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第36話 春の始まり

「では失礼いたします。エリスティーナ様にも、どうぞお大事にと、お伝えください」

「ええ。伝えておきます。ありがとうございます。ナディアさんもお気を付けて」


 フラウリンド伯爵家の黒髪メイドのナディアさんが、深く一礼をして馬車に乗り込んだ。彼女を乗せた豪華な馬車を見送った後、オレは早々に家の中に入った。


 二人の共用部として使っている一階のリビングを通り抜け、二階へと上がる。

 エリスの部屋の前まで行って、オレの足は止まった。


 一度、軽く深呼吸をしてしまう。

 エリスの部屋というだけで、どうしても少し緊張してしまうようだ。


 ドアを軽くコンコンとノックをしてみる。


 少し待つが中からの返事は無い。

 耳をドアに当ててみるが、中は静かなようで何も聞こえてこない。


 ドアノブに手を掛け、そっと回す。

 今このドアに鍵がかかっていないことは知っている。

 あまり音を立てないようにゆっくりとドアを押して、中をうかがってみる。


 窓は半分開けられていて、白いレースのカーテンが風で僅かに揺れている。

 穏やかな日差しが入ってきて部屋の中は明るい。


 エリスの部屋は、オレの部屋と同じくらいの広さのハズだが、オレと違って物をあまり置いていないためか、ずいぶん広く感じる。


 ベッドと小さめのテーブルに椅子。

 それくらいしかない。

 おそらくほとんどの荷物はベッドの下の収納か、あのカーテンの先、埋め込み式のクローゼットに全て収まっているのだろう。


 オレは部屋の中に入って、後ろ手でそっとドアを閉める。

 ちょっと考えたが、鍵はかけないでおく。

 もしセリカがやってきた場合、下手に鍵がかかっていると話がややこしくなりそうだからな。


 必要以上に足音を立てないよう気を配りながらベッドへ近付く。

 そこにはエリスが横たわっていた。


 ……どうやら眠っているみたいだ。


 エリスの顔が赤い。

 たぶん、風邪だと思う。


 普段パワーが有り余っているようなエリスが体調を崩すなんて滅多にない。

 というか、もしかしたら、オレは初めて見たかもしれない。

 小さい頃、村にいた時だって、オレは何度も風邪を引いて寝込んだことはあるが、エリスがそんなことになったという記憶は全く無い。

 そもそも普通の人よりずっと丈夫な獣人、しかもバハムートに取りつくとは、なんて根性のある風邪だ、と変な感心してしまうくらいだ。


 ま、それは冗談としても、色々と疲れが溜まっていたのかもしれない。

 特に先日の迷宮では、魔力を使い果たしたくらいだしな。


 オレたちが住んでいた村は、子供が風邪を引いた場合、回復魔法ヒールで治すということは基本的にしない。


 小さい内は風邪を引いても自然に治すことで免疫力が付いてより丈夫に育つんだ、という考えがあって、よっぽど高熱にうなされでもしない限り回復魔法ヒールは使われなかった。


 その考えは、実は間違っているんじゃないかと知ったのは村を出てからだ。

 ここアスターナでも殆どの人にそんな考えは無く、風邪を引いたら小さな子供であってもさっさと回復魔法ヒールで治してしまうのが普通だ。


 だが今回、エリスは回復魔法ヒールを拒んだ。

 自分で自分にかけることも、他の人に頼むことも拒んでいる。


 最初は、もしかしたらオレたちの村のよく分からないしきたりだか風習だかに従っているのかも? とか思ったのだが、それはどうやら違ったみたいだ。


 その理由を聞いたら、エリスは何て答えたと思う?


 小さい頃、オレが風邪で寝込んでいたとき、オレの母親に優しく看病されているのが、すごく羨ましかったんだと。

 だがら、私にも優しく看病してね? だと。


 赤い顔して目を潤ませて、そんなことを口にしていた。


 だからオレは、仕方なくエリスの看病をしているわけだ。

 誤解しないでほしい。

 仕方なく、だ。

 あくまでも、仕方なくなんだよ?


 ……けっして、普段立ち入り禁止のエリスの部屋に堂々と入れるから、なんてよこしまな理由なんかじゃないよ? 絶対に、断固として違うからな?


 エリスの顔を覗き込む。


 ……よく寝ているみたいだな。

 顔は……まだちょっと赤いか?

 熱はどうだろう。

 少しでも下がっていればいいが……


 エリスの額にそっと手を伸ばしてみる。


 ……でも、せっかく寝ているのに起こしちゃうかも?


 そう思い、エリスの額に触れる手前でオレの手が止まる。


 それに、断りもなく寝ているエリスに触れるのはマズい……よな?

 もしセリカに見られでもしたら、丸一日くらい説教を喰らいそうだ。

 やっぱりドアの鍵はかけておくべきだったか?


