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第拾二幕 祝言

更新しました! 最終幕です! 最後まで読んでいただければ幸いです!

*なんどもなんども申し訳ないです。この作品は『アヤカシ草子』の完全スピンオフ作品です。そのため重大なネタバレが含まれています。本編を読破してから読むことをお勧めします。藤波真夏

数日後。

 鎌清と小百合の祝言が挙げられた。会場は丹波の屋敷。小百合は人生初めての白い花嫁衣装に身を包んだ。丹波の屋敷には多くの人たちが詰め掛けた。結城良経と千もミヤコで僧侶をしている茶若も招待された。

 祝言は厳粛に進められた。丹波が媒酌人となって酒を分け二人はめでたく夫婦となった。祝言後に小百合は久しぶりに千と話す。

「小百合。綺麗よ。立派になったわ」

「全ては雅姫さまを始め、姉上さまのおかげです」

「まさかあの清丸さまと結婚するとは思いもよらなかったわ。運命ってすごいわね」

「それは私もそう思います。あの人は私に言ったんです。人間の世界は、君が思っているように残酷にできていないよって。この世界にいてよかったって思うことができたのです」

 千は小百合を抱きしめた。小百合の目からまた涙が溢れる。泣いてばかりだな、と自分で言いながら。

 招待客が夕方で帰ると屋敷内は閑散とし始めた。小百合も花嫁衣装を脱いで華やかな赤い着物へと変わっていた。小百合は改めて結婚したんだな、という実感がじわじわと湧いてきた。

「小百合。今よろしいですか?」

 雅姫が小百合を呼びに来た。小百合が付いて行くとそこには丹波と夫となった鎌清の姿があった。何が始まるんだろうと小百合が構えていると丹波の口が動いた。

「小百合。お前に提案がある」

「提案ですか?」

「お前を鎌清と同じく俺の家臣として召し抱えたいのだ」

 小百合は驚きのあまり思考が停止した。それには鎌清も雅姫も驚いた。なぜと聞くと丹波は答えた。

「お前の武術の腕を買ったというのもあるが他に鎌清と共に俺を支えてもらいたい、というわがままもある。もう侍女ではなくなるが、これからは俺の元で力を尽くしてもらえないだろうか?」

 小百合は思わず鎌清に視線を移してしまう。鎌清はただ頷いた。それを悟った小百合は丹波にこう発した。

「わかりました。そのお役目受けさせていただきます」

「そうか。これからよろしく頼むぞ、小百合」

 後ろで見ていた雅姫も涙を思わず流した。もう侍女ではないため今まで使っていた部屋を出はらい鎌清と同じ部屋で過ごすことになる。鎌清が来るのを小百合はただずっと待った。沈黙の時間が怖い。

「小百合?」

 鎌清が戻って来る。小百合はただ一言、おかえりなさいと述べた。鎌清は小百合の膝の上に頭を乗せて寝そべる。小百合はびっくりしたが鎌清がそのままでと小百合を動かさない。

「あの・・・御前様」

「御前様? 俺のことか。鎌清って呼べばいい」

「かま、きよ・・・」

「聞こえない」

「鎌清・・・」

 小百合の髪を指ですきはじめる。銀色の髪はもう小百合を着飾る装飾品のようになっていた。鎌清はすっかり愛妻家になりつつあった。しかしまだ小百合にはまだ決着をつけていないものがある。

「鎌清」

「ん?」

「森に行っていい?」

「決着、つけに行くのか?」

「うん。あれは私が犯した罪だから。行かなくちゃ」

「俺も行く。俺にもやらなきゃいけないことがある」

 鎌清と小百合は屋敷を抜けて真っ暗な道を進んで森へやってきた。十数年ぶりの森だ。来るものを拒む森。二人は深呼吸をして森へ一歩踏み出した。するとカサカサと何かがやってくる音がする。

「私よ、ククリにぃ」

 小百合がそう言うとククリが木の陰から姿を現した。ククリは立派に成長した小百合と鎌清を見つめた。小百合は笑った。

「大きくなったな、小百合」

「ずっと会いたかった。私、鞠に会いたいの。どこにいるの?」

「鞠はお前が森を出てから時が止まったままだ。それでも会いたいか?」

「会いたい」

 ククリはそうか、というと言葉飛ばしをした。その内容はトトリに向けて鞠を連れてこい、ということだった。数分後にトトリが現れた。その後ろには小百合より一回り小さい女性が。

「鞠?」

「小百合?」

「ずっと謝りたかった。私のせいで鞠が・・・」

「もう二度と会えないかと思ってた。隣の人は誰?」

「私の旦那さん。今日祝言を挙げた」

 トトリは思わず声を上げてしまった。ついに幸せをつかんだのかと泣いた。それをククリがうるさい、と止める。鞠は絶対に小百合がはいと言わないことを聞いた。

「森に戻ってくれないの?」

 それに鎌清はハッとなって小百合を見る。小百合は曇りのない黒い瞳で見つめた。

「それはできない。私はもうアヤカシじゃないの。私の中には人間の血が混じっている。私の命をつなぎとめた大事な人の血。それで私は瞳の色を失った。でも私は悲観しない。人間の世界は案外残酷にできないって知ったから・・・。私はずっと人間の世界で生きるって決めたの。でももう二度と会えないわけじゃない。私たちはずっとつながってる。住む世界は違っても・・・」

「そうだね」

 鞠と小百合は十数年ぶりに抱きしめあった。小さい鞠の体を小百合は優しく抱きしめた。

「俺は誓います。小百合を守り抜くと」

「まるで娘を取られた父親の気持ちだ。でもお前になら小百合を任せられる。なんせ小百合が惚れた男だしな」

 ククリは鎌清にそう言った。小百合は何度も後ろを振り返りながら森の外へ出て行った。

 また風が吹き抜けた。冷たい北風。

「寒くないか?」

「少しだけ」

 鎌清は羽織っていた着物を小百合に着せた。暖かい鎌清のぬくもりを感じる。

 小百合は今までより最上級の笑顔で鎌清の隣を歩いた。見えない運命の赤い糸が二人を導いた。星空を見上げて小百合は笑って鎌清の腕にくっついてくる。


 種族を超えた絆は次第に夫婦愛へと変化しまたヒノモトに小さな歴史が刻まれた。それを知るのはごくわずか。星空は静かに二人を見守っている。小百合の心には人間とアヤカシの魂の炎が燃え続けているのであった。

 鎌清は小百合の手を決して離そうとはしなかった。鎌清にもアヤカシの魂が燃えているのかもしれない。二人は手を取り合い、歩いていくのだった。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。スピンオフを書くとは思ってもいませんでした。しかし私は小百合と鎌清という二人のキャラクターが大好きで、本編ではおしどり夫婦のように憧れる(?)ようなものだったんですが、それになるまでの過程はきっと波乱万丈なんだろうな、と思い書かせていただきました。

最後になりますが、感想、評価等よろしくお願いします。藤波真夏

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