまったのだ。何でも、進路相談があるらしい。

 と言っても、彼は影郎たちが魔法使いであることも、式神と戦っていることも知っている。だから今の話を聞かれたとしても、特に問題はない。

 影郎が思うに、早月は影郎の隣が太薙であることを知らない。特に、彼女が関心を払うことがらではないからだ。


「学校? ここも式神の通り道なのか?」


「そうなの。事務次官さんに呪いがかけられていないか調べた時点で、式神が校庭を通過することは分かってたんだけど、あのときシンゴがいたから、『相模原市で戦う』って言ったの」


 晴日が影郎の机と、らんの間に割りこんだ。そして、今しがたまでらんがしていたように、机にもたれかかる。

 らんはわずかに迷惑そうな目で、晴日を見る。


「どういうことだ?」


 影郎は、晴日の言葉の趣旨が飲みこめない。


「シンゴ、『役所の仕事で私有地を使うな』ってうるさいねん。入学式の日に夜刀神(やとのかみ)と戦ったときも、実は影郎が帰ったあと、ウチら怒られてん」


 らんは声を落とした。男子生徒が1人、影郎たちの近くをとおったからだ。


「辰午さんも怒ることがあるんだ」


 影郎はこれまで、辰午が色をなしたり、声を荒げたりするところに居合わせたことは、1度もない。

 だから、辰午がそのような顔をするのを、想像さえできなかった。


「怒鳴ったりはせえへんよ。ただ静かにゆうだけ。やけど、それが心にグサッときて、結構こたえんねん」


「ネチネチ皮肉っぽいことを言うのか?」


 影郎にはそれさえ、現実味が感じられなかった。


「まさかあ。ただ、何がどうしてダメなんかゆうだけやよ。でも、ふしぎと申しわけない気持ちになって、シュンとしてまうんやわ」


「だったら、やっぱり相模原まで遠出したほうがいいんじゃないか? 辰午さんをがっかりさせるの、イヤだろ?」


「遠くてめんどい」


「何だそりゃ!?」


「バレへんかったら大丈夫やろ? 4月のときはウチと晴日がケガしたから、初恵さんに来てもらわざるを得んかったけど、要は戦いのあと、全員立って歩けたらええねん」


「大層な自信だな。足下、すくわれるぞ」


 故意に冗談めかして言ったが、影郎は内心、心配でたまらなかった。

 いまだに、饕餮(とうてつ)と戦うときでさえ、らんたちが相手を舐めきった態度をとると、ハラハラしてしまうのだ。


「早月が帰国してからウチら誰も、すり傷1つ、してへんやろ?」


「まあ、そうだけど……」


「ほな、今日は仕事もないし、帰ろか」


 この日はそのまま、各自で帰宅した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