 でもでも、熱を測るだけだし。


 そりゃあ、できればこの可愛い寝顔をつんつんとか、ぷにぷにとか、もふもふとかもしてみたい……って、違っ!


 一人脳内押し問答して、触れることも、引っ込めることもせずにオレの手がエリスの顔の上をうろうろと彷徨ってしまう。


 ……どうしよう。

 でも、熱を測るだけなんだから。

 そう、これも看病のうちだよ。

 別にやましい気持ちとか、そういうんじゃないから。


 だからつんつんはしない。ぷにぷにも、もふもふもしない。

 熱を測るだけ、熱を測るだけ、熱を測るだけ……


 なんかドキドキしながらそう自分に言い聞かせる。


 ――よし! いくぞ! 測るぞ!


「……タクマ?」


 ――っ!?


「どうしたの?」


 ゆっくりと視線を下に向けると、いつの間にか起きていたエリスの目がオレとオレの手をじぃっと見上げている。


「エ、エリス。お前起き……。あ、いや、なんでもないよ。それより、どうだ具合は?」


 オレの心臓がこれ以上無いってくらいバクバク言っている。

 だがそれをなんとか誤魔化しながらエリスに声を掛ける。


「うん……。一時期よりはだいぶ良くなったかな。でも、まだ少し身体に力が入りにくいっていうか、変にふわふわしているようで、それでいて妙に身体が重いっていうか……」

「そうか。まあ、まだ無理はしないで寝てるんだな。熱、測るぞ?」

「うん」


 ちょっとぐったりした様子で毛布から顔を出しているエリスに向かって手を伸ばし、掌を額に当てる。


 起きているエリス相手なら全然問題無くできるんだよなぁ。

 やっぱ寝ている相手っていうのはなぁ……

 と、頭の片隅で思いつつエリスの熱を測る。


 どうやら昨晩に比べれば多少熱は下がっているようだ。

 だが、顔も赤いし、まだ熱は残っているようだ。


 オレの手が冷たかったからか、エリスが気持ち良さそうに目を細めた。


「あー、ちょっと気持ちいいかも。しばらくこのままでいて欲しいかも」

「何言ってんだよ」


 エリスの言葉に微笑みながら、オレは収納庫ストレージから濡れタオルを取り出した。四つ折りくらいにしてそっとエリスの額の上に置く。


「ほらっ! こっちのほうがいいだろう?」

「んー。これはこれで確かに気持ちいいけど。でも、タクマの手も気持ち良かったよ。タオルと違ってやっぱ温もりに安心感があると言うか……。私、タクマの手、好きだよ?」


 オレの手が気持ち良かった……?

 好き……?


 ……は、ははは。

 ヤバい。

 なんかオレの方が別の意味で熱でそう……


 今ここには二人っきりで、

 目の前にはベッドがあって、

 エリスは横たわっていて……


 それでこれは危険すぎる。

 とんでもなく超危険すぎる。

 ……オレの理性的に。


 話題を変えよう。


 オレはベッドの横に置いてある椅子に腰かけながら口を開いた。


「えっと、エリス? 何か食べられるか?」

「んー……」


 どうやらあまり食欲はなさそうだな。

 でも、朝も何も食べてないんだ。

 少しでも何かを食べたほうがいいよな。


 そう思い、言葉を続けた。


「ついさっきまでナディアさんが来ててな。ストロベリーを貰ったんだが、少しだけでも食べてみないか?」

「ストロベリー!? わーい、食べたーい」


 エリスの瞳がいきなりキラキラしだした気がする。

 エリスはストロベリーが好きだからな。

 お茶会の時にもよく食べていたみたいだし、今回もきっと食べると言うと思っていたよ。

 ははは、予想通りだ。


「お茶会でのストロベリーも美味しかったよね。嬉しいな」

「そうだな」


 軽く相槌を打ちながら、オレは収納庫ストレージに収納していたストロベリーを取り出した。


「わあ、美味しそう」

「ああ。粒も大きくて、すっごく甘くて美味しいよ」

「あっ、ズルい! 先に食べたんだー」


 おっと、いかん。

 さっきナディアさんに頂いた時、つまみ食いをしたことがバレちまった。

 ははは……


「一個だけな。ちょっと味見をさせて頂きました」

「……ふーん」


 いや、だからホントに一個だけだって。

 そのジト目で見上げるの止めなさいって。


「ナディアさんが洗ってくれているからすぐに食べれるぞ? 食べるか?」

「もちろん!」


 さっきまでの食欲不振は何処へ行ったのやら。


 でも、エリスは起き上がろうとしない。

 ベッドに横たわったまま、何か期待を込めたような眼差しでオレを見上げて来る。


 ……まあ、そう来るとは思ってたよ。

 エリスの望むことなんか、丸分かりだ。


 オレは大きめな粒を選び、ストロベリーを一つ摘まんだ。


「ほらっ。あーん」


 別に誰も見てないしな。

 まあ、何と言うか、「あーん」は、看病の基本だよね? ね?

