魔王様、劇的びふぉーあふたー
ちょっと暗め。
魔王。
それはかつて、人族を恐怖に陥れ、力のみで全てを屈服させてきた存在ー…
…と、人族の方では言われているのはしっている。
まぁ、自分の力を誇り、おごり、悪逆非道を尽くした魔王も中には居た。
しかし、過去の歴史を紐解いていくと、マトモ9割、ソウデナイモノ1割である。
ほとんどはバカの尻拭いに明け暮れる者ばかりである。
姿形が思考が違うだけで、他種族を、まして同族すらも迫害し、牙を剥く人族の方がよっぽど恐ろしいと、俺は常々思っていた。
こちらから仕掛けたことは一度もない。
それなのに、我々を悪と言う。
同族なのに考えが国が違うだけで女、子ども容赦なく殺す者達の方が悪ではないのだろうか。
俺は歴代最強の力を持った次代を担う魔王として誕生した。
何をやらせても、完璧にでき、知識も、言語も、あらゆるモノを自分のものにした。
そうして皆に崇められ、恐れられ、誉められるうち、いつしか天狗になっていたのだと思う。
世界の神にもなれる、そんな存在だ!
なんて本気で考えていた過去の自分に本気でドロップキックをお見舞いしたい。真剣に。
色々調子に乗り、しかもモテモテな自分に酔っていたのだろう。
ある時、年上美女のお持ち帰りに成功した俺は、はじめてのめくるめくる夢の世界に旅立…てなかった。
一歩手前まではいったんだ。
いよいよ!っていう時に、悲劇は起こった。
年上美女がぱーんとなって飛び散ったのだ。
かるーく話してるがそれはそれは酷い有り様だった。
結果分かったのが、俺の魔力が物凄いせいで魔力持ちに過度に触れ合うと、俺の魔力に負け相手が飛び散る仕様だという事。
しかし、1度だけの事だわ私ならあなたの全てを受け止めるわっ!というチャレンジャーな者達も居たのでぱーん事件はその後6件ほど続き、それ以降は避けられるばっかりになった。
手がちょっと触れただけで悲鳴をあげられる、気絶する、姿を見るだけで逃げられる。
段々と卑屈になっていくのが自分でも分かった。
部下が結婚する度、内心リア充滅べと思い、子どもを見せられる度、俺は自分の子を抱っこできずに死ぬのかと内心涙した。
『魔王、魔力がないものとなら添い遂げられる可能性が高いよ。
君のひいおじいさんも同じようなタイプだったけど人族の嫁様をもらって8人の子沢山だったらしい。』
幼馴染みでいつも微笑んで内心腹黒な側近がいつになく真面目に俺に言った。
『俺たちの子どもも仲良しにさせるぞ!って昔、君いってたろう。
魔王が結婚しないと、こっちも結婚できないんだよ。』
ダメもとでやってみようと、そう思えた。
ウジウジしていても何も変わらない。
頭脳と交渉術は得意だ。
技術提供や貿易優遇の話をちらつかせればすんなりと人族最強とうたわれる勇者の国がテーブルにあがった。
そうしてやって来たのは、死にやすい姫だった。
はじめの一歩を踏み出した瞬間、風にあおられ死亡。
衝撃的すぎる。
怯えた顔で見られたらどうしよう…と思ったが、復活した姫はこちらに向かってはにかんだ。
色々あってキ…キスまでしてしまうなんて…
ああでも、柔らか…
イヤイヤ、落ち着け!
晩餐の時間が迫ったので、魔王の部屋を訪れると、
床の上で赤面しながらごろんごろんと転がる変態がいた。
「気持ち悪いんでやめてくれます?」
「おっ、なっ、おおおおおお前いつから居たんだよ!」
野郎が頬を染めてもキモいだけだ。
魔王は無駄に美形だから苛立ちも更に募る。
「野郎のツンもデレもいりません。」
「俺はツンデレじゃねぇ!!!!!!」
それからしばらく我々は取っ組み合いの喧嘩となり、突如現れた宰相の教育的指導により二人で土下座することとなったのだった。
しかしシリアスは長く続かない。