 ……反論は受け付けないよ?


 オレの行動は、どうやらちゃんとエリスの希望に一致したようだ。

 エリスは横になったまま、すぐに目を閉じて口を少し開いた。


「……あーーーんっ」


 真っ赤なストロベリーがエリスの唇に触れる。

 一口ではとても食べきれないような大きめな粒を、エリスは半分だけかじる。


「……美味しい! すっごく瑞々しくって、とっても甘いの!」


 その嬉しそうな声や表情に、オレの顔もついゆるんでしまう。


 再び口を開けたエリスに、食べかけのストロベリーを近付ける。

 だが、そこでふと悪戯心が顔を出し、エリスが口を閉じるタイミングを見計らって、サッとストロベリーを引いてみる。

 何も口に含まず、エリスがパクっと口を閉じる。


「ん! んんっー!」


 エリスがジト目でオレを見上げてきた。


「あははは。ゴメン、ゴメン。何かエリスが可愛くって、つい」

「――っ!?」


 オレが再び近付けたストロベリーを、エリスはサッと口に含み、そして毛布を顔にかぶってしまった。


 ……あれ? 怒ったかな?


 そんなエリスが、毛布の中で唸りだした。


「ううう……。なんか、また熱が上がりそうだよ……。タクマのバカァ……」


 ◇


 結局エリスはストロベリーを五粒くらい食べただろうか。

 もうお腹いっぱいということなんで、オレは残りのストロベリーを再び収納庫ストレージに収納した。


 病み上がりでこれ以上無理に食べさせても、余計具合を悪くさせてしまうかもしれないからな。


 ちなみに、オレも同じくらい食べた。

 本当にすごく甘くて美味しかった。

 やはり伯爵家のフルーツは、庶民のとは一味も二味も違うものなのだろうか。


「ところでタクマ。ナディアさんは何の用だったの? まさか……《神水》のことで何か?」

「ん? いや、違うよ」


 アーロンに託した《神水》は、無事フラウリンド家に届けられた。


 どうやらそのために、王都の神殿の大司教がやってきたらしい。

 もちろん護衛やなんやらのお供を沢山引き連れての大行列だったとか。


 アーロンは、知り合いの神官に押し付ける、みたいなこと言ってなかったか?

 まさか、大司教相手に使いっ走りみたいなことさせたのか?


 ……ははは。まさか……ねぇ?


 ともかく、《神水》によってローゼの母親、ソフィー・フラウリンドは無事目覚めることができたそうだ。


「来月の半ばに、フラウリンド家で夜会が行われるそうだ。その招待状を届けに来てくれたんだよ」

「夜会の招待状? 伯爵家の? 私たちに?」

「ああ。どうやらローゼの希望らしい。エリスとセリカにはぜひ出席してほしいそうだ。母親が元気になったことだし、紹介したいんだとか」


 ナディアさんはもちろん明言はしていないが、たぶんオレとラウルはオマケみたいなもんだな、ローゼにとっては。……ま、いいんだけどな。


「そっか。ローゼちゃんが……。うん。それはぜひ出席したいね。ローゼちゃんの笑顔を凄く見たいよ」

「ナディアさんによると、もう母親にべったりだそうだよ」

「ふふふ……。いいことじゃない? 私たちはそのために頑張ったんだもん」

「だな」


 エリスは「楽しみだなぁ」と呟きながらそっと瞳を閉じた。


 少し話し疲れたかな?

 こころなしか、呼吸が少し早くなったような気もするし……

 まだ熱はあるんだし、このまま寝かした方がいいだろう。


 そう思い、オレは部屋を出ようと椅子から立ち上がった。

 エリスに背を向けた時、ふいに右手を掴まれ、引っ張られ、オレは思わずベッドに腰を下ろしてしまった。


「……エリス? どうした?」


 振り向くと、朱に染まった顔をしたエリスがオレを見上げている。


「えっと、そのぉ、あのね。少しでいいから、手を……握ってもらっていい?」


 毛布で口元を隠しながら、恥ずかしそうにエリスがオレを見上げる。

 流石のエリスでも体調の悪さから来る心細さがあるのかもしれない、とオレは素直に頷いて、右手でエリスの手をそっと取った。


 ……手も、いつもより温かいようだな。


 そんなことを思っていると、エリスが握り方を変えてきた。

 互いの掌を合わせるようにして、しっかりと離れないように指を絡めて来る。


 この握り方、普段に比べてすっごく密着度が高いと言うか……


「えへへへ……」


 エリスが少しはにかむように笑みをこぼす。


 なんか、エリスに釣られてオレの顔も赤くなったような気がする。

 今のオレも、熱が上がったのかも……?


 そう思いながら、少しだけ力を入れて、オレもエリスの手を握り返した。


 右手はエリスの左手を握り、そして左手でゆっくりとエリスのふわっふわな髪を撫でる。

 それで安心したのか、エリスの呼吸がなんとなくゆっくりとしたものへと変わってきたような気がする。


 エリスは目を閉じながら静かに口を開いた。


「さっき、夢を見たんだ」

「夢?」

「そう。奈落の底でイフリートと戦う夢」

「それは……」


 もしかして、悪夢を見たということか?

 オレがケルベロスにいたぶられて、しばらく悪夢にうなされてしまったように?

 まさか、今度はエリスが?


 もしかして、手を握ったのも、その不安からか?


 内心、ひどく焦ってしまう。

 だが、どうやらそれは違ったらしい。


「でね。私の圧勝だったよ! イフリートなんてローソクの火と同じ。私のブレス一発で吹き飛んだんだ!」

「………………はぃ?」


 一瞬理解が追いつかなかった。

 あれだけこっぴどくやられていたのに、オレみたいな心的外傷トラウマにならず、むしろ夢の中でリベンジを果たしていたのか。


 ……さすが、エリスだな。うん。


「……だから、さ。タクマ」

「うん?」

「……私、もっと強くなるから。だから……」


 オレの右手を掴むエリスの左手に力がこもる。


「だから、これからもずっと、タクマの傍にいさせてね?」


 紅く染まった頬と潤んだ瞳で見上げられながらのそのセリフには、一瞬理性が飛びそうになる。


 でも今エリスは風邪なんだと、熱があるんだと、だからなんだと、自分で自分に何度も何度も必死に言い聞かせる。


「……当たり前だろう。強さとか関係なく、オレはいつでもお前の傍にいたいし、いつまでもお前に傍にいて欲しいんだ」

「……ホント?」

「ああ」

「ホントに、ホント?」

「ああ!」

「ホントにホントにホント?」

「……エリス?」

「だって……」


 エリスが再び口元を毛布で隠しながらじぃっと見上げて来る。

 オレたちの視線が絡み合う。


 その時――

 何かが、そっとオレの耳にささやいた気がした。

 何かが、そっとオレの背中を押したような気がした。


 それが何なのか、オレにもよく分からない。

 だけど、オレの体は自然に動いていた。


 髪を撫でていた左手を、優しくエリスの頬に添える。

 熱を帯びた頬。

 だが、それは風邪だけが理由だろうか?

 エリスの頬が、さらに朱色に染まったように見えたのは、気のせいか?


 ゆっくりとエリスに身体ごと寄せ、顔を近付ける。

 頬に触れていた左手で、エリスの口元を隠していた毛布をそっと引き下げる。


「あっ……」


 一瞬だけエリスの目が大きく開かれ、声が小さく漏れる。

 だが、エリスはオレから視線を逸らすことはしなかった。


 お互いの息が感じられるほどに近付いた時、エリスはそっと瞳を閉じた。

 オレも、さらに近付きながらゆっくりと瞳を閉じた。


 オレの唇が、柔らかなエリスの唇にそっと触れる。


 初めてのキスは、微かにストロベリーの香りがした。


 唇を少しだけ離し、ゆっくりと目を開けると、エリスもまた目を開けて、真っ赤に染め上がった顔でオレを見上げて来る。


「……信じるか?」

「……もう一度してくれたら、信じる」


 しっかりとつながれた互いの手に、更に少しだけ力がこもる。


 オレは再びエリスに顔を寄せ、そっと唇を重ねた。


 窓から柔らかい日差しと、微かな小鳥のさえずり、そしてどこか甘い花の香りを纏った爽やかな風が入り込む。

 季節が変わる。

 ようやく、アスターナにも春が来た。


最後まで読んで頂き、本当に、本当にありがとうございました!


最終回に先駆けてsbnbさんにFAファンアートを頂きました! ありがとうございます!


挿絵(By みてみん)


本作品では残念ながら着る機会は無かったウェディングドレス姿のエリス。

いつかこのイラストがホントとなる話を書いてみたいですね。


最初は、もふもふで、甘々で、それでいて戦う獣耳娘の美少女な話が読みたくって、その自給自足(?)な感じで始めたような連載でしたが、まさかこれ程のブクマ・評価を頂き、ランクインまでして多くの読者様に読んで頂ける幸運に恵まれるとは思ってもみませんでした。


凄く凄く嬉しいです。

ここまで応援して頂いた皆様に、心よりの感謝を!


またいつかどこかでお会いできることを! (´・ω・`)b


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